6月 102005
 

京都大学工学部工業化学科化学プロセス工学コースの4回生を対象とした講義に,プロセス設計のプロジェクトがある.これは,2〜3名の学生が1つのグループを構成し,グループ毎に,自分たちで対象プロセスを選定し,その設計を行うというものだ.4月に開講し,5月上旬には対象プロセスを確定し,実質的な作業に入る.もちろん,講義時間内に何かをするというのではなく,7月上旬に設定される発表会までの間,毎日朝から晩までプロジェクトに取り組むこととなる.研究と同様,ここまでやったら終わりという明確な課題が与えられるわけではないので,頑張る学生には非常に負荷の高いプロジェクトとなる.それ故に,3回生までに学習した内容の総復習と実践的演習を兼ねるプロセス設計を通して,学生は実力をつけることができる.

このプロセス設計で取り組む課題は,極めて実践的な内容であり,エンジニアリング会社や様々な企業のエンジニアリング部門が本業として取り組む内容に近い.そこで,演習効果を高めるために,エンジニアリング会社(東洋エンジニアリング)の経験豊富な方を非常勤講師として招き,集中講義を担当していただいている.今年は,6月9−10日の2日間,集中講義を開催した.

この集中講義では,各装置の仕組みや設計方法,プロセス全体の設計方法,プラント設計や建設の実際など,長年実務に携わり,世界中を駆けめぐって来られた方ならではの話をしていただいている.さらに,プロジェクトを進める中で次々と湧き上がる疑問に答えていただいている.

集中講義での質問に関連して,今後,何とか状況を変えていきたいと思うことがある.

現状の問題点は,集中講義の中で質疑応答の時間を取っても,受講生全員の前で,きちっと質問をする学生が少ないことだ.そうかといって,質問がないわけではない.休憩時間や講義の後に,個人的に質問する学生は多い.講義時間中に質疑応答の時間を確保するのは,単に個々の質問に答えるためではなく,他のグループが抱えている問題と,それへの回答を受講生全員が共有することで,全体のレベルアップを図るためだ.そのような意図を酌めない学生が多い.結果的に,プロセス設計に関する実践的な知識を増やすチャンスを,みすみす逃してしまっている.

学生にしてみれば,大勢の前で質問するのは嫌だという気持ちがあるのかもしれまない.それも分からないわけではない.しかし,研究者・技術者として生きていくとしたら,近い将来,学会にも参加もするだろう.参加した学会で,全然質問せず,黙って座っているだけというのは,私は大嫌いだ.もっと積極的になるべきだし,上手に質問するためには,質問の練習も必要だし,経験も必要だ.そういう観点から,集中講義での質疑応答を自分のために利用してやるというぐらいの意気込みが欲しい.このようなチャンスを確実に掴んでいくか,それとも目の前を通り過ぎていくのをただ黙って見ているかで,人生というのは大きく変わっていくのだと思う.チャンスが巡って来ない人は存在せず,存在するのはチャンスを見過ごす人だ.

現在の集中講義では,個別の質疑応答の内容を,その後の講義内容に臨機応変に反映させるという形で対応していただいている.これは非常勤講師の方が,後輩のためにと献身的に集中講義に取り組んで下さっているから可能なことである.その好意に甘えるだけでなく,教員の責任で,もっと効果的な仕組みを構築する必要がある.もちろん,学生の意識改革も必要だから,意識改革を迫るような仕組みということにもなる.

来年度以降も引き続き,試行錯誤を繰り返しながら,プロジェクトのパフォーマンスを向上させていきたい.

ちなみに,集中講義の2日間に限らず,ウェブサイトに設置した掲示板を通して,適宜,非常勤講師の方には学生の質問に答えていただいている.そこでの遣り取りはQ&Aとして蓄積される.これも好意に甘えた仕組みではあるが,非常に有効だ.

 Leave a Reply

You may use these HTML tags and attributes: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>