7月 142005
 

仕事の成り行きで,サプライチェーンマネジメントも視野に含めて,企業内・企業間の情報連携に関する知識が必要になった.サプライチェーンマネジメントもITも,結局のところ,企業が儲けるのに役に立たなければ意味がない.言い換えると,そういう道具によって,企業が強くならなければ意味がない.そういう観点から,やはり注目されるのは,トヨタ生産方式と称される,トヨタ自動車の製造技術である.

トヨタ自動車の製造技術に関しては,たとえ自動車関連産業あるいは製造業に属していなくても,「ジャスト・イン・タイム」,「カンバン方式」,「自働化」などのキーワードを聞いたことがある人は多いはずだ.しかし,例えば,カンバンの仕組みを知ったとしても,トヨタ自動車の製造技術の本質を理解したことにはならないし,ましてや,カンバンを利用したからといって企業が強くなれるわけでもない.カンバンは,理想を現実にするための手段として,ニーズから生み出されたものである.したがって,その理想とは何であるのかを知らなければ,トヨタ生産方式の本質は理解できない.なぜカンバンが生み出されたのか,なぜ自働化なのか,その底流にある思想は何であるのか.これらを理解することこそが重要である.

いわゆるトヨタ生産方式に関する書籍は数多く出版されているが,その本質に迫るという観点からは,やはりトヨタ生産方式の生みの親である大野氏の著作を読むのが近道だろう.というわけで,

トヨタ生産方式―脱規模の経営をめざして
大野耐一,ダイヤモンド社,1978

を読んだ.誠に遅ればせながら,という感じだが...本書は,ジャスト・イン・タイムという発想の起源以前まで遡り,トヨタ生産方式の本質と歴史を語ったものである.フォード流の大量生産ではなく,日本土着の多種少量生産方法の確立を目指し,徹底的にムダを排除するトヨタ生産方式.本書は,製造技術に関わる者に多くの示唆を与えてくれる.

さて,そのような本書の中に,次のような言葉があった.

英語の辞書でエンジニア「engineer」を引くと,ご承知のように「技術者」という訳がでている.この訳語の中にある「術」という字だが,この字をよく見ると,「行」の間に「求」がはいっている.「行動」が要求されているのが「術」なのではあるまいか.
 
(中略)
「技術」も(剣術と)同様に,行動が要求される.実際にやるに限るのである.「述」もジュツと読む.最近は「技術者」ならぬ「技述者」のほうが多いのではないか.気になることである.

実際に行動せず,技術について語るだけの人,それを「技述者」と呼んでいる.そうはならないように,気を引き締めなければならない.大学にいる研究者などは,口先で生きているようなところがあるので,なおさらだ.

7月 102005
 

海外旅行の印象を大きく左右するのが,食事だ.アメリカに行くときは食事について何も期待していないので,どうでも良いのだが,ヨーロッパは地方によって料理も異なり,美味しいものも多いので,いつも楽しみにしている.もちろん酷いものに遭遇することもある.

到着初日の夜は,カレル橋まで来たところで散策を終了し,食事をすることにした.クレメンティヌム内の鏡の礼拝堂でのコンサートを聴きに行くため,その近くのレストラン(U Rudolfina)に入った.1階はバーのようになっていて,店員に食事をしたいと告げると,地下へ行くように促されたチェコはピルスナービール発祥の地である.そこで,とりあえず,ピルスナー・ウルクェルと,お薦めだと言われたポークカツレツを注文した.これ以上は食べられませんと言うくらいお腹いっぱいまで食べて,ビールも含めて約300Kc(約1500円)ほどと手頃な値段だった.このU Rudolfinaというレストランには,プラハ滞在中に2度訪れた.2度目は6人で来たため,5種類の料理を取り分けて食べることができ,様々な味を堪能した.

U Rudolfina のポークカツレツ
U Rudolfina のポークカツレツ

学会初日の夜は,U Kalichaというチェコ料理のレストランに行った.オーダーを取りに来た店員に,とりあえずビールと注文すると,いきなり,ピルスナーが1リットルのジョッキで出てきた.これには参った.何種類かのビールを飲もうと思っていたのだが,最初のジョッキでギブアップだ.料理を食べていると,突然店の奥から音楽が聞こえてきた.振り向くと,楽器を持った2人組が演奏しながらホールを練り歩いている.なかなか良い趣向だ.しかし,そう感じたのも最初だけ.20分ごとぐらいに,この2人組が登場しては楽器を演奏する.かなりうるさい.最後には,もう勘弁してくれという感じ.このU Kalichaの料理も美味しくて安い.1人300Kc(約1500円)ほどでお腹いっぱいになる.

U Kalicha での演奏
U Kalicha での演奏

最終日には,TESCOでバスタオルを買った後,近くのU Medvidkuで食事をした.この店では,ピルスナー・ウルクェルではなく,バドワイザーの元祖であるブドバルというビールが飲める.ビール一杯が約200円.料理も凄く安くて,ブドバルとグラーシュ(牛肉の煮込み)で700円ほどだった.

U Medvidku のブドバルとグラーシュ
U Medvidku のブドバルとグラーシュ

プラハ滞在中に一度だけ,高級レストランで食事をした.スメタナホールもある市民会館の1階にあるレストランだ.アールヌーボーの内装はゴージャスそのもの.高級感が漂う.ここではフレンチ風にアレンジされた現代的なチェコ料理がいただけるとのことで,とりあえずお薦めのコース料理を注文した.料理はどれも綺麗に盛りつけられており,味も良かった.でも,高い.今回いただいたコース料理は7000円ぐらいだった.

市民会館1階の高級レストラン
市民会館1階の高級レストラン

今回の滞在では,一度中華料理を食べに行ったのを除いて,他はチェコ料理ばかりを食べた.日本食を食べたいと思うこともなく,チェコ料理を堪能した.やや味つけが濃いのだが,日本人の口にも合う味で,とても美味しい.肉料理が中心なようで,牛肉,豚肉,鶏肉を様々な方法で調理したものが多い.魚(ます)料理も食べたが,こちらはそれほど美味しいと言うこともなかった.

7月 102005
 

空港からホテルへ

パリCDGから2時間ほどのフライトでプラハへ.空港はそれほど大きくなく,迷うこともない.スーツケースを受け取る前に,日本円をチェコ・コルナ(Kc)に両替する.1Kc≒5円.

空港から市街へ向かうには,CEDAZという会社が運行しているミニシャトルバスが利用できる.指定したホテルにも連れて行ってくれるが,今回は共和国広場に近いホテルを予約したので,空港と共和国広場を結ぶシャトルバスを利用した.これなら片道運賃90Kc(約450円)と非常に安い.ホテルまで行くと,360Kc(約1800円)となる.レストランで食事ができる価格差だ.

空港シャトルバス(左)とホテル(右)
空港シャトルバス(左)とホテル(右)

今回利用したホテルは,Mercure Center Prague.欧州を中心にチェーン展開しているホテルだったと思う.共和国広場のバス停留所からもホテルが見える.スーツケースを転がしながら歩いても2分ほどの距離だ.観光の中心となる旧市街にも近く,というか旧市街の中にあり,地下鉄やトラムの駅もすぐ近くにあり,どこへ向かうにも便利だ.

ホテルの外観は中世ヨーロッパを思い浮かべさせる壮麗なもの.ロビーは明るく広く,客室も新しく綺麗で,実に快適なホテルだ.ビュッフェスタイルの朝食は,パン,チーズ,ハム,野菜,果物,ジュースなど種類も豊富で,とても美味しい.天気が良ければ,開放的なテラスで朝食を取ることもできる.清々しく一日のスタートをきるには最高のシチュエーションだ.宿泊料金は朝食付きのシングル1泊で12000円ほど.満足できる設定だ.計6泊の滞在中,日本人には遭遇しなかった.

ホテルの朝食
ホテルの朝食

プラハ散策

プラハ到着初日,ホテルでチェックインを済ませた後,散策に出掛ける.ホテルを出るとすぐ近くに,市民会館がある.その壮麗な市民会館の奥には,黒い火薬塔が見えている.

細い螺旋階段を上り,火薬塔の上からプラハ市街を臨む.旧市街広場の方向に,ティーン教会の尖塔が見える.そのさらに先には,丘の上にプラハ城も見えている.赤褐色の屋根が続く,美しく,ヨーロッパらしい街並みだ.眼下のツェレトゥナー通りには,大勢の観光客が行き交っている.

プラハの景色
プラハの景色

そのツェレトゥナー通りを歩いていくと,旧市街広場に出る.付近には,観光ツアーのためのクラシックカーがいくつも並んで,客待ちをしている.しかし,見所は徒歩圏内に集中しているし,歩いた方が街の雰囲気を楽しめるので,あまりクラシックカーで観光するメリットはなさそうだ.

旧市街広場を通り抜けて,さらに進んでいくと,カレル橋に着く.川を渡ればプラハ城も近い.

海外に来たときには,アメリカを除いて必ず,絵葉書を自宅宛に出すようにしている.プラハの中央郵便局の外観は壮麗で,街並みに溶け込んでいるが,中に入ると,さらに驚かされる.中庭のような空間が現れ,その内壁(かつては外壁だったのか?)一面に美しい絵画が描かれている.天井が非常に高いこともあり,中庭は広々としていて実に開放的で,その奥に近代的な窓口が並ぶ.

壮麗な郵便局
壮麗な郵便局

海外旅行のお土産としては,お菓子などが手軽で持ち帰りやすいのだが,空港の免税店などで買うと,いつも同じような物しか置いていなくて,しかも高い.そこで,訪問した地域ならではのお菓子を買うために,地元のスーパーマーケットに行くことにしている.お土産だけでなく,水やちょっとした食材を買うのにもスーパーマーケットは便利だ.

今回,ホテルから地下鉄で2駅行ったところに,TESCOという大型スーパーマーケットがあった.夕方,地階の食料品売り場は,買い物客で大混雑していた.中央付近のお菓子売り場に行くと,何種類ものウェハースとチョコレートが大量に置いてある.さて,問題はどれを買うべきかということだが,パッケージを見ても分からない.こういうときの作戦は決まっている.買い物客が何を買っていくかを観察するのだ.しばらく眺めていると,どうやらウェハースが人気あるようだ.大きな箱に入った物や,小さな袋に入った物など様々だが,ある会社のものらしい.そのウェハースがチェコ産であることを慎重に確認して,買い物かごに入れる.後は,水などを買って終わりだ.

KOTVA(左)とTESCO(右)
KOTVA(左)とTESCO(右)

プラハのお土産といえば,ボヘミアングラスがあまりにも有名だ.先に独り言「ボヘミアングラス (Bohemian Glass) 」にも書いたように,自宅用も含めて,合計8品を購入した.この壊れやすいお土産を無事に日本へ持ち帰るために,バスタオルで包もうと考え,探しに行ったのがKOTVAというデパートだ.KOTVAはホテルのすぐ近くにあった.だが,流石にデパートだけあって,バスタオルが高い.1枚1000円以上もする.バスタオルが欲しいと言っても,ボヘミアングラスを包むためだけに欲しいのだから,安物で構わない.そこで,再度,TESCOに向かった.こちらは偶然にもセールをしており,大型のバスタオルを安く買うことができた.

7月 092005
 

日本に比べて随分と北に位置し,かつサマータイムを採用しているため,プラハの夏の夜はとても長い.プラハに到着したのは,日曜日の夕方4時過ぎだった.宿泊したホテルはスメタナホールのある市民会館に近く,チェックインを済ませて荷物を置くと,すぐに散策に出掛けた.火薬塔に登り,天文時計のある旧市街広場を抜けてカレル橋へ.川の向こうにプラハ城が見える.

途中,ツーリストインフォメーションに立ち寄ったところ,TODAY/HEUTEと書かれた掲示板に数多くのコンサートのパンフレット(プログラム)が張り出されていた.ガイドブックを読んで,街のあちこちでコンサートが開かれているとは知っていたが,想像を遙かに超えていた.折角プラハに来たのだから,やはりクラシック音楽のコンサートは見ておきたい.そこで,当日,日曜日夜のコンサートのチケットを購入することにした.

有名なスメタナホールでのコンサートをはじめ,博物館や教会など,本当に街の至る所でコンサートが開かれている.教会のコンサートであれば400Kc(約2000円)ぐらいでチケットを購入できる.スメタナホールでも,1000Kc(約5000円)も出せば良い席を確保できる.

生まれてこの方,まともにコンサートに行った経験がない私は,とりあえず雰囲気を味わってみようと思い,クレメンティヌム内の「鏡の礼拝堂」で行われるコンサートを聴きに行くことにした.

コンサートが始まる8時までにはまだ時間があるため,クレメンティヌムの近くのチェコ料理レストラン(U Rudolfina)で食事をする.7時頃から,ピルスナーの元祖であるピルスナー・ウルクェルを飲みながらチェコ料理(ポークカツレツ)を食べて,店を出たのが7時半頃だった.

スメタナホールのある市民会館
スメタナホールのある市民会館

市民会館でのチケット売り
市民会館でのチケット売り

Mirror Chapel(鏡の礼拝堂), Klementinum(クレメンティヌム)
Organ concert

お腹がいっぱいになったところで,鏡の礼拝堂へと向かう.入口付近には,コンサートに来たと思われる人達がベンチに座っている.中庭をブラブラと歩いていると,しばらくして開場となった.鏡の礼拝堂の内部はそれほど広くはなく,荘厳なパイプオルガンが置かれた部屋に,椅子が綺麗に並べられていた.最前列中央付近の席に座り,コンサートが始まるのを待つ.

鏡の礼拝堂内部とパイプオルガン
鏡の礼拝堂内部とパイプオルガン

最初に登場したおじいさんがパイプオルガンの奏者だった.会場内が静まりかえると,パイプオルガンの荘厳な音だけが響く.パイプオルガン独特の音色だ.演奏中に,おじいさんがパイプオルガンの脇の方を見て,何かガタゴトと動かす仕草をした.はじめは何をしているのか分からなかったのだが,しばらくして,その仕草の後に,パイプオルガンの音色が変化することに気付いた.コンサート終了後に確認したところ,パイプオルガンの左右にスイッチのようなものがあり,それを動かすと,音質が変わるのだと知った.

パイプオルガンのスイッチ
パイプオルガンのスイッチ

パイプオルガンのみによる演奏が終わると,ギターとソプラノが加わり,様々な曲目が演奏された.

コンサートは1時間ほどで終わり,9時過ぎに外に出たときには,まだ十分に明るかった.

作曲家 演目
Ch. J. Stanley Voluntary in D
F. Schubert Ave Maria Op.52, No.6
J. de Lublin Dances
C. Monteverdi Due Madrigali
J. Rodrigo Aranjuet, ma pensee
J. S. Bach Choral Overture
P. Eben Pisne k loutne
V. Matousek Via Prophetie
V. M. von Veber Due Canzonetti
G. Toshi Ave Maria
W. A. Mozart Laudate Dominum

Suk Hall(スクホール), Rudolfinum(ルドルフィヌム)
Mozart Orchestra Prague

鏡の礼拝堂でパイプオルガンのコンサートを聴いた後,オーケストラによるクラシックのコンサートを是非とも聴いてみたいと思った.そこで再びチケットオフィスへ向かい,数あるコンサートの中から,良さそうなものを物色した.

選んだのは,水曜日にルドルフィヌム(芸術家の家)内のスクホールで催される,モーツアルト・オーケストラのコンサートだ.ビバルディ,ドボルザーク,モーツアルトと,いかにもプラハに来たことを実感できるプログラムになっている.夕方7時の開演に間に合うようにと,セッション終了後に学会の会場から地下鉄でルドルフィヌムに向かい,到着したのは6時半頃だった.太陽はまだ頭上にあり,日差しが厳しい.開場まで日陰で佇んでいると,同じ会議に参加している日本人も次々にやってきた.

ルドルフィヌム(芸術家の家)
ルドルフィヌム(芸術家の家)

スクホールに入ると,目の前のステージには椅子と譜面代が十数個置かれていた.規模は小さいが,初めてのオーケストラの生演奏に期待が高まる.しばらくして,拍手に迎えられてオーケストラが現れ,次いで指揮者が登場した.

とにかく,オーケストラの迫力に感激した.オーケストラに加えて,美しい女性ソリストのバイオリンとハンサムな男性ソリストのチェロも素晴らしかった.このようなコンサートを,好きなときに,550Kc(約2800円)で聴けるというのは,非常に恵まれた環境だと思う.とても羨ましい.

日曜日のパイプオルガンのコンサートも良かったが,オーケストラによるクラシックの生演奏を聴いた今,その虜になっていた.会場を後にするときには,プラハを去るまでに,もう一度,オーケストラのコンサートを聴こうと心に決めていた.

スクホールでのコンサートも1時間ほどで終わり,6名で夕食に向かった.行き先は,日曜日にポークカツレツを食べたチェコ料理のレストラン.今回は6名で訪れたので,様々なチェコ料理を取り分けて味わうことができた.しっかりとした濃いめの味付けだが,日本人の口にも合い,チェコ料理はとても美味しい.どうしても肉料理が中心になるので,何日も続けて食べると重たく感じるが,海外旅行先ではトップクラスの味だと思う.この日は,黒ビールとピルスナーを飲んだ.

U Rudolfina(ウ・ルドルフィナ)
U Rudolfina(ウ・ルドルフィナ)

作曲家 演目
A. Vivaldi Sinfornia in C major
The Four Seasons – Summer
A. Dvorak Famous Waltzes in A, in D
W. A. Mozart Divertimento in F major, KV 138
指揮者 (Dirigent)
Jiri Portych
ソリスト
Lucie Hulova (Violin)
Martin Sedlak (Cello)

Smetana Hall(スメタナホール), Municipal House(市民会館)
Vivaldi Orchestra Praga

プラハ滞在を締めくくるのに相応しいコンサートとして最後に選んだのは,スメタナホールでのビバルディ・オーケストラによるコンサートだ.チケットは,A席,B席,C席の3種類あったが,これが最初で最後の機会だろうと思い,A席のチケットを1000Kc(約5000円)で購入した.

学会最終日の金曜日,買い物(ボヘミアングラス)と食事を済ませた後で,夕方8時前にスメタナホールのある市民会館へと向かった.市民会館の中に入ったところで,係員にチケット(ツーリストインフォで発券してもらった紙)を見せると,コンサートチケットと交換するように言われたので,ブースに行き,その旨を伝えた.すると,係員が本物のチケットとスメタナホールの座席表を取り出し,10列目6番で良いかと尋ねてきた.ツーリストインフォでチケットを購入した際には,オープンシートだと言われていたので,非常に驚いたが,10列目6番なら悪くはないので,"Sure."と答えて,チケットを手にした.

スメタナホールは壮麗で大きい.水曜日にコンサートを聴きに行ったスクホールとは比較にならない.天井はとても高く,2階席もある.流石は,プラハを代表するホールだ.チケット代金の一部は,このホールの見学料金だと考えて良いだろう.

スメタナホール入口
スメタナホール入口

スメタナホール内部
スメタナホール内部

ステージの照明がともると,ビバルディ・オーケストラが登場した.このオーケストラには指揮者がおらず,コンサートマスターの合図で演奏が始まった.この演奏も非常に良かった.ビバルディの四季は,春,夏,秋,冬すべてが演奏され,春の小鳥のさえずりなど,よくもあれだけ指を速く正確に動かせるものだとバイオリンの演奏テクニックに感心させられた.一応,ほんの僅かな期間ではあったけれども,バイオリンを習ったことのある者として,本当に感心した.CDを聞くのと生演奏では音が違うのも当然だろうが,演奏者の動きを見るという行為が実に興味深い.

10時少し前,スメタナホールのある市民会館を後にして,ホテルへ戻った.

作曲家 演目
G. F. Handel Concerto grosso A Minor Op.6, No.4
J. S. Bach Ricercar a 6 from Musikalische Opfer
A. Vivaldi The Four Seasons (Le Quattro stagioni) –
Spring, Summer, Autumn, Winter
ソリスト
Vaclav Navrat (art. leader) (baroque violin)
7月 092005
 

国際自動制御連盟(IFAC)の"World Congress"に参加するため,チェコ共和国のプラハに来ている.7月4日から8日までの5日間に渡って開催された大規模な学会も終わり,いよいよ帰国というとき,眼前に立ちはだかる大きな問題は,お土産をどうするかだ.それほど沢山買う必要はないのだが,いつも非常にお世話になっている人達にと思い,今回は7個ほどお土産を用意することにした.

お土産はボヘミアングラス

プラハといえば,ボヘミアングラス(Bohemian Glass)があまりにも有名だ.ボヘミア(Bohemia)とは,チェコ西部の地方を指し,プラハはその中心都市だ.お土産として,これ以上のものは考えられない.しかし,お土産としてボヘミアングラスを買うことを躊躇する理由が3つある.すなわち,価格,重さ,壊れやすさだ.

随分と悩んだ挙げ句,研究室の学生達へ買って帰るお菓子を除いて,すべてのお土産をボヘミアングラスにすることに決めた.プラハ市街には,それこそ無数にガラス店があるが,行き先を絞り込み,まずは情報収集を始めた.

ボヘミアングラスの鑑定

最初に訪れたのは,"Celetna Crystal"(ツェレトゥナー・クリスタル)という店だ.3階からなる大きな店舗で,その2階に伝統的なボヘミアングラスが多数展示されている.無色のものから,赤や緑などカラフルなもの,金をあしらったものなどがある.一方,非常にシンプルなカットのものから,細かい幾何学模様のもの,人物や風景などを彫ったものなどがある.見れば見るほど,どれを買ったらよいのかが分からなくなる.

そこで,日本人の店員さんに,「良いボヘミアングラスと悪いボヘミアングラスの見分け方を教えて下さい.」と単刀直入に頼んだ."Celetna Crystal"のその店員さんは,快く承諾してくれて,非常に親切に教えてくれた.

要点をまとめると,以下のようになる.

  • カットは細かいものほど良い.
  • カットは深いものほど良い.
  • 色は無色でも有色でも,好みで選べばよい.

実際,同じようなデザインの幾何学模様のグラスで,Sevcik(シェフチーク)氏の作品と普通のグラスを順番に触らせてもらったところ,カットの深さが全然違うのは明らかだった.高級グラスは物凄く凸凹がはっきりしているのだが,普通のグラスはつるつるしている感じだ.カットの細かさについては,一目瞭然で,非常に大胆な荒いデザインのものもあれば,極めて細かい細工のものもある.基本的には,手作り(Hand Made)のものなのだから,製作にどれだけ手間がかけられているかが価格に素直に反映されているということらしい.

品定めに3時間以上

日を改めて,いよいよボヘミアングラスを購入するために店に出掛けた.店によって置いてある商品が異なるため,先述の"Celetna Crystal"の他,"Erpet"(エルペット)などにも出向いた.

自宅以外へのお土産としては,あまり高価なものも買えないのだが,それなりのものをと思うと,やはり1000Kc(約5000円)以上はする.グラスのセットにすると,持ち帰るのが物理的に不可能になるため,一輪挿しくらいの花瓶,小物を入れられるバスケット,小皿などを候補とした.それでも様々なデザインのものがあり,店員さんに色々とケースから出して見せてもらいながら,散々迷いに迷った挙げ句,無色透明で伝統的な幾何学模様の可愛らしいバスケットに決めた.5個欲しいと申し出たのだが,4個しか在庫がないとのことで,まず4個のバスケットを確保した.次に,同じくらいの価格で,やはり無色透明で伝統的な幾何学模様の小皿を2つ注文した.

自宅以外へのお土産として,合計6つのボヘミアングラスを購入した.一応,ミッション終了である.しかし,ここに至るまでが大変だった.デザインや価格を比較するために,雨の降る中,"Celetna Crystal"や"Erpet"などの間を行ったり来たりし,どれが良いかで散々頭を悩ました.もっと気楽に考えれば良いのだろうが,これが自分の性格なのだと諦めている.

バスケットを自宅へのお土産に

ようやく自宅以外へのお土産を決めることができたのだが,この時点で,既に2時間以上を費やしていた.最終的に,旧市街広場の旧市庁舎前にある"Erpet"という店で購入することにしたのだが,この店に入ってからでも1時間は経っていただろう.

元々は,最初にお世話になった"Celetna Crystal"で購入するつもりだったのだが,買おうと思える商品の品揃えという点で,"Erpet"に決めた.

いよいよ自宅へのお土産を決めなければならない.折角プラハまで来てボヘミアングラスを購入するのだから,持って帰る価値のある品物を手に入れたい.実は,"Celetna Crystal"で,グラスの見分け方の他に,「どのクラス以上のグラスなら日本に持ち帰る価値があるか.」という質問もしていた.親切な店員さんは,先述のSevcik(シェフチーク)氏の作品と"SKLO SAFRANEK"の商品が優れていてお薦めだと教えてくれた.当然ながら,どちらも驚くべき価格だ.ボヘミアングラスを日本で買うと,プラハの2倍以上はするというのだから,さらに驚きだ.しかし,"Sevcik"や"SKLO SAFRANEK"の商品は,そもそも日本では手に入らないとも聞く.

実は,"Erpet"で,一目惚れした商品があった.花の図柄が彫られた美しい花瓶で,花を取り巻く左右の模様には非常に深いカットが施されている.滑らかに弧を描く花瓶の形も綺麗で,とても気に入った.しかし,小さな花瓶1つで約6000Kc(約30000円)となると,気楽に買えるはずもない.ちなみに,この花瓶が"SKLO SAFRANEK"の商品だ.

もう少し手軽なものをと探していたところ,同じく"SKLO SAFRANEK"のバスケットが目にとまった.自宅以外へのお土産として既に購入したバスケットも1000Kc(約5000円)以上するもので,決して安いものではないのだが,それとほとんど同じ大きさの"SKLO SAFRANEK"のバスケットは,なんと約3000Kc(約15000円)だ.価格が3倍近くもするのだが,2つを触り比べた瞬間,その価格差に納得してしまった.見ただけでもカットが細かいことはわかるのだが,それだけでなく,非常に深く彫り込まれており,手が込んでいることが伝わってくる.素人にも明らかに分かる違いだ.

"SKLO SAFRANEK"のバスケットを手にとったとき,恐らく私が驚いた表情をしたのだろう.商品をケースから出して見せてくれた女性店員さんが,「これは非常に品質が良いものよ.カットが全然違うでしょ.(英語で)」と声をかけてくれた.

手にした瞬間に決心していた.

"I want this basket."

SKLO SAFRANEK のバスケット
"SKLO SAFRANEK"のバスケット

SKLO SAFRANEK のバスケット
"SKLO SAFRANEK"のバスケット

一目惚れした花瓶

相手をしてくれた女性の店員さんにも,色々と教えてもらった.例えば,"SKLO SAFRANEK"の似たような小皿が3倍ほども価格差があるのはなぜか.1つには,女性の表情を丁寧に彫り込んだ小皿と,静物(果物)を彫り込んだ小皿との違いということだった.人の表情を表現するのは難しく,それが価格に現れるとのこと.もう1つは,施された幾何学模様の精緻さということだった.

さて,お土産を合計7つ購入したところで,小さな花瓶との睨めっこが始まった.あまりにも悩むので,店員さんも「既に購入を決めた商品を包装しておくから,ゆっくり見ていて.(英語で)」と言い残して去っていった.

それからどのくらい経っただろうか.突然背後から,「この花瓶がよっぽど気に入ったのね.(英語で)」という声がした.女性店員さんが戻ってきたのだ.ケースの扉を大きく開け放つと,その花瓶を取り出し,「この花瓶は凄く綺麗でしょ.でも,とても高いわよね.例えば,ほら,あの後ろの方にある花瓶なんて,これより大きいけれど,ずっと安いでしょ.手作りだから,どれだけ手が込んでいるかが重要なの.大きなものよりも,むしろ小さなものの方が,カットが大変で価格も高くなるの.(英語で)」と教えてくれた.小さな花瓶と大きな花瓶を交互に手にとって比べてみると,なるほどそういうものかと納得した.

一瞬の間の後,一目惚れした花瓶の購入を決意した.プラハに来るのは,これが最初で最後と思っている.惚れ込んだ商品だけに,後悔はしたくない.花瓶の前に立ち尽くして,かなりの時間が経っていたに違いない.

SKLO SAFRANEK の花瓶
"SKLO SAFRANEK"の花瓶

SKLO SAFRANEK の花瓶
"SKLO SAFRANEK"の花瓶

SKLO SAFRANEK の証明書
"SKLO SAFRANEK"の証明書

親切な店員さん

花瓶を購入する意志を伝えると,店員さんはニコッとして,在庫を確認しに行った.戻ってくると,花瓶を包装しながら,「割引クーポンは持ってる?(英語で)」と尋ねてきた.「持ってない.」と返事すると,「そう.でも,割引しておいてあげるわ.(英語で)」と言ってくれた.その店員さんと一緒にレジに行くと,無愛想なレジ係の店員が5%割引をしてくれた.購入した金額が相当なものなので,有り難かった.さらに,19%の税金も戻ってくる.

ちなみに,"Erpet"の店員さんがすべて優れているわけではない.レジ係が無愛想だったことは先に述べたが,"Erpet"で最初にケースを開けてくれた別の女性店員さんは,"SKLO SAFRANEK"の小皿の価格差について質問しても答えられなかった.仕方のないことだが,店員によって商品に関する知識が全然違うのは明らかだ.今回,良い店員さんに相手をしてもらえて本当に良かった.

"Erpet"にも日本人の店員さんが複数いるようなのだが,日本語を扱うおばさん集団に占有されていた.現地の言葉までは使えないけれども,英語で意思疎通ができるというのは旅行を楽しむには重要なことだと感じる.

さて,残る問題は,重さと壊れやすさだ.やっとの思いで購入したボヘミアングラスを無事に持って帰らなければならない.たまたま"TESCO"というスーパーマーケットでセールをやっていたので,バスタオルを2枚購入し,厳重に包んで持ち帰ることにした.

ボヘミアングラス
非常に美しいボヘミアングラス(Bohemian Glass)!
高価だけどプラハ土産に購入!!