8月 272005
 

国立大学が法人化されてから,大学における知的財産権の確保が声高に叫ばれている.知的財産権について,広辞苑には,「知的創作活動に基づく無形資産への財産権.特許などの工業所有権と著作権などから成る.」と書かれている.最近,大学で特に奨励されているのは,知的財産権の中でも特に特許の出願だろう.

京都大学においても,国際イノベーション機構(IIO)内に知的財産部が設置され,教員による特許出願等を支援している.このような京都大学での取り組みは,文部科学省による「大学知的財産本部整備事業」の中間評価で最良の「A」評価を受けるなど,国内では高く評価されている.なお,上記事業は,大学等における知的財産の戦略的な創出・管理・活用等の体制整備を推進するために実施されているものである.

事実,京都大学における特許出願件数(発明届出件数)は,H12年度17(13)件,H13年度9(23)件,H14年度56(64)件,H15年度131(189)件,H16年度408(587)件と,毎年2倍以上のペースで急速に増加しており,知的財産権確保に向けた大学の取り組みが効果を上げていることがわかる.

私自身も,既に2件の特許出願において,知的財産部のお世話になった.発明届けを知的財産部に提出すると,当該分野の知識を持つ担当者がヒアリングに訪れ,発明の内容や新規性,有用性を確認する.その際に,手続きやスケジュールについての説明があり,大学が権利を継承するかどうかを判定する評価委員会に備えて,簡単な資料の提出を求められる.大学が権利を継承することが決まると,特許事務所にて特許出願に必要な明細書を作成してくれる.発明内容を記載したレポート等を提出すれば,後はお任せでやってもらえるので,発明者本人は原稿のチェックぐらいしかする必要はない.費用はすべて大学が負担するため,個人あるいは研究室からの支出はない.様々な内容の相談を受け付けてくれるし,緊急事態には速やかに対応してもらえる.先日は,発明届けの提出から出願までを約2週間でこなすことができた.

恐らく,多くの大学で,似たようなシステムが動き出していることと思う.そのような状況下で,不安に感じるのは,特許の出願や維持にかかる費用をどうしていくのかということだ.簡単のため,1件につき100万円かかると考えてみよう.まずまず現実的な数字だ.そうすると,H16年度の特許出願に関連して,408件×100万円/件=約4億円の費用がかかることになる.もちろん,特許からの収入も期待できるので,その分は差し引いておくべきだろう.京都大学におけるH16年度の知的財産収入は1738万円だ.したがって,正味の支出は約4億円となるだろう.ん?何も変わってないような...これが現実だ.

知的財産収入も今後飛躍的に増加する可能性が高い.しかしながら,物凄い特許が出ない限り,収入が支出を上回るとは考えにくい.これは京都大学総長も認めているところだ.JST科学技術環境シンポジウムにおいて,大学発ベンチャーに関連する発言の中で,尾池総長は次のように述べている.

ベンチャーで大事なことは、研究者の使い捨てになってはいけないということです。あまり流行に乗って、ベンチャーとして育ってどこかに行って潰れてしまって、後のケアができないのではいけないと思うので、大学としては慎重でなくてはいけないと思います。

もう一つ、ベンチャーで特許でもあれば収入をものすごく確保できるように思う方たちがたくさんいるというのが問題でして、特許はほとんどお金儲けになりません。今まで国立大学で保護されていたのが裸になったわけですから、自分たちの研究を守るための特許が必要です。つまり防衛特許ですね。これがものすごくお金がかかるわけで、企業の方はお分かりだと思います。ほとんど収入に繋がる特許ではなくて、研究そのものを守るためにお金をかけていく。それが大学の知財本部の一番大きな仕事になっています。もちろん特許の中には収入になる良いものもあるでしょうが、そんなに私は期待していません。大学の先生の研究をしっかり守るという意味で特許は大事な部門になるだろうと思います。

この2つのことをぜひ皆さんに良く知っておいて欲しいと思います。

彼は,大学知的財産部の重要な使命の1つが防衛特許の出願だと言っているわけだ.この発言を受けた司会者の「大学にとって知財を確保することが現時点あるいは近い将来に何によって制約されそうか」という質問に対して,鳥居奈良先端科学技術大学院大学長は以下のように答えている.

これはもう当然、出願費用ですよ。それで首が絞まっていきますね。(中略)

しかし、先立つものは要ります。尾池先生がおっしゃる防衛特許は大学には少しそぐわないと思いますので、これは学内で絞り込んだ出願になるかもしれません。しかし当然こういう傾向ですから、出願したいというのは増えてまいります。そうすると、その原資は間接経費その他で、大学としての管理運営の一般的なところから、普通に言えばピンはねみたいな格好で、大学で確保して、それをそちらへ流していくことをまず第一歩として今やろうとはしていますが、これは試行錯誤しながらやっていくわけですから、ある方向で一つなどとは決して言えない状況です。

このように,大学としてどのような特許を出すべきかという認識にはバラツキがあるものの,費用が問題となることについては意見が一致している.現時点では,文部科学省による「大学知的財産本部整備事業」もあり,日本国全体が「大学も税金で飯を食わしてもらっているんだから,ちょっとは国に貢献できるように,知的財産権でも確保しろ!」という風潮であり,さらには「経済活性化のために,もっとベンチャー企業を立ち上げろ!」という意見もあり,特許を出願したいという研究者には追い風である.あまり特許に興味がない研究者にとっても,特許が業績として(学術論文よりも)認められることになるなら,特許を取らなければならないというプレッシャーはかかってくるだろう.

いずれにせよ,特許出願を強く奨励する環境にあるわけだが,急激な上昇を続ける特許関連費用の負担方法をきちんと整備しておかなければ,近い将来,激しい揺り戻しが来ると予想される.金額的には,数億円程度で大規模な大学の財政が破綻したりはしないだろう.無駄を廃し,膨大な間接部門経費の削減などを敢行できたら,それぐらいの費用はなんとでもなるはずだ.しかし,赤字の拡大を黙って見ているだけとはいかないため,特許出願は制限される方向に動くかもしれない.件数が多ければ良いというような低次元な発想の時代はすぐに終わりを告げる.その後に残るものは果たして何か?

既に特許を出願した私としては,「儲からない特許を出願した研究者は,その責任を取って,給料6ヶ月分10%カット!」なんて制度ができてしまわないことを祈るばかりだ.本気で...それに,企業と大学の共同研究や受託研究のピンハネ率を上げるのも勘弁してもらいたい.ある程度のピンハネは問題ないと思うが,30%超にもなると,流石にどうかと思う.自分が資金供給側なら,30%も目的外に流用されるなら,資金を供給したくなくなるだろうから.

8月 212005
 

ソウル滞在中に,国際文化サービスクラブが催行する,板門店共同警備区域(JSA)ツアーに参加した.

板門店共同警備区域(JSA)への道

集合場所は東和免税店1階ロビー.パスポートを提示して,ツアークーポンを受け取り,指定されたバスに乗り込む.同じツアーのバスが2台あり,どちらも満員だ.凄い人気だ.

定刻より少し早く出発.ところが,バスガイドのアンさんが話を始めようとしたところ,マイクの調子が悪く,まともに聞こえない.急遽,バスを止めて,スペアのマイクを取り寄せることになった.そんなゴタゴタで,我々が乗り込んだ2号車は,1号車に大きく引き離されてしまった.

板門店までは,自由道路と名付けられた,ハン川およびイムジン川沿いの道路を進む.この川は北朝鮮から流れてきているため,川を通って,北朝鮮から兵士やスパイが進入してくる恐れがある.このため,川沿いには鉄条網が敷設され,厳重に警備されている.特に,暗い夜に進入される危険性があるため,昼の警備に20%,夜の警備に80%の人員が配置されているそうだ.

鉄条網を通して対岸を見ていると,やがて,北朝鮮の村が見えてくる.近くて遠い.そんな言葉がピッタリとあてはまる感じがした.

北朝鮮の村が対岸に見える川沿いの鉄条網
北朝鮮の村が対岸に見える川沿いの鉄条網

板門店共同警備区域(JSA)での注意事項

板門店共同警備区域(JSA)ツアーは,他の観光ツアーと異なり,様々な制約がある.

まず,ツアー予約時に与えられる注意は,1)パスポートを持参すること,2)服装に気を付けること,の2点だ.パスポートは,身分証明のために当然と言えるだろう.服装についても,戦争中(現在は休戦中だが終戦はしていない)に敵軍と接している地域に行くわけだから,色々と規制されるのは当然だろう.ウェブサイトには,以下の服装が禁じられていると書かれている.

Gパン,Tシャツのまま,運動服,半ズボン,サンダル,ミリタリースタイル,ミニスカート,露出の多い女性服,男性の長髪または整髪されていないヘアスタイル,その他共同警備区域・米軍支援団司令官が許可しない服装.

どれも納得できそうなものだが,Gパンがダメな理由がよくわからない.その疑問に対しては,バスガイドのアンさんが明快に応えてくれた.アンさんによると,「ジーンズは元々アメリカのものであるから,韓国側にジーンズを着た人がいると,『韓国は未だにアメリカの援助を受けている国である』という宣伝に利用されてしまう.だから,禁止されている.」のだそうだ.なるほど,そういうものかと,納得させられた.

この他,板門店に向かうバスの中で,様々な注意事項の説明を受けた.全部は覚えていないが,例えば,以下のような注意だ.

  • 走ってはいけない.
    板門店で走ると,亡命ではないかと思われ,国連軍および北朝鮮軍の兵士が極度の緊張状態になるため.当然,彼らは武装しているので,臨戦態勢となる.
  • 北朝鮮兵士を指さしたり,手を振ったりしてはいけない.
    敵国兵を刺激するような行為は論外.
  • カメラ以外のものを手に持ってはいけない.
    傘や杖など,武器になりそうなものがダメなのはもちろん,帽子や手袋なども一切ダメとのこと.
  • 酒帯びはいけない.

このような禁止事項をツアー参加者の誰かが破った場合,警告を受けるか,あるいは最悪の場合,ツアーがその場でキャンセルされてしまうそうだ.これまでにも,手袋を手に持って警告を受けたケースや,帽子を手に持って警告を受けたケースなどがある他,昼食時に飲酒した参加者が非武装地帯(DMZ)に入る際のチェックに引っかかり,ツアーがキャンセルされてしまったケースや,参加者が北朝鮮軍の兵士に手を振ったために,そこでツアーがキャンセルされてしまったケースなどがあるとのことだった.

しかも,参加者の失態によってツアーがキャンセルされると,ツアーガイド(バスガイド)はその責任を取って退職しなければならないという話だ.その一方で,参加者が指示に従わず禁止事項を守らなかったにもかかわらず,そのツアーの警護担当兵士がツアーキャンセルを指示しなかった場合,その兵士には懲役刑が科せられるとのことだ.いずれにせよ,参加者が指示を守らないと,とんでもないことになる.そのため,必然的に,ツアーには緊張感が漂う.

板門店共同警備区域(JSA)ツアーのバスガイドさん
板門店共同警備区域(JSA)ツアーのバスガイドさん

板門店共同警備区域(JSA)

非武装地帯(DMZ)に到着すると,パスポートや服装の検査を受け,問題がなければ,国連軍の青いバスに乗り換える.最初に向かうのは,国連軍の最前線基地で,そこでブリーフィングを受ける.

板門店共同警備区域(JSA)へ向かう国連軍のバス
板門店共同警備区域(JSA)へ向かう国連軍のバス

ブリーフィングを受ける際に,国連軍のゲストであることを示す緑色のネームタグが配布される.その後,非武装地帯(DMZ),共同警備区域(JSA),板門店などに関する説明を受け,訪問者宣言書にサインをする.その訪問者宣言書には以下のような文言がある.

「敵の行動によっては危害をうける又は死亡する可能性がある.(中略)国連軍,アメリカ合衆国及び大韓民国は訪問者の安全を保障することはできないし,敵の行う行動に対し,責任を負うことはできない.」

ゲスト用ネームタグ(左)と軍事停戦会議本会議場(右)
ゲスト用ネームタグ(左)と軍事停戦会議本会議場(右)

非武装地帯(DMZ)を通り,板門店共同警備区域(JSA)に到着すると,バスから降りて,参加者全員が2列に整列する.そして,警備担当の兵士に引率されて,軍事停戦会議本会議場と自由の家(展望台)に向かう.

2号車のグループは,まず,軍事停戦会議本会議場に向かった.建物から出ると,目の前に,道を挟んですぐ近くに,会議場がある.その会議場も含めて,すべての建物の両側には,北朝鮮が警備する区域の方を睨み付けたまま,微動だにしない兵士が立っている.すべての兵士は,その半身を建物で隠し,不測の事態に対応できるようにしている.視線を上げると,会議場の向こう側にある建物の前で,北朝鮮の兵士が直立不動の姿で,こちらを見ている.一気に緊張感が高まる.

警護担当の韓国兵と奥の建物前で直立する北朝鮮兵
警護担当の韓国兵と奥の建物前で直立する北朝鮮兵

軍事停戦会議本会議場内に入ると,奥の扉の前に,直立不動の兵士がいる.我々が利用した扉は韓国側,兵士の背後にある扉は北朝鮮側へと通じている.この兵士の背後に回ることは,北朝鮮側へ行くこと,すなわち亡命を意味するため,固く禁じられている.以前,我々とは逆の立場で,ソ連の記者が北朝鮮側から板門店の取材をしていたときに,突然,韓国側の扉を開けて突っ走ったそうだ.このような亡命の前例もあるため,警備は厳重になっている.

軍事境界線の真上に置かれた会議テーブルも,直立不動の兵士によって見張られている.会議場内では撮影が許可されているため,参加者は兵士と一緒に写真を撮ったりしていた.ややリラックスした雰囲気になったのも束の間,会議場から再び外へ出るときには,バスガイドさんからも凄い緊張が伝わってくる.2列に整列して,会議場から元の建物へ戻る間,決して振り返って北朝鮮側を見てはいけないと注意される.

次に我々が向かったのは,自由の家と呼ばれる展望台だ.すぐ近くに北朝鮮の見張り所があり,我々の動きを監視している.自由の家からは,軍事停戦会議本会議場や,その奥の建物前に立つ北朝鮮兵の姿もよく見える.

北朝鮮側の見張り所
北朝鮮側の見張り所

反対の方角に目を向けると,北朝鮮の街と国旗掲揚台が見える.この国旗掲揚台の高さは160メートル,旗の幅は30メートル,旗の重さは295kgもあり,世界最大の国旗掲揚台とされている.これ程大きな国旗掲揚台を建設したのは,軍事境界線を挟んで反対側にある韓国の国旗掲揚台との高さ競争に勝つためなのだという.韓国側が100メートルの国旗掲揚台を建設したところ,それに対して,北朝鮮側は160メートルの国旗掲揚台で応酬した.実にくだらない争いのように見えるが,自国と敵国の国旗掲揚台を見る人々にとっては,心理的に重要な意味もあるのだろう.

北朝鮮の国旗掲揚台と街
北朝鮮の国旗掲揚台と街

非武装地帯(DMZ)

軍事境界線から2kmの幅(北側に2km,南側に2km,合計4km)に設けられた非武装地帯(DMZ)は,永らく人手が入らない状態が続いているため,豊かな自然が残り,野生の動植物の楽園になっている.しかし,それと同時に,無数の地雷が撒かれている,極めて危険な地域でもある.

そんな非武装地帯(DMZ)の内部に村がある.驚くべきことに,兵士が住んでいる村ではなく,普通の韓国市民が生活している村だ.非武装地帯(DMZ)ができる以前から,その地に住み続けている人達が生活しているそうだが,拉致の可能性も含めて,いつも危険と隣り合わせの生活を強いられている.このため,農作業時には常に軍が警備するそうだ.また,その危険かつ不便な生活の見返りとして,その村の住人については,兵役や納税の義務が免除されているそうだ.

日本と韓国,北朝鮮

今回参加した板門店共同警備区域(JSA)ツアーは,参加するに値するツアーだった.ソウルに行く機会のある人は,参加してみると良いだろう.沖縄や,米軍基地の近くに住んでいる人達を除けば,日本では経験できない世界が,そこにある.

しかも,日本人は,第三者として板門店共同警備区域(JSA)を傍観できる立場にはない.韓国併合,第二次世界大戦,朝鮮戦争と,板門店共同警備区域(JSA)が生まれる過程に日本は大きく関わっている.板門店共同警備区域(JSA)ツアーに参加する際には,日本と韓国,北朝鮮の歴史も顧みないわけにはいかない.

バスガイドさんは,板門店にまつわる歴史を説明する中で,何度か「日本による侵略」という言葉を使った.これは,なかなか聞くのが辛い言葉だった.戦後60年経つ現在においても,歴史認識の食い違いが問題となっている.お互いに,事実に基づいて,過去を正しく伝えようとする努力が求められている.

8月 202005
 

韓国・ソウルで開催された"PSE Asia 2005"という国際会議に参加した.今回で第3回となる"PSE Asia"は,アジア地域におけるプロセスシステム工学分野の活動を促進し,より多くの若手研究者や技術者に国際会議で他国の研究者や技術者と議論・交流する機会を与えるという目的で立ち上げられた国際会議である.第1回は京都で,第2回は台湾・台北で開催された.第4回は,2007年に中国・西安で開催される.

学会参加者は約200名で,半数強が地元韓国からの参加だ.その他,日本と台湾からそれぞれ40名程が参加し,中国やシンガポールなどアジア各国からそれぞれ若干名が参加した.さらに,招待された講演者が,イギリスやアメリカからも参加している.これまでのところ,開催を重ねるごとに,会議の規模は拡大している.

アジアが中心の会議であるため,本格的な国際会議と比べると,テーマの広がりや論文の質という観点で見劣りする面がないわけではない.しかし,地理的に近いアジア地域において,同一分野の研究に携わるもの同士が交流することの意義は大きいと感じる.特に,博士課程や修士課程の学生が国際会議を経験するには,非常に良い機会となっている.

今回の"PSE Asia 2005"では,招待講演を依頼され,40分の講演を行った.何よりも,このような機会を与えてもらったことに心から感謝している.ところが,会議直前まで,その他の仕事や研究室から参加した学生の発表準備を手伝うのに忙しく,なかなか自分の発表準備を終わらせることができなかった.講演前夜23時の段階で,発表時間を計測すると50分程度だったため,どの項目を削るべきか悩みに悩み,構成を変更し,スライドと原稿を修正し,再度発表練習するという作業を何度か繰り返し,最後にアクセントや発音を再度確認して,ようやく満足のいく準備ができたのは,講演当日の午前3時過ぎという有様だった.

さすがに,もう少し余裕を持って準備しておかないと,精神的にも肉体的にも辛い.国際会議での発表に慣れてくると,どうしても準備が後回しになりがちだが,次回からは気を付けよう.

8月 122005
 

2月20日の独り言「新車購入計画」で,車の買い換えについて書いてから,ほぼ半年が経過した.現在の状況をまとめておこう.

最近になって,ようやく試乗をさせてもらうようになった.まだ少数だが,これまでに試乗したのは以下の通り.

  • Mercedes-Benz A200 ELEGANCE
  • Renault MEGANE Touring Wagon 2.0 GlassRoof
  • Volkswagen GOLF V GLi
  • Audi A3 Sportback 2.0 FSI  

まあ,排気量2000ccクラスのコンパクトカーということだ.欧州車に決めているわけではないが,折角の機会なので,欧州車に試乗しておこうという方針だ.

もちろん,最終的な結論はまだだが,上記4車種の中で2つは候補から外れた.1つはAクラス.車に問題があるとかではなく,彼女が嫌いだから.これほど強力な理由はない.もう1つはメガーヌ・ツーリングワゴン.試乗したときは,このATでも何とか我慢できるかなとも思ったが,アイシン製6速ATを搭載するGOLFやA3と比較すると,全く話にならない.通勤に使うことがほとんどなので,街乗りでのATの滑らかさは重要だ.というわけで,ハッチバックのメガーヌもダメ.スタイルは気に入っているのだが.

そして,実は,もう一つ.私のような貧乏人には,A3 Sportback 2.0 FSI は買えない.キセノンとナビを付けたら定価で400万円を超えてしまう.そのスタイルと高い質感には惚れ込んでいるのだが...と思っていたら,A3 Sportback のラインナップに Attraction が加わった.排気量が1600ccに落ちるが,2.0 FSI よりも50万円ほど安い.ただ,GOLF V E が1600ccでも FSI であるのに対して,Attraction は FSI ではないそうだ.欧州では,A3 Sportback 1.6 FSI Attraction というグレードもあるのだが...まあ,エントリーモデルとして一番低価格なグレードを日本に導入して,アウディ購買層の裾野を広げようということなのだろう.私みたいなのが反応するのだから,作戦は大成功だろう.

さらに色々と試乗をさせてもらいながら,のんびりと決めることにしよう.次の車検までには1年以上あるのだから.Peugeot 307 のフェイスリフトもあるし,GOLF Plus もデビューするし...と思っていたら,彼女がFAXを見せてくれた.なにか表が書いてあるが,と読んでみると,A3 Sportback Attraction の見積書だ.独自ルートで見積書を入手したようだ.日本導入直後で厳しくはあるが,頑張ってもらった価格のようだ.風雲急を告げる.かもしれない.

8月 112005
 

先日の独り言「それでいいのか.食育授業.」で,長男もそろそろ幼稚園のことを考える年齢になってきたと書いた.そんな折り,彼女が,彼女の友人が子供を通わせている幼稚園についての話を聞いてきた.

その幼稚園は公文式なのだそうだ.公文式の幼稚園があることすら知らなかったが,流石に公文式だけあって,幼稚園でありながら子供に勉強をさせてくれるらしい.公文式と言えば,全員が同じことを一斉に勉強するのではなく,個々人のペースに合わせて問題(プリント)に取り組むことに特徴があると思っている.その幼稚園でも,園児の進度に合わせて問題を与えるようだ.

さて,ここで問題が発生する.それは,園児によって進度が異なる,つまり,園児にランク付けがなされることだ.もちろん,幼稚園としては,ランク付けなど微塵も意図してはいないだろう.しかし,園児の親の中には,自分の子供が進んでいるのか遅れているのかを気にする人もいるだろう.そして,自分の子供が平均以上でないと気が済まない親もいるだろう.もしかすると,トップでないと気が済まない親すらいるかもしれない.実際,自分の子供のランクが落ちないように,家で必死になって子供に勉強をさせる親もいるとのことだ.勉強するのが嫌だと泣き叫ぶ幼稚園児に,無理矢理勉強させるというのだ.

ハッキリ言うが,そんな子育ては完全に失敗だ.修復不可能なキズを子供の心に刻むことになるだろう.嫌がる園児に勉強を強制する母親は,子供のために頑張っているつもりなのかもしれないが,結果的には,子供のランクが上がることによって,良い子育てをしている優秀な母親として,自分が社会的に認知されたいという欲求を満たそうとしているに過ぎない.そういう意図があることを認めたくはないことも,真剣に子供のために頑張っているつもりであることも,私は理解する.しかし,結果として,子供を追い込んでしまっている.

幼稚園ぐらいの幼い子供にとって,母親や父親はとても大きく大切な存在だ.それ故に,勉強しなさいと理不尽に強制されたとしても,親に喜ばれるためならと,自分の心を封印してでも親の命令に従うだろう.そんな従順で健気な子供は,親の目にも,周囲の目にも,親思いの良くできた子供と映るだろう.しかし,自分の心を押し殺してしまった代償は,いずれ払わなければならない時が来る.ある日突然,非行や暴力に走るかもしれない.抑圧され,心の奥底に封印されたものが,爆発してしまうのだ.そんなふうに子供を育ててはいけない.幼稚園児に勉強を強制するような育児は間違いであることに,母親が早く気付くことを祈るばかりだ.

なお,「子供に勉強を強制してはいけない」という主張は,長谷川氏の「お母さんはしつけをしないで」という本にも書かれている.この本は,単純に反早期教育を唱えるのものではなく,子供にどうしても厳しくしてしまう母親,育児に悩む母親に,もっと母親は気を楽にしていいのだというメッセージを送ることを目指している.また,そのために,厳しすぎるしつけによって子供が追い詰められた結果が,現在の悲惨な社会状況なのだということを示している.育児に関心があるなら,一度読んでおくと良いだろう.

ちなみに,彼女の友人は,子供のランクなんて全然気にしないらしい.だから,子供に勉強を強制することもない.しかし,子供同士が「お前は遅い!」とかお互いを比較してしまうそうで,それが嫌だと言っていたそうだ.それなら公文式幼稚園は嫌なのかというと,それ以外に良い面が多くあるので,第二子も公文式幼稚園に通わせることを考えているそうだ.

8月 102005
 

8月8−10日の3日間,岡山大学で開催された"SICE Annual Conference"(計測自動制御学会の年会)に参加した.

近年,この会議は国際化を目標に掲げており,今年は30%程度の論文が日本国外から投稿されたとも聞く.関係者の凄まじい努力が推察される.日本発の会議が国際的に認知されるというのは素晴らしいことだ.もちろん,国際化を目指しているわけだから,論文も発表もすべて英語である.

さて,会議の国際化が進むのは喜ばしいことではあるが,今回の会議では,その副作用も強く感じた.それは,あまりに発表のキャンセルが多いことだ.私が聴きに行ったセッションに関しては,とにかく中国からの論文発表が軒並みキャンセルされていた.セッションによっては,約半数がキャンセルなんていうのもあった.あまりに酷い状況だ.国際化というメリット以上に,会議の質が低下してしまうというデメリットが大きくなってはいけない.学会には,キャンセル数を減らす努力が今後求められる.

国際会議では,このような現象は別に珍しいものではない.以前には,東欧諸国の研究者が国際会議に論文を投稿するものの,国際会議には来ず,発表もしないというケースが目立った時期がある.結局,彼らは,会議の予稿集に論文が掲載されることが自身の研究実績として認知されるため,頑張って論文を投稿するのだが,ビザや旅費の都合で参加できないということだ.同情すべき状況ではあるのだが,国際会議の質を落としているのは間違いない.したがって,当然ながら,対策が講じられることになる.その対策とは,会議参加費(登録料)を支払わない限り,会議の予稿集に論文を掲載しないというものだ.こうなると,実績を残すためには,会議に参加する他ない.実際には参加できなくとも,少なくとも参加費は支払わなければならない.主催者側からすれば,少なくとも参加費の取りはぐれは防ぐことができる.今回の計測自動制御学会年会に限らず,中国から投稿された論文のキャンセルは結構目に付くので,何とかしなければならないだろう.

なお,この会議の会期中に行われた式典において,計測自動制御学会論文賞武田賞を受賞することができた.共著者と共に,アドバイスを下さった方々や関係各位に心より感謝するばかりだ.

8月 062005
 

長男が誕生してから,育児や食育について猛烈に勉強している.人間として,育児ほど大切な使命はないとも思っている.もちろん,我が家でも育児の中心は母親であり,1日24時間,1週7日,1年365日,休む間もなく子供の面倒を見てくれている彼女には頭が下がる.私は朝晩に顔を合わせるだけで,せいぜい日曜日に遊んでやるぐらいでしかない.それでも,育児や食育について勉強することによって,間接的に育児のサポートはできる.少なくとも,無関心ではないことを示せるし,母親がやりたいことを理解できるし,甚だしく間違った育児方針を押し付けて,すべてを母子に責任転嫁するような愚行を犯さずに済む.

私がどれぐらい頑張って勉強しているかについては,『食育・育児・教育の情報源』を見てもらうのが良いだろう.食育に関しては,スナック菓子,ジュース,乳製品などは与えないという方針を堅持している.加えて,野菜類は季節のものを中心とした有機野菜を選び,農薬に汚染された海外産のものは避けるなどしている.これぐらい徹底していても,飽食のこの時代,体に悪い食べ物は知らず知らずのうちに食卓に上る.

長男もそろそろ幼稚園のことを考える年齢になってきたが,食育に関する方針がどうなっているのかは気になるところだ.子供が喜ぶからと,ジャンクフードばかり与えているような所では困る.そんな折,外食・菓子産業が小中学校での食育授業に乗り出しているとのニュースを見掛けた.

「ジャンクフードやファーストフードを食べましょう」と宣伝をしたい企業側の意図と,総合学習を自分で指導できずに手抜きをしたい学校教師の意図とが,絶妙にマッチした格好だ.外食・菓子産業が学校で食育授業を手伝うことは悪くないだろう.問題は,宣伝目的の一方的なセールストークを教育と称して子供に押し付ける態度だ.情報は情報提供者に都合がよいように操作されていることを認識し,企業を利用しながらも,子供に異なる考え方もあることを伝えるなどの役割を教師が担う必要がある.それができないようなら,そんな出前授業は断るか,教師を辞めるかだ.「ジャンクフードやファーストフードを食べましょう」なんて授業は,子供に害を与えるだけだ.

【ニュース】(朝日新聞,2005年08月06日)

外食や菓子メーカーが、子どもを対象にした食の教育(食育)の出前授業に相次いで乗り出している。授業を通じて「健康に悪いジャンクフード」というイメージを変えるのが狙いだ。総合学習のテーマ選びに悩む学校側が飛びついているが、専門家からは「内容が偏らないよう、教師がきちんと授業を取り仕切る必要がある」との指摘も出ている。

8月 042005
 

自分が中学生の頃を振り返って思うことがある.それは,歴史の授業で,なぜ近代史をまともに教えてくれなかったのか,ということだ.当時は別に何も思わなかった.試験が迫ってきてから,試験範囲の内容を頭に詰め込むだけだったから.結果としての点数以外,自分の生活とはあまり関係ないと思っていたから.

しかし,賢者は歴史から学ぶと言われるとおり,過去を知らなければ未来の展望も開けない.私も大学生になってから,ようやく,

H.G.ウェルズ,世界史概観,岩波書店

などを読むようになった.そして,政治や経済にも興味を持つようになり,知識を得るために様々な本を読むようになって,自分がいかに現代史を知らないかを痛感した.

義務教育で歴史を勉強したはずなのに,なぜ最近(例えば昭和以降)の出来事すら知らないのか.

自分の勉強不足を棚に上げて言うのもどうかとは思うが,実際,中学の歴史では近代史は教えてもらわなかった.ネアンデルタール人がどこで見付かったとか,ハムラビ法典は何だとか,そういう遙か昔の遠い世界での話は覚えるようにと言われたが,この100年間ぐらいの日本と世界の関係なんていう話はほとんど聞かなかった.3学期が終わりそうな頃に,駆け足で終わってしまったような記憶がある.日本国中どこでも同じような状況なのかどうかは知らないが,明らかに教える優先順位を間違えているように思える.

最近,再び,扶桑社の歴史教科書を採択するかどうかを巡る教育委員会や各国政府などの対応がニュースで頻繁に取り上げられている.様々な立場の人が様々な意見を主張するのは当然で,あるべき姿だと思うが,一市民として,事実に基づいて,きちんと冷静に判断する必要がある.感情剥き出しの言い争いは醜いもので,見るに堪えない.頭も悪そうに見える.2001年08月12日の独り言「新しい歴史教科書についての感想」にも書いたように,まずは自分で読んでみないことには,その内容に賛成も反対もできない.比較しようとするなら,その他の教科書も読んでみなければならない.これは現実にはなかなか難しい.

そのような状況下で,あるメールマガジンの「歴史教科書読み比べ: 韓国に関する記述を読み比べると、歴史教科書の違いが見えてくる。」という記事を読んだ.その中に,次のような記述があった.

学習指導要領には「国家・社会及び文化の発展や人々の生活の生活の向上に尽くした歴史上の人物と現在に伝わる文化遺産を、その時代や地域との関係において理解させ、尊重する態度を育てる」とある。

まず近世近代で国民によく知られた著名な人物を紹介している教科書を挙げると(単に名前を挙げるだけで人物紹介になっていない教科書を除く):

二宮尊徳:  扶桑のみ
明治天皇:  扶桑のみ[a]
東郷平八郎: 扶桑のみ[b]
渋沢栄一:  扶桑のみ[c]
昭和天皇:  扶桑のみ[d]

次に、他の教科書では一般国民があまり聞いたこともないような朝鮮人が紹介されている例が目立つ。(東書:東京書籍、大書:大阪書籍、教出:教育出版、日書:日本書籍新社、日文:日本文教出版)

李舜臣(秀吉の朝鮮出兵の際の朝鮮の将軍):東書、日文
閔妃(日本の浪人に殺害された朝鮮王妃):日書
安重根(伊藤博文を暗殺した朝鮮人): 帝国、日文
柳寛順(三・一独立運動で逮捕され、獄死した少女):帝国、日文

日本文教出版の教科書で学んだ中学生は、二宮尊徳、明治天皇、東郷平八郎、渋沢栄一、昭和天皇は知らないが、李舜臣、安重根、柳寛順は知っているということになる。

この他にも,教科書間での様々な違いについて書かれているが,扶桑社以外の教科書が,日本から見た近代史ではなく朝鮮半島から見た近代史になってしまっている様子がわかる.全部を読み比べたわけではないので,どの歴史教科書が選ばれるべきだなどという気は全くないが,扶桑社の歴史教科書に反対する人達は,今後の日本を担う若い日本人に対する近代史教育をどのように考えているのだろうか.史実と教科書の内容をふまえた具体的な主張になっているのだろうか.その点を疑問に思う.

ちなみに,ハムラビ法典は教えてもらっておいて良かった.知らなかったら,ルーヴル美術館で「おー,これがハムラビ法典か!でかいなぁ.」と感激できなかっただろうから...


【参考】

国際派日本人養成講座
歴史教科書読み比べ: 韓国に関する記述を読み比べると、歴史教科書の違いが見えてくる。

【ニュース】(朝日新聞,2005年07月13日)

扶桑社の歴史教科書が栃木県大田原市で採択されたことについて、韓国外交通商省報道官は13日、「侵略の歴史を美化する内容を含む教科書の採択に深い遺憾を表明し、失望感を禁じ得ない」との論評を出した。また「(日本の)父母や知識人、市民団体の努力で、他地域での採択を阻止するよう期待する」と述べた。

中国国営新華社通信も同日、「市町村の公立普通中学が初めて歴史を歪曲(わいきょく)した教科書を採用した」と報じた。さらに「日本政治は右傾化が著しく、右翼勢力の力が各地の教育委員会にも及んできている」と指摘した。