8月 042005
 

自分が中学生の頃を振り返って思うことがある.それは,歴史の授業で,なぜ近代史をまともに教えてくれなかったのか,ということだ.当時は別に何も思わなかった.試験が迫ってきてから,試験範囲の内容を頭に詰め込むだけだったから.結果としての点数以外,自分の生活とはあまり関係ないと思っていたから.

しかし,賢者は歴史から学ぶと言われるとおり,過去を知らなければ未来の展望も開けない.私も大学生になってから,ようやく,

H.G.ウェルズ,世界史概観,岩波書店

などを読むようになった.そして,政治や経済にも興味を持つようになり,知識を得るために様々な本を読むようになって,自分がいかに現代史を知らないかを痛感した.

義務教育で歴史を勉強したはずなのに,なぜ最近(例えば昭和以降)の出来事すら知らないのか.

自分の勉強不足を棚に上げて言うのもどうかとは思うが,実際,中学の歴史では近代史は教えてもらわなかった.ネアンデルタール人がどこで見付かったとか,ハムラビ法典は何だとか,そういう遙か昔の遠い世界での話は覚えるようにと言われたが,この100年間ぐらいの日本と世界の関係なんていう話はほとんど聞かなかった.3学期が終わりそうな頃に,駆け足で終わってしまったような記憶がある.日本国中どこでも同じような状況なのかどうかは知らないが,明らかに教える優先順位を間違えているように思える.

最近,再び,扶桑社の歴史教科書を採択するかどうかを巡る教育委員会や各国政府などの対応がニュースで頻繁に取り上げられている.様々な立場の人が様々な意見を主張するのは当然で,あるべき姿だと思うが,一市民として,事実に基づいて,きちんと冷静に判断する必要がある.感情剥き出しの言い争いは醜いもので,見るに堪えない.頭も悪そうに見える.2001年08月12日の独り言「新しい歴史教科書についての感想」にも書いたように,まずは自分で読んでみないことには,その内容に賛成も反対もできない.比較しようとするなら,その他の教科書も読んでみなければならない.これは現実にはなかなか難しい.

そのような状況下で,あるメールマガジンの「歴史教科書読み比べ: 韓国に関する記述を読み比べると、歴史教科書の違いが見えてくる。」という記事を読んだ.その中に,次のような記述があった.

学習指導要領には「国家・社会及び文化の発展や人々の生活の生活の向上に尽くした歴史上の人物と現在に伝わる文化遺産を、その時代や地域との関係において理解させ、尊重する態度を育てる」とある。

まず近世近代で国民によく知られた著名な人物を紹介している教科書を挙げると(単に名前を挙げるだけで人物紹介になっていない教科書を除く):

二宮尊徳:  扶桑のみ
明治天皇:  扶桑のみ[a]
東郷平八郎: 扶桑のみ[b]
渋沢栄一:  扶桑のみ[c]
昭和天皇:  扶桑のみ[d]

次に、他の教科書では一般国民があまり聞いたこともないような朝鮮人が紹介されている例が目立つ。(東書:東京書籍、大書:大阪書籍、教出:教育出版、日書:日本書籍新社、日文:日本文教出版)

李舜臣(秀吉の朝鮮出兵の際の朝鮮の将軍):東書、日文
閔妃(日本の浪人に殺害された朝鮮王妃):日書
安重根(伊藤博文を暗殺した朝鮮人): 帝国、日文
柳寛順(三・一独立運動で逮捕され、獄死した少女):帝国、日文

日本文教出版の教科書で学んだ中学生は、二宮尊徳、明治天皇、東郷平八郎、渋沢栄一、昭和天皇は知らないが、李舜臣、安重根、柳寛順は知っているということになる。

この他にも,教科書間での様々な違いについて書かれているが,扶桑社以外の教科書が,日本から見た近代史ではなく朝鮮半島から見た近代史になってしまっている様子がわかる.全部を読み比べたわけではないので,どの歴史教科書が選ばれるべきだなどという気は全くないが,扶桑社の歴史教科書に反対する人達は,今後の日本を担う若い日本人に対する近代史教育をどのように考えているのだろうか.史実と教科書の内容をふまえた具体的な主張になっているのだろうか.その点を疑問に思う.

ちなみに,ハムラビ法典は教えてもらっておいて良かった.知らなかったら,ルーヴル美術館で「おー,これがハムラビ法典か!でかいなぁ.」と感激できなかっただろうから...


【参考】

国際派日本人養成講座
歴史教科書読み比べ: 韓国に関する記述を読み比べると、歴史教科書の違いが見えてくる。

【ニュース】(朝日新聞,2005年07月13日)

扶桑社の歴史教科書が栃木県大田原市で採択されたことについて、韓国外交通商省報道官は13日、「侵略の歴史を美化する内容を含む教科書の採択に深い遺憾を表明し、失望感を禁じ得ない」との論評を出した。また「(日本の)父母や知識人、市民団体の努力で、他地域での採択を阻止するよう期待する」と述べた。

中国国営新華社通信も同日、「市町村の公立普通中学が初めて歴史を歪曲(わいきょく)した教科書を採用した」と報じた。さらに「日本政治は右傾化が著しく、右翼勢力の力が各地の教育委員会にも及んできている」と指摘した。

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