10月 272006
 

奈良先端科学技術大学院大学(NAIST)での特別講演

本日午後,奈良先端科学技術大学院大学(NAIST)に行ってきました.この大学は学部を持たず,大学院での研究と教育に専念するという,ちょっと変わった大学です.ウェブサイトを見ると,この大学の目的は次のようになっています.

学部を置かない国立の大学院大学として,最先端の研究を推進するとともに,その成果に基づく高度な教育により人材を養成し,もって科学技術の進歩と社会の発展に寄与することを目的としています。

今回で(恐らく)二度目の訪問ですが,今回は,研究室の後輩でもあるN先生からの依頼で,情報科学研究科の講義の一部として特別講演をしました.この講義(ゼミナール?)は,学外の講師を次々に招聘し,多種多様な分野のトピックスを話してもらうという趣旨だそうです.当然,毎回バラバラの内容となるわけですが,見聞を広めるという観点から,学生にとって有意義だと思います.

自分のやっている研究内容を話せばいいということでしたので,次のような話をしてきました.

『統計的アプローチによる品質実現力の強化 〜産学連携の現場から〜』

近年,製品ライフサイクルが短くなり,顧客の製品品質に対する要求が厳しくなるなか,いかに短期間で製品品質や歩留りを改善するかが,様々な産業において重要な課題となっている.これまで多くの場合に,運転員の経験や勘に依存して問題解決を図ってきたが,製造プロセスに最大限の性能を発揮させるためには,より合理的な手法が必要である.そこで注目されているのが統計的アプローチである.これまでにも相関解析などのデータ解析手法は現場で利用されてきたが,近年,高性能なデータベースや新しい統計的手法が比較的容易に利用できるようになり,統計的アプローチの産業プロセスへの適用が急速に進んでいる.

本講演では,品質実現力・生産技術力の強化に役立つ代表的なデータ解析手法を簡単に説明したのち,1)異常検出・異常診断を実現するための多変量統計的プロセス管理,2)オンライン測定できない製品品質を推定するためのソフトセンサー,3)製品品質と操業条件を結び付ける統計的モデルを核とする品質改善技術について,その基本概念と産業応用事例を述べる.また,石油化学,鉄鋼,半導体など数多くの企業とこれまでに取り組んできた産学共同研究の経験から,学界および産業界双方の課題について私見を述べる.

聞いてくれるのが大学院の学生で,そのバックグラウンド(知識)は千差万別ということだったので,できるだけ誰にでも理解できるように,かつ講演から何か得るものがあるようにと考え,大学人としては例外的に積極的に取り組んでいる,企業との共同研究の経験を多く交えることにしました.もちろん,数式なんて全くなしです.数学を使いまくる研究をしている研究者が,数式を全く使わずに研究内容を説明する.これが私のスタイルであり,それができないのは理解不足かプレゼン能力の欠如だと考えています.

大学での研究

大学で研究をしていると,研究のための研究みたいな,社会貢献なんて全く眼中にないような研究に溺れ,それで自己満足してしまう可能性は大いにあります.もちろん,基礎研究の重要性は否定しません.ここで否定しているのは,非基礎&非応用の研究です.

よく,これは基礎研究,あれは応用研究,とか言いますが,基礎とか応用って何でしょうか.ある分野の基盤となる理論や技術に関わる研究は基礎研究でしょうし,その成果の実社会での応用に取り組む研究は応用研究でしょう.そうすると,基礎でも応用でもない研究が存在しうることに気付きます.それが非基礎&非応用の研究です.将来の基盤になりうるような本質的な研究ではなく,かと言って実社会に役立つ見込みもない.そんな研究だけはしないというのを信条にしています.これは,学生時代に恩師から叩き込まれたものです.

今回の講演では,そんなことも話してきました.そういう考えのもと,自分の研究を社会に役立てるために,共同研究を通した研究成果の産業応用に積極的に取り組んでいること,研究室に閉じ籠もらないがゆえに見えてくる新たな研究課題,逆に,そのために直面することになる様々な困難.日本の科学技術を担う学生達に,何かメッセージとして残れば,講演は大成功だったと思います.

90分間の講義で,75分ほど講演をし,15分ほどが質疑応答に割り当てられましたが,たくさん質問をしてもらいました.何回も質問してくれる学生もいましたし,講義終了後に個別に質問に来てくれた学生もたくさんいました.NAISTの学生は結構積極的という印象です.良好な研究環境の影響でしょうか.

ドライビング・シミュレータ

講演終了後,研究設備見学ということで,ドライビング・シミュレータを経験させてもらいました.ゲームセンターにあるレーシングゲーム機のようなものですが,ドライバーにアイカメラを装着させ,人の飛び出しや濃霧など様々なイベントを仕掛けて,自動車の運転中にドライバーがどのような行動をするのか,安全性を高めるためには,どのような仕組みが必要なのかを研究しているとのことでした.高速道路と市街地の運転をさせてもらいましたが,4回ぐらい事故を起こしました...

乗車中から車酔い状態で,帰宅後まで引き摺りました.結構,過酷な研究ですね.ともかく,準備していただいた学生の皆さん,ありがとうございました.

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