11月 292006
 

危うしモノづくり日本 「私のしごと館」廃止の可能性」という記事を見掛けた.

副館長によると,「直接の管理にあたる厚生労働省からはAランクの評価を得ている。なぜ廃止なのか分からない」とのことらしい.何をとぼけているのか不明だが,総務省の政策評価・独立行政法人評価委員会から廃止という言葉が出てくる理由は明確だ.この施設を維持するために,年間約18億円の雇用保険が使われているのだから.「廃止ともなれば“モノづくり日本”の原点を捨て去ることになる」と副館長は仰っているが,そもそも,こんな豪華設備を辺鄙なところに建設した企画からして間違っていたのだろう.まさにバブル期の遺物だ.それに,別に「モノづくり」と「私のしごと館」に大した関係なんてないだろう.

ちなみに,私は現場に行かずに妄想で廃止やむなしと言っているのではない.2005年5月に,「私のしごと館に行ってきました」に書いたとおり,実際に「私のしごと館」に行ってみた.その設備の豪華さには,厚生労働省のAランク評価もうなづける.というか,グリーンピアも含めて,厚生労働省はろくなものを作らないな.一体どうなっているんだ.「私のしごと館」がAランク評価なのだから,BランクやCランクは一体どんな状態なのだろうか.

「私のしごと館」の趣旨が悪いわけではない.典型的なハコモノ行政であること(建設費等約580億円)と,その運営方法が問題なのだ.ウェブサイト(ホームページ)の維持に年間4000万円とか,職員の平均年収が915万円とか,年間約18億円の負担を雇用保険に強いていることに対する危機意識というものが全くない.なお,子供の職業意識を刺激する施設としては,「キッザニア東京」がある.どんな施設かは知らないが,こちらの経営状態は良好なのだそうだ.

昔書いた文章を再掲しておこう.2005年4月に,「私のしごと館@京都」と題して,次のようなことを書いた.

「私のしごと館」という豪華施設が京都にある.ところが,京都府民でさえも,そのことを知らない人が多いのではないだろうか.私も最近知ったばかりで,まだ訪れたことはない.独立行政法人である雇用・能力開発機構が建設した「私のしごと館」は,宇宙飛行士も含む,約40種の職業が疑似体験できるコーナーが売りらしい.厚労省育成支援課は「職業に関する様々な情報が1か所で得られるのは全国でここだけ」と,その存在意義を主張している.

この「私のしごと館」に関するニュースを見掛けた.それによると,土地代を含めて建設に要した費用が約580億円,人件費6億円超を含む年間維持費が約21億円にもなる「私のしごと館」の収入は,年間わずか1億円余りだという.収入の約20倍にもなる赤字を垂れ流しているわけだ.ちなみに,職員の平均年収は915万円だ.施設のみならず,こちらもゴージャスだ.

公共施設は黒字でなければならないなどと馬鹿げたことを言うつもりはない.しかし,我々が支払っている雇用保険のうち約20億円が毎年消え失せているわけだ.この1つの施設を維持するだけのために.果たして,それだけの価値があるのだろうか.

11月 282006
 

1ドル硬貨

ニュース(下記参照)によると,1ドル紙幣に代えて1ドル硬貨を流通させようと,米政府が計画しているらしい.紙幣より硬貨の方が耐久年数が長いので,経費を削減できるというのがその理由だ.ニュースでは,その計画に対して,国民の多くが反対していると報じている.反対理由は「重い」から.

なかなかお目にかからないが,今でも1ドル硬貨がないわけではない.実は,私も1ドル硬貨を自宅に保管している.どこかで釣り銭としてもらったのだが,手にした瞬間は「なんじゃこりゃ〜?」って感じだった.1ドル硬貨を手にする機会があるなんて微塵も思っていなかったし,異様に大きくて重たかったからだ.みんなが反対する理由もよくわかる.

ポケットに1ドル札を束にして突っ込んでブラブラと歩くのが普通なのに,1ドル硬貨が数枚もあれば,重たくて仕方ないだろう.

25セント硬貨(ステーツ・クオーター)

アメリカの硬貨と言えば,州毎にデザインが異なる25セント硬貨(ステーツ・クオーター)を収集している.最初のステーツ・クオーターが出た後に,アメリカに住むことになり,スーパーマーケット(Kマート,ターゲット,ウォルマート等)などでコレクター用のボードをよく見掛けたので,記念に集めてみようと思ったわけだ.クオーター(25セント硬貨)を使用する(お釣りにもらう)機会は多いので,結構集められる.

ステーツ・クオーターの収集用ボード

ステーツ・クオーターは約10年をかけて,全州のデザインのものが流通する.これまでに2/3ぐらいが出回っているはずだ.アメリカから日本に戻った後も収集を続けているのだが,年に1〜2回のアメリカ訪問時に集めるしかない.しかし,大抵は学会会場に缶詰になるだけで,ほとんどの支払いはクレジットカードのため,普通に過ごしていると,ステーツ・クオーターは手に入らない.

収集の奥の手が,両替機だ.5ドル紙幣や10ドル紙幣を突っ込み,クオーターに両替する.まるでラスベガスのスロットマシーンで大当りしたときのように,カシャンカシャンと音を立てながら,クオーターが次々と出てくる.その中から,未入手のステーツ・クオーターを探すわけだ.当然ながら,ステーツ・クオーターの割合は大きくなく,しかも入手済みのものも多い.未入手のステーツ・クオーターを手に入れるのは,なかなか骨の折れる仕事だ.外れクオーターは財布にしまうしかないが,途方もなく嵩張るし,重い.早く使ってしまいたいので,ドラッグストアやスターバックスのレジでジャラジャラと撒き散らして,小銭で支払うことになる.

先日のサンフランシスコ滞在では,合計6枚のステーツ・クオーターを手に入れた.上上の成果だ.実は,最終日までに1枚しか手に入れることができず,完全に諦めていたのだが,BART(サンフランシスコの鉄道システム)のPowell駅からサンフランシスコ国際空港駅までの切符を購入する際に,10ドル札で5.15ドルのチケットを購入したところ,お釣りが小銭で出てきたのだ.その中に,多くのステーツ・クオーターが含まれていた.「ラッキー!」と喜ぶ反面,帰国直前にクオーターを大量に持つと使うところもなくて困る.結局,日本にまで持ち帰ってきた.

ラスベガスの想い出

「ラスベガスのスロットマシーンで大当りしたときのように」と書いたが,アメリカに住んでいた頃,クリスマスシーズン直前のオフシーズンを狙って,ラスベガスを訪れた.一般に,ホテル料金はシーズンによって激しく変化するため,オフシーズンを狙うと,ゴージャスホテルに格安で泊まることができる.そのときは,モンテカルロ(MONTE CARLO)ホテルのジュニアスイートが1泊100ドル程度だった.リビングルームやベッドルームの他,バスルームも2つあり,彼女と2人で大いに楽しんだ記憶がある.ラスベガス以外だと,オフシーズン狙いで,シャトー・レイクルイーズ(The Fairmont Chateau Lake Louise)やジャスパー・パークロッジ(The Fairmont Jasper Park Lodge)にも宿泊した.どちらも1泊200ドル以上.いずれも超有名な高級リゾートなので説明する必要もないだろう.

さて,そのラスベガスでは,当然のようにスロットマシンで遊んだわけだが,数百倍(ぐらいだったかな?)の大当りが出た.カシャンカシャンと音を立てながらコインが出てくるのだが,なかなか止まらない.ただ,大当りと言っても,小銭で雰囲気を楽しんでいるだけなので,金額的には全くたいしたことはない.彼女と二人でベラッジオ(BELLAGIO)でディナーを食べるぐらいの利益だった.

【ワシントン=バーバラ・ヘーゲンボー】1ドル紙幣に代えて硬貨を流通させようとする米政府の計画に反対の声が出ている。間違えやすく重いためで、通貨当局は十分に流通せず収集家を喜ばすだけに終わった過去の苦い経験を生かし、広報に躍起だ。新硬貨はジョージ・ワシントン初代大統領をデザインした金色のものが第1弾として2007年2月15日に発行される。毎年、デザインを各州のものに変更して人気を得た25セント硬貨(ステーツ・クオーター)のように、すでに亡くなった歴代大統領を1年ごとに順次デザインに取り入れていく。

 しかし、米国では70年前に銀の平和硬貨が発行されて以来、1ドル硬貨が流通したためしがない。その理由は25セント硬貨と間違われる、重いなどだ。造幣局は耐用年数が30年と紙幣の16倍も長い硬貨に換えることで経費が節約できると主張する。連邦準備制度理事会(FRB)は1995年に、年間5億ドル(約575億円)の経費節減になると試算した。その後、ドル紙幣の流通量は40%増えているため現在の経費節減効果はさらに大きい。10月に行ったUSA TODAYとギャラップの共同調査で回答者の半数以上が「大統領硬貨の発行には賛成」としたものの、「紙幣を硬貨に換える」ことには79%が反対した。ネブラスカ州に住むエレン・バーローさん(74)は「紙幣の方が持ちやすい。5ドル分を硬貨で持ったら重くて大変」と紙幣の廃止に反対している。

11月 252006
 

幼稚園の作品展

3歳になる長男が来年4月から通う予定の幼稚園で,園児の作品展をするというので家族で観に行ってきた.

自転車をキコキコとこぎながら幼稚園に着くと,既に結構多くの人が来ているようで,幼稚園内は大変賑やか.入口で,お菓子とお茶のチケットをもらい,中へ入ると,園庭に巨大なオブジェが.どうやら奈良方面に全員で出掛けたらしく,大仏殿とか春日大社とかの作品名が書いてある.それぞれの作品は本当に巨大で,乗り物(バス)なんかも大人が十分に出入りできるほど.これには驚いた.

室内には,絵画や工作物などの作品がクラス毎に展示されている.作品のテーマは園児が自分で考えたもので,それぞれの作品には名前が書かれていた.カブトムシとか,レーシングカーとか,鹿(奈良に行ったからだろう)とか,色々だ.長男も興味津々で,「これ何?これ何?」と次々と指を差す.中には,「お母さんとテレビを見ていたら宇宙人がやってきて,ほうきで叩いたの」(ちょっと違っているかも)なんていうのもあった.とても面白い.

園児のお母さん達は,我が子が描いたり作ったりした作品の写真を撮るのに大忙し.色々なクラスの作品を見学しながら,お菓子とお茶をサービスしてもらえる遊戯室に向かうと,部屋に少し入ったところに,長男の描いた「電車」があった.緑色の2本の線路の上を,真っ赤な電車が走っている.彼女も写真撮影に大忙しだ.「そこに立って〜!こっち向いて〜!!」

幼稚園の選択基準

この幼稚園を選んだ理由の1つが,上記のような芸術活動への取り組みにある.園児に何かテーマを与えるわけではないし,ああしろこうしろと指示をするわけでもない.色々な材料を使えるように環境を整えて,好きなように好きなものを作らせる.他に,スポーツをする機会もある(パープルサンガの選手がサッカーを教えてくれるらしい)が,園児に何かをさせよう,芸を教え込もうという悲壮感がないのが良い.幼稚園児はマイペースでのんびりと過ごせば良い.

もちろん,詰め込み教育をさせるなんてこともない.今の世の中,子供を日光サル軍団のサルみたいに思っている大人が多いようで,やたらと芸を仕込みたがる親や先生が多くて,気が滅入る.そんなくだらないことは,もっと大きくなってからで良い.

幼稚園を選択する際の規準としては,上記のようなことも考慮したのだが,最大の理由は,保育士と園児みんなの笑顔での挨拶だ.みんな,きちんと挨拶をしてくれる.これは本当に素晴らしいことだ.

11月 252006
 

図解 フィンランド・メソッド入門
北川達夫,経済界,2005

フィンランドの国語教科書で採用されている方法や,教育現場で用いられている方法を,発想力,論理力,表現力,批判的思考力,コミュニケーション力の5つの力を身に付けるための方法として整理し,フィンランド・メソッドとして紹介している.例えば,以下のような方法だ.これが全てではない.

発想力: マインド・マネージャ(シンキング・マップ)を利用する.

論理力: あらゆる意見や感想に対して,「どうして?」と質問する.

表現力: 多くの単語をすべて使用して一番短い文章を作る.

批判的思考力: 他者の作文の良い点と悪い点を十個ずつ挙げる.それを元に何回も書き直す.

コミュニケーション力: 相手の立場に立って考える.本心と本心ではない意見の2通りで論理構成する.

紹介されている方法は非常に理に叶っており,その一部または全部を日常的に活用しているという人も少なくないだろう.私の所属する研究室の場合だと,学生に対する「どうして?」攻撃は凄まじいし,レポートの書き直しも徹底している.その結果として,論理力,表現力,批判的思考力などが鍛えられていることは確かだろう.

ただ,日本の初等・中等教育の場では,こういう方法が活用されているようには思われない.学校でないと利用できないような方法ではなく,家庭でも実践できる内容なので,興味を持った人は気軽に試してみたら良い.

本書は非常に薄い本で,あっという間に読めるし,具体的な例を挙げてフィンランド・メソッドを紹介しているので,理解しやすい.PISAとは何だとか,学力とは何かとか,フィンランドの文化がどうとか,そんな小難しい話はどうでもよくて,結局どうしたらいいのかという問いに対する答えを求めているなら,とにかく本書を一度読んでみたら良いと思う.

11月 252006
 

カウンセラー良子さんの幼い子のくらしとこころQ&A
内田良子,ジャパンマシニスト,2005

指しゃぶりをする,野菜が嫌い,片付けをしない,人見知りする,奇声を発するなど,子育てをしている中で多くの親が遭遇するであろう悩みを取り上げて,「どうしたらいいのでしょう?」という質問に,優しい口調で答えてくれている.多くの答えは,「大丈夫.何も心配することはありませんよ.」というものだ.要するに,昨今の親は心配性だということだ.読みやすい本だし,これを読んで気が楽になる人も多いのではないだろうか.

子育て中の親に向けての著者からのメッセージが強く現れているのが,本書の後書きだと思う.以下に引用させてもらおう.

どの子も,きっと親から「あなたがいちばんすてきよ.大丈夫」と,言葉にしていってもらいたいのだろうと思います.

しかし,高学歴社会になり,専門的な情報が育児雑誌やインターネットを通じて自由に手に入るようになった今日,大人たちは専門知識という色眼鏡をかけて,こどもたちを見るようになりました.「はえば立て,立てば歩めの親心」と,わが子の日々の成長をいとおしむ親ならではの喜びを,手放してしまう人たちが出てきました.

こどもたちの発達に標準を示すものさしが提示されると,なにごともできてあたりまえ,できなければ障害や発達の遅れがないかと不安にさせられる親が増えました.標準より遅いと「やっと歩けるようになった」「やっとしゃべれるようになった」と,控えめに小さくしか喜べなくなっています.幼い子にとって,きのうまでできなかったことが今日できるようになったことは,新しい世界を手に入れたのと同じくらいうれしいことなのです.でも,親は次々にやってくる発達指標のハードル越えに緊張を強いられ,こどもの成長のいまを心から喜びとする感動が希薄になってしまいがちです.なんともったいないことでしょう.

いま親に求められるのは,あちこちで流布される専門情報を拾い集めて不安になることではなく,目の前にいるわが子をしっかり見ることです.

11月 202006
 

アメリカでの最後の買い物は靴

長かったAIChE Annual Meetingもすべて終了し,いよいよ帰国だ.その前に,最後の買い物を済ませておく.実は,履いてきたスニーカーと革靴がどちらもボロボロなので,アメリカで買い直すことにした.サンフランシスコのダウンタウン中心部にいるため,店はいくらでもある.でも,高級品を買うつもりはないので,”DSW shoes“と”PaylessShoeSource“を覗きに行く.色々と試着した末に,PaylessShoeSourceでスニーカーを1足,DSW shoesで革靴を1足購入した.スニーカーは30ドルほど,革靴は100ドルほどだった.履いてきた靴は,どちらもホテルに置き去りにする.

不便な関西国際空港

帰国便は,サンフランシスコ国際空港(SFO)12:00発のJAL002便成田行きだ.現在,エールフランス航空(Air France)とKLMオランダ航空による共同フリークエント・フライヤー・プログラムであるフライング・ブルー(Flying Blue)のゴールド会員であるため,スカイチーム(SkyTeam)の航空会社が利用できるなら,それで良かったのだが,関空からアメリカ西海岸に行くのは途方もなく不便だ.

ノースウェスト航空(Northwest)ならデトロイトまで行くしかないが,サンフランシスコへ行くのに,ほとんど東海岸まで行くのは馬鹿らしい.他には,大韓航空(Korean Air)でインチョン経由というのがあるが,わざわざ後戻りして韓国系を使うのもどうかと思われる.やはり,スカイチーム(SkyTeam)に日系航空会社が加盟していないのは辛い.日本航空(JAL)にはワンワールドではなく,スカイチームを選択して欲しかった.

結局,今回はJALを利用して,成田空港経由で,大阪伊丹空港とサンフランシスコを往復することにした.一応,エールフランスとJALは提携関係にあるため,フライング・ブルーでマイルを貯めることはできる.

全日空かユナイテッド(United)を使えよと言われそうだが,色々と事情もある.

成田→伊丹→京都

成田から伊丹へのJAL便は若干席に余裕があり,私の隣は空席だった.さらにその横の窓側の座席には女性客が座っていた.伊丹空港到着後,スーツケースを受け取り,MKシャトルの集合場所に向かう.大きな荷物を抱えて,モノレール,阪急,市バス(関西国際空港からならJRと市バス)を乗り継ぐのは面倒なので,空港から自宅まではMKシャトルを利用することが多い.シャトルは乗り合いで,しかも私は最後に降ろされることが多いため,結構時間がかかるのだが,それでも,自宅まで連れ帰ってもらえるのは楽だ.

空港の待合室でしばらく待った後で,MKシャトルの担当ドライバーから名前を呼ばれる.どうやら満員のようだ.と思ったら,成田から伊丹へのJAL便で窓際に座っていた女性の姿がある.京都まで一緒らしい.ゴロゴロとスーツケースを引き摺りながらシャトルに向かう最中,「雨止んでますね」と声を掛けてきてくれた.3泊5日でニューヨークへ行っていたそうだ.一人旅だが,留学を希望しているので,ニューヨークの大学も見てきたらしい.米国オハイオ州に住んでいたことがあるという話をして,「留学がうまくいくといいね」と励まし,シャトルに乗り込む.

心底,留学は羨ましい.大学生の頃にボケーッとしてないで,もっと将来のことを考えていればなぁと,つくづく思う.この雑文を読んでくれている大学生がいれば,今がチャンスだと言ってあげたい.

11月 172006
 

AIChE Annual Meeting

AIChE(米国化学工学会)が主催するAIChE Annual Meetingが,2006年11月12日〜17日にサンフランシスコの”San Francisco Hilton”を会場として開催された.

この会議は非常に大規模で,5〜7つの論文発表で構成されるセッションの総数が695,同時並行で行われるパラレルセッション数は約50にもなる.仮に無欠勤で会議に参加したとしても,1/50程の発表しか聞けないことになる.まあ,様々な分野からの論文が集まるので,もし可能だとしても,全部を聞こうとは思わないのだが...

ちなみに,AIChE Annual Meetingは,研究速報的な位置付けの会議だ.開催半年前にアブストラクトを提出し,それでレビューとセレクションが行われる.アブストラクトはせいぜい数百Wordsだから,詳細は不明で,判断はsession chair(座長)に一任される.このため,他の国際会議との比較で言うと,論文の質にはバラツキが当然出てくるが,逆に,新しい成果やアイディアが発表されるとも言えるだろう.この会議には,ほぼ毎年参加している.

自身の研究内容および興味の関係で,私が主に参加したのは,Computing and Systems Technology (CAST) Divisionが主催または共催しているセッションになる.今回も色々と情報を得ることができたので,簡単にメモしておこう.

Symposium Honoring CACHE Award Recepients

化学工学技術者なら知らないわけがないテキスト”Conceptual Design of Chemical Process”の著者であるJames M. Douglasが受賞講演.実物を見るのは初めてなので,この爺さんがダグラスかと感慨深い.当然ながら,超有名人のスピーチを聴こうと,大御所を含めて,聴衆の数は多かった.講演題目は”How Conceptual Design of Chemical Processes Can Be a Computer Aid”だった.

Product and Process Design

最近,”Product Design”(製品設計)が重要なキーワードになっている.旧来の化学工学が「どうやって作るか」を突き詰めようとしていたのに対し,これからは「何を作るか」が大事だということだ.もちろん,実際に工業生産に持ち込むためには,「何をどうやって作るか」という問題を解かなければならない.このため,プロダクト設計とプロセス設計を統合しましょうという話になる.自然な流れだ.

プロセス設計というと,私なら装置設計をイメージするが,この分野の人達が検討しているのは,プロセスの運転条件だ.つまり,「何をどのような条件で作るか」が問題となっている.プロダクト設計は基本的に分子設計の問題であるが,Group Contribution Method(グループ寄与法)を利用した発表が多く,これが主流のようだ.関連する論文のうち1つ”Process and Molecular Design: a Simultaneous Approach”は,CAST Plenary Sessionでの発表だった.

これと似た方向性の研究で,分子シミュレーションとプロセスシミュレーションを結び付けるという研究も行われている.これはMultiscale Modeling and Simulationという分野の研究になるが,分子シミュレーションの他に,CFD(数値流体力学)シミュレーションとプロセスシミュレーションを結び付ける取り組みもなされている.目指すのは,マクロとミクロの統合による,次世代のプラットフォーム構築と言えるだろう.

Unmeasured Disturbance Estimation

プロセス制御においては,プロセスモデルを正確に同定することと,そのモデルに基づいてプロセスの状態を正確に推定することが重要である.昔から取り組まれている研究テーマではあるが,次々と新しい研究成果が生まれている分野でもある.

モデル予測制御のためのプラントテストデータ(ステップ応答データ)から非観測外乱を推定し,その影響がある部分を排除することで,モデルの精度を向上させるという発表をRiggsがしていた.

昨今の理論面での発展により,線形/非線形モデル予測制御にも状態推定を利用するのが普通となっている.RawlingsのグループがReceding Horizon Estimationの研究を精力的に進めているが,今回は,同定用信号を加えない運転データからノイズの共分散と外乱の構造を推定する方法につての発表があった.モデルは線形だ.

実用性という観点から,Receding Horizon Estimationの欠点は計算負荷の高さとされる.状態推定を迅速に行う方法として,ベイズ理論の利用をBakshiのグループが提案している.

状態推定にカルマンフィルタを用いる場合,システムに定常なホワイトノイズが印加されることが仮定されるが,現実のプロセスでは,そのような仮定が成り立たないことも多い.そこで,隠れマルコフモデルを利用した外乱推定の方法をLeeが発表していた.

Design and Synthesis of Sensor Systems

センサーをどこに配置するのが最適かという問題を扱う研究分野だ.”sensor system”の代わりに,”sensor network”や”sensor location”という言葉を使うことも多い.昔からある研究分野ではあるが,新しい方法の開発が継続的に行われている.

センサー配置問題を定式化する際には,評価指標として可観測性(observability)を用いるのが普通である.対象プロセスのモデルが線形である場合には,可観測性グラム行列(observability gramian)を求めて,その最小固有値や固有値の総和などを評価指標に用いればよいが,非線形モデルを扱う場合には,この方法は使えない.そこで,最近,経験的可観測性グラム行列(empirical observability gramian)なるものがHahnのグループから提案されている.今回は,経験的可観測性グラム行列の利用に加えて,主成分分析(PCA)で共分散を考慮することによって,より適切なセンサー配置の解を得る方法についての発表があった.

また,Chmielewskiのグループは,制御性能を評価指標とした,センサーとアクチュエータの配置問題を取り扱っている.ここでは,制御性能を状態と入力それぞれの共分散で抑えにいこうとしている.

Process Analytical Technology (PAT)

製薬関係の人には,最近注目されている言葉としてお馴染みだろう.今回のAIChE Annual Meetingでは,PAT関連セッションが複数あった.PLSよりも高性能な回帰分析手法,ラマン分光の検量線作成時にプロセス情報(温度や密度など)も利用する方法などが発表されていた.

“Modeling for PAT”というセッションでは,FDA(Food and Drug Administration; アメリカ食品医薬品局)からの発表もあった.FDAが出す方針は全世界に影響を与えるが,ICH Q8(製剤開発),Q9(リスクマネジメント),Q10(品質システム)が出される中,QbD(Quality by Design)の実現に向けてPATが重要だということになっているようだ.FDAからの講演では,PATを利用したプロセス制御の重要性が強調されていた.これは化学工学(プロセスシステム工学)分野の研究者や技術者が得意としている分野であり,大いに貢献できるだろう.実際,ファイザーを初め大手製薬会社は化学工学を専攻した学生の採用を増やしているということだった.FDAにも化学工学出身者は少なくないそうだ.

Uncertainty

プロセス制御,プロセス設計,スケジューリング,サプライチェーン...何をするにしても,不確定性を考慮しなければ実用的な答えは得られない.というわけで,不確定性の考慮(under uncertainty)をキーワードとしたセッションが複数あった.

おしまい

とても全てを網羅することはできないし,する気もないので,ここまでにしておく.色々と研究のヒントは得たので,うまく活かしていきたい.共同研究の成果にも結びつくだろう.

11月 172006
 

11月も後半に入り,サンフランシスコの街はクリスマスモードに突入している.Macy’sなどもクリスマス商戦モードで,赤と緑のクリスマスカラーに染まっている.

サンフランシスコ中心部のユニオンスクエアでは,巨大なクリスマスツリーに電飾を施す作業が始まった.まだ上側だけだが,ユニオンスクエアに面した”Saks Fifth Avenue”の電飾と共に,クリスマスムードを盛り上げている.観光客もあちこちから写真撮影していた.

金曜日で5日間にわたる長い学会も終了し,いよいよ帰国だ.

巨大クリスマスツリーとSaks Fifth Avenue@サンフランシスコ
ユニオンスクエアのクリスマスツリー

11月 162006
 

サンフランシスコ滞在も6日目.朝から晩まで学会に参加して,難しい話を英語で聞いていると,疲れる.しかも,時差呆けで睡眠時間が極端に短くなっているので,なおさらだ.

最初に食べた“Sears’ World Famous 18 Swedish Pancakes”がシンプルながらも美味しく,次に食べた苺ジャム付きの”Our World Famous French Toast”も大好きな味だったので,再び,”Sears Fine Food“に朝食に出掛けてきた.

既に”Sears Fine Food“の店内は一杯で,少しだが行列ができていた.1人なのでカウンター席に座り,「いちご満載ワッフル」とコーヒー(おかわり自由)を注文した.これでもかというほど苺とホイップクリームが載っている.それに,メープルシロップをたっぷりとかけて,いただく.これも非常に美味しい.焼きたてのワッフルにホイップクリームの甘さと苺の爽やかさが絶妙だ.ただ,薄味好きと言われる京都人の中でも薄味好きで,いつも甘さも控えめにしている私には,このホイップクリームを全部食べることはできなかった.さすがアメリカ.食事の量とスイーツの甘さは半端じゃない.

でも美味しいので,サンフランシスコに来たら,是非どうぞ.

Sears Fine Foodのいちごとホイップクリーム満載ワッフル@サンフランシスコ
いちご満載のワッフル

<メニュー>
Waffles Strawberry Waffle Topped with Fresh Strawberries & Whipped Cream …… 8.25

11月 162006
 

今回のサンフランシスコ滞在では,”King George Hotel“を利用している.このホテルについてメモしておこう.

まずは,ロケーションについて.サンフランシスコのダウンタウンの中心であるユニオンスクエアから1ブロックと,非常に便利なところにある.もちろん,ケーブルカーの発着所にも近い.観光でも食事でも,何をするにも便利だ.

King George Hotel @ San Francisco
King George Hotelの外観

部屋は狭くもなく,広くもなく,まあ普通だろう.デスクやテーブルはあるし,スーツケースを広げるスペースもある.立地と価格を考えれば,十分な広さだ.設備は簡素だが,最低限のものは揃っており,清潔感はあるので,問題ない.

部屋には有線LANがあり,無料でインターネット接続ができる.ただ,宿泊初日は繋がらなかった.部屋に置いてある機械にサポート電話番号(フリーダイヤル)が書いてあるので,そこに電話して,10分以上格闘したのだが,結局使えなかった.対応してくれたお兄さんは丁寧に説明してくれたのだが,英語版Windowsと日本語版Windowsでは言語が違うので,何かと手間取った.これでもかというほど設定を調べて,結局,「サーバーが悪いのかもしれない」ということになり,接続を諦めざるを得ない状況になった.この日は他の宿泊客も繋がらなかったようで,みんな,ノートパソコンを手にロビーに降りてきて,無料の無線LANに接続していた.二日目以降は問題なく接続できた.

さて,肝心の宿泊費だが,朝食はついていなくて,1泊110ドル程度.もちろん,価格は宿泊する時期によっても変わるが,サンフランシスコのど真ん中という立地を考えると,安いと思う.治安の面でも全く問題ない.ちなみに,有料だが,朝食,アフタヌーンティー,ハッピーアワーも用意されている.

このホテルの特徴と言えるかどうか不明だが,フロントは親切で,明るく,テキパキと動いてくれる.今回は,禁煙ルームをリクエストするのが遅かったため,最初(週末)は喫煙フロアに送り込まれたのだが,月曜日からは禁煙ルームに変更してもらった.

ゴージャスな滞在を求める人には向かないが,安くてそれなりのホテルが良いという人には良いホテルと思う.ちなみに,”King George Hotel“のウェブサイトは日本語版も用意されているので,英語が全然できなくても,直接予約できる.

King George Hotel @ San Francisco
King George Hotelの室内

King George Hotel @ San Francisco
King George Hotelの洗面所