4月 222007
 

小学生と思春期のためのシュタイナー教育―7歳から18歳、12年間一貫教育
京田辺シュタイナー学校,学習研究社,2006

これは素晴らしい本だ.子供を持つすべての親に,あるいはすべての教師に,読むことを勧めたい.子供を大切に想う親や教師の気持ちが,本書から溢れ出ている感じがする.子供の教育のために,ここまで頑張れる人達がいるということに感動するはずだ.

シュタイナー教育の基本は,子供の成長に合わせて,その時々に相応しい教育をするということに尽きる.7歳までは知的な教育は一切行わない.7歳から14歳までも,子供の感性や芸術性を重視し,いわゆる詰め込み教育とは対極に位置する.そのような教育方針であるため,テストで他人より良い点を取ることが大事だと思い込んでいる親や教師,世間体の良い大学に入学することが人生の目的であるかのように思い込んでいる親や教師には,到底受け入れがたいものだろう.

しかし,そういう人達も,教科書を読んで得る軽薄な知識よりも,実体験を通した理解の方が重要だと直感的には認識しているはずだ.語呂合わせで年号を必死に記憶するだけの歴史の勉強よりも,歴史上の偉人が生きた時代背景を知り,どのような思いでその時代を生きたかを考える方が,自分自身の生き方に良い影響を与えるはずだ.それこそ,歴史から学ぶ賢人の生き方だろう.それなのに,子供を塾に通わせ,テストの点に一喜一憂する親が多いのはなぜだろうか.それは恐らく,無知だからだろう.あるいは,世間体の良い大学に入れなかった体験が,世間体の良い大学に入れた体験が,無意識のうちにそうさせるのかもしれない.

本書で描かれるシュタイナー学校では,実際に,子供の血肉となるであろう教育が行われている.その教育は,シュタイナーの教えに沿ったものであり,子供の成長に合わせたものである.

1年生は,幼児期には主に体をつくるために向けられていた力が,記憶力や想像力へと向けられ,子供の内面に学ぶための準備が整う時期とされる.だからこそ,この時期に知的な教育を始める.ただし,この時期の子供は,まだ夢の中にいる状態のため,お話を通してイメージで伝える.

2年生は,自分の内面にある愚かさ,醜さ,ずるさといったものを意識するようになる.そこで,動物寓話や聖人伝を聞かせて,人間の愚かさと崇高さを知らせ,こういう人間になりたいという思いを持たせる.

3年生は,自分と周りの世界との一体感から抜け出し,自分を世界の中に存在する個として感じるようになる.この孤独で不安な「9歳の危機」を乗り越えていくために,生活科での実体験を通して,自分と世界の繋がりを確認していく.

4年生は,自分と周りの世界を切り離すことにより,世界を客観的に学ぶ力が芽生える.そこで,この時期に理科や郷土学を学び始める.

5年生は,肉体的にも精神的にも調和が取れ,軽やかで,のびのびした時期だ.この時期に,地理や歴史を本格的に始める.

6年生は,法則性を学び始める.客観的に物事を観察できるようになり,因果関係や物質に対する理解が生まれてくるこの時期に,物理学,鉱物学,幾何学が始まる.

7年生は,思春期への入口であり,感情が豊かになる一方で,地球全体への関心が高まる.この時期のテーマは世界の発見であり,世界史ではルネッサンスを取り上げ,化学,人間学,栄養学が始まる.

小中等部の最終学年である8年生は,これまでの総まとめを行う.この後,高等部4年間を経て,社会へと巣立っていく.

シュタイナー学校には,テストも通信簿もない.あくまでも,目指しているのは,人間として総合的な成長だ.担任は子供の成長に重大な責任を持つ.

さて,このシュタイナー学校について気になるのは,現在の日本の社会に受け入れられるのかという点だろう.実は,京田辺シュタイナー学校は公立学校でも私立学校でもない,NPOである.このため,公的な卒業証書を発行する資格はなく,子供達は形式的に地元の公立学校に在籍し,そこから卒業証書を受け取る.当然,教育委員会や学校との話し合いが必要になる.また,高校卒業資格を得るためには,高卒認定試験に合格しなければならない.
加えて,学校法人でないために,助成金などを得ることもできないため,経済的に学校運営が難しいという側面もある.しかし,この学校に子供を通わせる親と,それを受け入れる教師の熱意は,そのような短所を補ってなお余りある.

正直,このような学校になら子供を通わせたいと思う.そう思わせるだけの魅力がある本だ.一読を勧めたい.

  One Response to “小学生と思春期のためのシュタイナー教育―7歳から18歳、12年間一貫教育”

  1. ヴェレダ…

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