9月 192007
 

研究者や技術者でない人達には縁のない話題かもしれませんが,研究者の評価がどうなっているのかということは,日本が科学技術立国であるなら重要な問題であるため,話のネタとして紹介します.研究者を目指す若者にも当然参考になるでしょう.

大学教員がまともに仕事をしているかどうかを評価しようとするなら,「教育」への貢献度を評価することが不可欠である.何よりもまず,これが重要である.ところが,教育活動の評価は非常に難しいため,とりあえず,評価しないという作戦が採用されることが少なくない.私が学生のレポートを赤ペンで真っ赤にしたところで,給料が1円でも上がるわけでもない.まあ,無茶苦茶な評価基準を適用して,大学教育を破壊してしまうぐらいなら,何もしない方がましという見方もできる.

最も重要な教育の次に来るのは,研究だろう.プロモーションが絡むと,研究業績の評価は避けて通れない.助教(昔の助手),准教授(昔の助教授)や講師,教授(昔から教授)とのしあがっていくためには,その地位に相応しい研究業績を要求される.では,研究業績はどうやって評価されるのか.実は,これも大問題である.定量的な評価が求められるので,馬鹿でも思い付くのは論文数という評価指標だ.だが,論文数だけで評価するのは本物の馬鹿だけだろう.社会に貢献しない論文をいくら書いても無意味だ.では,論文の量だけでなく,質まで考慮するためにはどうすればよいか.この段階で持ち出されるのが,論文の被引用数や雑誌のインパクトファクターということになる.

論文の被引用数は,その名の通り,当該論文が他の論文に引用(参照)された回数である.この被引用数が多ければ多いほど,その分野において注目される研究成果だと推察できる.一方,インパクトファクターは,個々の論文の評価指標ではなく,雑誌の評価指標である.基本的な発想は論文の被引用数と同じであるが,どれだけ注目されている雑誌であるかを表す指標とされている.このため,インパクトファクターの高い雑誌に掲載された論文は優れた論文ということになる.

読書諸賢には,これらの評価指標の問題点は明らかだろう.被引用数が1とか2の論文であっても,それを大量生産すると,合計としての被引用数は上昇する.しかし,そんな数が大きいからと言って,優れた研究業績をあげたと言えるだろうか.ただし,真に革新的な研究は同時代の人々からは評価されないという説もあるので,その場合は,被引用数が少なくても,物凄い論文であり,研究業績であると言うことになる.だが,そういうことを言い出すと,研究業績の評価なんてできなくなるので,ここでは敢えて無視しよう.一方のインパクトファクターだが,忘れて困るのは,インパクトファクターは雑誌の評価指標であるということだ.同じ雑誌に掲載された論文であっても,優れたものもあれば劣るものもある.まさに玉石混淆だ.このため,インパクトファクターが高い雑誌に掲載されたから凄い研究成果だとは言えない.

では,どうすれば良いのか.論文数と被引用数を同時に考慮できる指標なら,何とか使い物になるのではないだろうか.というわけで考案されたのが,タイトルにある「h指数(h-index)」である.考案者は物理学者のハーシュ氏.h指数(h-index)は,論文数と被引用数とに基づく科学的貢献度を示す指標であり,「ある研究者の論文について,被引用数がh以上である論文の数がh以上であることを満たす最大の数値h」と定義できる(我流の定義です).具体例を挙げると,h指数(h-index)が100ということは,被引用数が100以上である論文を100報以上書いていることになる.つまり,このh指数(h-index)の高い研究者ほど凄い.

実は,このh指数(h-index)の歴史は浅く,提案されたのが2005年.まだ2年ほどしかたっていない.ところが,あちこちの文献データベースで採用され,影響力を増しているようだ.今日,エルゼビア(Elsevier B.V.)という出版社から届いたメールの件名が”View your h-index in Scopus”で,「Scopusであなたのh指数(h-index)が簡単に確認できますよ」という内容だった.Scopusでは著者ごとに固有のIDが割り当てられているため,自分を検索して,ボタンを1つ押せば,h指数(h-index)を含む研究業績指標が表示される.確かに簡単だ.

興味本位で自分のh指数(h-index)を確認してみると,”8″だった.もちろん研究分野にもよるだろうが,この数字は高いのか低いのか...

いずれにせよ,こういう数字を見ると,「もっと論文を書こうか」という気になる.手元に貯めてあるのを3つほど仕上げるかな...

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