10月 172007
 

内緒話でも何でもなく,現在の延長線上に未来を描けば,多くの大学法人は倒産するでしょう.以下はメモです.

運営費交付金

運営費交付金とは,学生数や教職員数など国立大学の規模に応じて,文部科学省から毎年大学に配分される補助金です.人件費や施設管理費がこれで賄われます.運営費交付金が不足すると,教職員の首を切ったり,施設を荒れ放題のまま放置せざるをえず,その先に倒産があります.

現在,この運営費交付金は毎年1%ずつ削減されていますが,それだけに止まらず,運営交付金に競争原理・成果主義が導入されようとしています.そうなると,当然ながら,運営費交付金が増える大学と減る大学に二分されます.

財務省作成資料(2007/5/21財政制度等審議会)によると,

  • 増加する大学: 13法人(15%)
  • 減少する大学: 74法人(75%)
  • 半分以下になる大学: 50法人(57%)

だそうです.普通の国立大学の収入の70〜80%が運営費交付金によるものだとすると,半分以下になる大学では資金繰りがつかなくなるでしょう.

増加する13法人のうち7つは,当然ながら旧帝大です.増加率順に記載すると,東京大学,京都大学,東京工業大学,名古屋大学,東北大学,大阪大学,東京農工大学,北海道大学,奈良先端科学技術大学院大学,九州大学,一橋大学,神戸大学,長岡技術科学大学となります.

学生の立場になって考えれば,運営費交付金が大幅に減少する大学では,校舎はボロボロ,机や椅子もボロボロ,研究室に入ったところで,研究設備もボロボロ,もちろんサービスも低レベルということになるでしょう.教育は国家の要ですから,そんなことでは良くないと思いますが.少子化が進行していく中で,大学をどうするのかという国家戦略がないのでしょうか.まるで勉強しない大学生のために教育だからと税金を投入することはないですが,財政赤字が大変だからと言って,教育環境を破壊するのはいかがなものでしょうか.スッキリ統廃合させるなら,ともかく.

日本の教育支出

よく話題になることですが,GDPに占める教育支出の割合を,OECD加盟国間で比較すると,日本は教育投資に非常に消極的であることがわかります.

2004年のOECDの資料によると,トップのイスラエルが8%超,米国や韓国が7%超,イギリスやフランスが6%前後であるのに対して,日本は5%にも届きません.ちなみに,OECD加盟国の平均は6.1%です.日本は平均のはるか下です.

大学の資金力

容易に想像できるように,日本の大学は貧乏です.地方大学はもちろんですが,東京大学にしても,その資金力は世界一流大学の足下にも及びません.

世界一流大学は,卒業生の寄附金などで得た収入で莫大な基金を作り,その基金を運用して,奨学金を含む様々な経費に充当しています.代表的な大学の基金は,ハーバード大学が約3兆円,スタンフォード大学が約1.6兆円であるのに対して,東京大学は130億円です.ハーバード大学は,基金の運用益だけで毎年約4000億円を稼ぎ出しますが,東京大学の年間予算は約2000億円で,ハーバード大学の運用益の半分に過ぎません.日本の大学がいかに金欠かがわかります.

まあ,ハーバード大学は別格ですが,それにしても,日本の大学の資金力のなさは問題です.博士課程の学生に給料を支払うどころか,授業料を免除することすらままなりません.そりゃ,日本の大学で博士課程に進学するより,欧米の大学で進学する方が魅力的でしょう.

COEプログラム

運営費交付金は削減されているものの,競争的資金という名の研究費は増額されていたりします.中でも,21世紀COEプログラムとその後継のグローバルCOEプログラムというのがあり,拠点校には年間数億円が援助されています.

このような政策について,早稲田大学の竹内教授が,週間東洋経済2007/10/3特大号の中で,以下のように指摘しています.

  • 自然科学系の論文数で比較すると,世界のトップ3は,ハーバード大学,東京大学,京都大学の順であり,日本の大学は世界一流校に決して負けていない.
  • 日本の問題点は,トップ10大学以外の大学の研究能力が極めて低いことである.
  • 日本で10位の大学の研究費は,米国で100位の大学の研究費よりも少ない.
  • 研究費と論文数にはほぼ正比例の関係がある.
  • COEプログラムは,トップ10大学をさらに強化するものであるが,日本の研究力を向上させるためには,トップ10大学以外の大学の研究能力を強化しなければならない.つまり,的外れな施策である.

  4 Responses to “国立大学倒産に向けて”

  1. 日本では、拠点大学に資金を集める意味がない。基本的に、十分潤っており、さらに潤沢な人的資源を持っているからだ。教員数が、数倍違う。教育は、3年に一回数時間だけ。予算も人もある。戦前からの蓄積で、機械もある。場所も地方大学に比べると遥かに大きい。10倍超すんではなかろうか。こんなところに資金を入れても、いらない機械を買う位し日、ない。つまりは全てが無駄に税金を使われていることになる。これは国立の研究所も同じで、年度末になると、数億の金を明日使え、と言う訳の分からない指令が、国から届く。

    一方で、底辺を支えている、小さな大学は、毎年100万200万の実験経費のやりくりだけで、全ての教員が2−3ヶ月を費やす。教育のデューティーは帝大などと比べると、やはり2−3倍。さらに給料は数百万安い。教員数が少ないから、雑用は飛躍的に多い。学生数は増やされ、教員は減らされている。

    これでは、科学は育たない。底辺がしっかりしていないと、国のトップの科学は崩壊する。根っこがないのだから。地盤の下にきちんと土台を植え込まないと、高い塔は立たない。

    ネイチャーが何だ。サイエンスが何だ。掲載論文の大半は、数年で、死に絶え、二度と引用されない。科学的に嘘だと証明される。これにいくつ乗せるかで、人事が決まり、大学格差が決定される。

    ノーベル賞。あれは政治。日本もちゃんと、ノーベル委員会に研究費をばらまいて、受賞者を増やしてきた。しかしこれはペテンだ。日本の政治、教育界によくある賄賂攻撃である。政府、御用学者ども、恥を知れ。

  2. 政治を変えよう。
    教育に金をかけよう。
    トップにじゃぶじゃぶ金を使わせるな。全部無駄になる。
    官僚が、一晩で、20万のワインを、外交経費で(つまり、秘密経費で)飲むような国に、未来はない。

  3. コメントありがとうございます.
    まず,事実誤認を指摘しておきます.

    「教育は、3年に一回数時間だけ。」
    そういう研究が主である人も存在するでしょうが,通常,担当講義数はもっと多いです.私の場合,年間4コマとして,4回×1.5時間×15週=90時間の講義を担当していることになります.これに,テストの採点などが加わります.さらに,研究室での学生指導時間は膨大です.

    「全てが無駄」
    当然ですが,そうではありません.

    「毎年100万200万の実験経費のやりくりだけで、全ての教員が2−3ヶ月を費やす。」
    地方大学に在籍した経験がないので定かではありませんが,そんなわけはないと思います.「やりくり」の定義が不明ですが,全教員が実験経費のやりくりだけに労働時間の1/5を費やしているなら,それは組織として無能すぎる気がします.

    「学生数は増やされ、教員は減らされている。」
    地方大学に限らず,教員が減らされているのは旧帝大でも同様です.昔は,教授1・助教授1・助手2に技官までいたものですが,今では,教授1・助教授1・助手1が揃わない研究室が増えています.

  4. 「官僚が、一晩で、20万のワインを、外交経費で(つまり、秘密経費で)飲むような国に、未来はない」というのは,もっともらしく聞こえるのですが,これについては,昨今の週刊誌&ワイドショーで世論が誘導される日本を象徴したコメントのような気がします.

    本当に,それが本質的な問題なんでしょうか.

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