研究室に在籍する学生に宛てたメールを紹介しよう.
報告会でのプレゼンテーションに関するアドバイスをまとめたものなので,参考になる人もいるだろう.
研究室では,毎週1回,全体ゼミと呼ぶ研究報告会を開催している.「全体」というのは研究室全体という意味だ.つまり,教授以下4回生まで全員が参加する.毎回3名前後の学生が発表するのだが,おおよそ1人1時間程度だ.もちろん,単に報告を受けるだけではなく,議論するために全員が集まっているので,場合によっては1人2時間ほどかかることもある.研究テーマ毎に行うグループゼミでは,マンツーマンで8時間ぶっ通しでゼミをするなんてこともある.
この全体ゼミで発表するためには,A4サイズのコピー用紙で10ページ前後の資料を準備しなくてはならない.プロジェクターは使用せず,原則として,用意した資料に基づいて発表を行う.研究室の方針として,学生は資料の書き方について厳しく指導されるため,この時期になると,それなりの資料を書けるようになっている.そういう事情をふまえて,下記のメールを送信した.
今年の全体ゼミは終了しましたが,9月以降に全体ゼミを繰り返す中で,ゼミ資料の書き方なんかは随分とよくなりました.スケジュール管理の甘さは多々見受けられますが...
では,次のステップに移りましょう.
良い資料が準備できているという前提で,次に注意するのは「プレゼン」そのものです.スライドを使う発表だけがプレゼンではありません.むしろ,頻度としては,配布資料を用いるプレゼンの方が機会は多いでしょう.
まず,これまでの全体ゼミで気になっている点を指摘しておきます.
★★★ 聴衆を無視して暴走するな! ★★★
簡潔に表すなら,これに尽きます.
参加者が理解できているか,自分の発表ペースについてきているか,質問やコメントがありそうか,そういうことを全部無視して,ひたすら資料を読むだけ.これでは落第です.
発表ではアイコンタクトを取れと言っています.全体ゼミでも同じです.常に参加者の一人一人を意識しないといけません.
全員が納得しているようであれば,次へ.納得してもらっていないようであれば,質問を促したり,自分から進んで補足するようでなければなりません.
スタッフから「ちょっと待って.ついていけてない.」と制止されるまで暴走し続けるようではダメです.
どうして,こんなことになってしまうのか.
★★★ プレゼンの目的を自覚にしろ! ★★★
簡潔に表すなら,これに尽きます.
全体ゼミで発表することの目的が,頭から吹き飛んでいるから,暴走するのです.参加者に研究の進捗状況を報告し,理解してもらい,さらに検討すべき点を指摘してもらい,今後の方向性についてアドバイスを受けるのが目的だとしましょう.当然,資料を読み終えれば目的が達成されるなんてことはありません.発表中に取るべき態度も自ずと決まるはずです.
修論・卒論発表本番まで,以上を意識して,全体ゼミやグループゼミに向き合って下さい.
最後に,お勧めの参考書を挙げておこう.
まず,単に小手先のテクニックを知りたいのでなく,人前で話すための心構えを理解し,素晴らしい話し手になりたいと願うのであれば,デール・カーネギーの「話し方入門」を読むといい.人生のあらゆる場面において,人に話をするときに,必ずや役に立つことだろう.
ビジネスでプレゼンする機会が多い,ビジネスにおけるプレゼン能力を磨きたいというのであれば,ジーン・ゼラズニーの「マッキンゼー流 プレゼンテーションの技術」が良いだろう.
いずれも,研究室の学生に対して,「研究室を去るまでに読んでおくように!」と指示している書籍だ.これらの他にもいくつもの本が指定されており,その一部は研究室課題図書としてウェブサイトでも紹介している.
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こんにちは。プレゼンについて悩んでいたところたどり着きました。お薦めの書籍など大変勉強になりそうです。研究者の端くれとして大変勉強になります。子育てについても2児の父として参考になるところ大でした。今後も楽しみにしております。
amifumiさん.激励のコメントありがとうございます.
研究者としては,自分の能力の限界を恐れつつも,独自路線を突き進み,多くの共同研究者や優秀な学生にも恵まれ,ハッピーな研究者生活を送っています.
一方,教育者としては,教育こそ最大の責務と信じるが故に,悩みは多いです.それでも,卒業生などからのメッセージに支えられ,独自路線を突っ走っています.