3月 312008
 

3月5日に「研究室の同窓生ネットワーク構築」と題して,プロセスシステム工学研究室卒業生と在学生とを繋ぐアルムナイネットワークを立ち上げると書いた.2008年4月1日,遂にアルムナイネットワーク「Alumni-7-Network」が始動するというので,言葉を贈ることにした.その内容をここに記載しておこう.

始動時の登録者数は非常に少ない.在学生とスタッフに加えて,直近数年間の卒業生の一部のみだ.興味のある卒業生は,私まで連絡して欲しい.参加すると,メリット>デメリットであることは保証する.

Alumni-7-Networkの始動に寄せて

まずは,何もない状態から「Alumni-7-Network」を立ち上げてくれた,また惜しみない支援をしてくれた学生・卒業生諸氏に感謝します.ありがとう.このネットワークが,プロセスシステム工学研究室の縦横の繋がりをより強固なるものとし,参加者に大いなる恵みをもたらすことを期待しています.

卒業生の皆さんは,送付される”Quarterly Report”(になると聞いています)にも期待して下さい.研究室の近況はもちろん,最新の研究成果も報告する予定のようです.自分が種を蒔いた研究が大きく育っている人にも,既にテーマが葬り去られた人にも,プロセスシステム工学研究室で取り組んでいる研究活動の一端に触れ,桂で,吉田で,仲間と研究に没頭した日々を思い出してもらえればと思います.もちろん,最新の研究成果を自分の仕事に活かしたいという要望も大歓迎です.大金を用意してスタッフに相談して下さい.

プロセス設計は健在で,ほとんどのグループがAspen HYSYSを利用しています.ここ数年,化学工学会秋季大会において,学生を対象としたプロセス設計コンテストが開催されるようになり,当研究室の学生が最優秀賞を連続受賞しています.昔から現在に至るまで,非常に優秀な学生がプロセスシステム工学研究室に来てくれることには,本当に感謝しています.研究室の礎は人ですから.

海外研究室旅行もすっかり定着しました.最初の海外旅行は2002年のグアムでしたが,その後,2004年にソウル国立大学(ソウル,韓国),2005年にチュラロンコン大学(バンコク,タイ),2006年に国立台湾大学(台北,台湾),2007年に香港科技大学(香港,中国)を訪れました.さて,今年はどこを目指すのでしょうか.報告に期待して下さい.個人的には国内でのんびりしたいのですが...

最近の研究室旅行では,香港の学生の高い英語力が印象的でした.ちなみに,化学工学専攻の大学院入試では,英語の試験が遂にTOEICになります.卒業生および在学生の皆さん,TOEIC受験してますか.何点取れてますか.研究室では,学生およびスタッフの英語力を強化するために,教材を用意することにしました.詳しくは,「英語学習教材」を参照して下さい.これからも拡充させていくつもりです.

英語学習に劣らず力を入れているのが,論理的思考能力とプレゼン能力の強化です.在学中に口やかましく言われたのを思い出す人も少なくないでしょう.発表の構成はもちろん,スライドの文字の大きさ,フォント,色に至るまでチェックされ,辟易した人もいるのではないかと思います.以前は口やかましく言うだけだったのですが,もっと効果的に能力開発に取り組まないといけないとの想いから,研究室課題図書として,テキストを用意することにしました.例を以下に列挙します.

もちろん,正しい日本語で書く練習も怠ってはおらず,相変わらず,赤ペン先生を続けています.

さらに最近は,研究者や技術者としてのイロハ(ABC,読み書き算盤)だけではなく,将来を嘱望される学生諸君に,人間として成長してもらい,大所高所からの判断ができるリーダーとなる素養を身に付けてもらうために,研究室課題図書を大いに充実させています.その一部を紹介しましょう.

課題図書の一覧は,「課題図書」にて公開されています.洋の東西を問わず,新旧を問わず,虚心坦懐として,このような本を通して学生時代に学べば,人生にもたらされるものが何かあるだろうと思います.もちろん,課題図書として用意した数冊を読めば十分ということはありません.しかし,課題図書の設置目的は,学問する契機を与えることであり,その目的は十分に達せられるであろうと期待しています.私自身も学生時代,恩師である橋本先生から「本を読みなさい」とよく諭していただきました.その教えを当時理解できていたなら,人生も変わっていたかもしれません.学生の代わりに学問することはできませんが,気付きを与えられるようにと願うばかりです.かくいう私も努めて本を読むように心掛けています.この2月と3月には下記のような本を読みました.

近代日本の礎を築いた志士を数多く育てながら30歳にして刑死した吉田松陰は,年500冊を読破していたそうです.現在でも,各界にて重責を担うような人達は総じて寸暇を惜しんで読書をしているものです.諸氏にも是非良書を読み,立派な人物になって欲しいと願います.みな極めて優秀であり,それなりの地位に付くべき人材であり,それ故に社会的な責任(noblesse oblige)を負うことを自覚してもらいたいのです.新渡戸稲造は「武士道」の中でこう書いています.「知能ではなく品格が,頭ではなく魂が,骨折って発達させる素材として,教師によって選ばれるとき,教師の職業は聖なる性格をおびる」と.大学に身を置く私としても,自省を忘れず,志を抱き,日々成長していきたいと欲しています.

私も40歳が近づいてきました.孔子が「四十にして惑わず」と述べた年です.論語には次のような孔子の言葉が記されています.

「子曰く,年四十にして悪まるるは,其れ終らんのみ.」

「子曰く,後生畏るべし.焉ぞ来者の今に如かざるを知らんや.四十五十にして聞こゆること無くんば,斯れ亦畏るるに足らざるのみ.」

若い頃には,自分が後生として畏敬される立場だとふんぞり返っていましたが,もはや,そんな馬鹿なことは言っていられなくなりました.其れ終らんのみ,畏敬するに足らないと見切られてしまわないよう,大いに発憤しなければならないと感じる昨今です.

東洋思想家であり,日本の政財界に多大な影響を与えた安岡正篤氏は,人間として自己を錬成するために必要なものは3つあると述べています.寸暇を惜しむこと,私淑する師と良い友人を持つこと,そして,愛読書を持つことです.プロセスシステム工学研究室の同士が,これら必要なものを得ようとする際に,このAlumni-7-Networkが大いに役立つことを期待しています.研究室を核とした人的ネットワークを大切にし,Alumni-7-Networkに関わる人達に感謝しつつ,十分に活用し,その発展を支えて下さい.皆さんの活躍を心から期待しています.

2008年3月31日 京都にて

追伸

まあ,とにかく,お前ら,まっとーな人生送れよ!

3月 312008
 

先日,「英語学習教材を研究室で購入」にて,研究室課題図書シリーズに,英語学習教材を加えることにしたと書いた.その際には,アメリカ人の話す英語のアクセントを身に付けるための教材を2つ紹介した.

今回は,正しい発音を身に付けることによってリスニング力を向上させようという英語学習教材を紹介しよう.松澤喜好氏の「英語耳」シリーズだ.

「英語耳 発音ができるとリスニングができる」は,発音できない音は聞き取れないという主張で,基本的な発音の反復練習を通して,リスニングできるようになろうと訴える.続編も続々と登場している人気シリーズだ.ペーパーバックなどを音読するにしても,多読するにしても,どうせするなら,できるだけ正しい発音でしたいもの.まずは,本書で発音の練習から始めたらどうだろう.実は,最近,私自身も毎日聞いている.

もう1つ.「英語耳ドリル 発音&リスニングは歌でマスター」は,著者の英語学習経験をもとに作られた”Parrot’s Law”という学習法の解説書になっている.付録CDにはヒット曲5曲と短いスピーチなどの練習素材が収録されている.全歌詞発音記号付きなので,綺麗な発音を目指して頑張ってみてはどうだろう.

発音を良くするための教材として,「英語耳」は結構良いと思う.類書も多いが,発音がカタカナで書いてあるものだけは,避けた方が無難だろう.そう言う意味でも,本書はお勧めできる.

3月 272008
 

佐藤一斎「人の上に立つ人」の勉強―45分で読める『言志四録』+『重職心得箇条』
佐藤一斎(著),坂井昌彦(翻訳),三笠書房,2002

人の上に立つ人の心構えや戒めがまとめられた必読書として,江戸時代から今なお読み継がれている「言志四録」と「重職心得箇条」の現代語訳と解説である.著者の佐藤一斎は多くの人材を育成したが,その門下生には,吉田松陰,坂本龍馬,勝海舟らも師事した佐久間象山も含まれる.

じっくりと味わい,自分の血肉としたい.なお,本書は「言志四録」の僅かと「重職心得箇条」を紹介するものであるため,1時間もあれば読破できる.45分で読めるというのは,そういうことだ.

重職心得箇条

  • 第1条
    重職と申すは,家国の大事を取計べき職にして,此重の字を取失い,軽々しきはあしく候.大事に油断ありては,其職を得ずと申すべく候.先づ挙動言語より重厚にいたし,威厳を養うべし.重職は君に代わるべき大臣なれば,大臣重うして百事挙ぐるべく,物を鎮定する所ありて,人心をしつむべし,斯の如くにして重職の名に叶うべし.又小事に区々たれば,大事に手抜あるもの,瑣末を省く時は,自然と大事抜目あるべからず.斯の如くして大臣の名に叶うべし.凡そ政治名を正すより始まる.今先づ重職大臣の名を正すを本始となすのみ.
  • 第2条
    大臣の心得は,先づ諸有司の了簡を尽さしめて,是を公平に裁決する所其職なるべし.もし有司の了簡より一層能き了簡有りとも,さして害無き事は,有司の議を用いるにしかず.有司を引立て,気乗り能き様に駆使する事,要務にて候.又些少の過失に目つきて,人を容れ用る事ならねば,取るべき人は一人も無之様になるべし.功を以て過を補はしむる事可也.又賢才と云う程のものは無くても,其藩だけの相応のものは有るべし.人々に択り嫌いなく,愛憎の私心を去て,用ゆべし.自分流儀のものを取計るは,水へ水をさす類にて,塩梅を調和するに非ず.平生嫌いな人を能く用ると云う事こそ手際なり,此工夫あるべし.
  • 第3条
    家々に祖先の法あり,取失うべからず.又仕来仕癖の習あり,是は時に従て変易あるべし.兎角目の付け方間違うて,家法を古式と心得て除け置き,仕来仕癖を家法家格などと心得て守株(しゅしゅ)せり.時世に連れて動すべきを動かさざれば,大勢立たぬものなり.
  • 第4条
    先格古例に二つあり,家法の例格あり,仕癖の例格あり,先づ今此事を処するに,斯様斯様あるべしと自案を付,時宜を考えて然る後例格を検し,今日に引合すべし.仕癖の例格にても,其通りにて能き事は其通りにし,時宜に叶わざる事は拘泥(こうでい)すべからず.自案と云うもの無しに,先づ例格より入るは,当今役人の通病なり.
  • 第5条
    応機と云う事あり肝要也.物事何によらず後の機は前に見ゆるもの也.其機の動きを察して,是に従うべし.物に拘りたる時は,後に及んでとんと行き支えて難渋あるものなり.
  • 第6条
    公平を失うては,善き事も行なわれず.凡そ物事の内に入ては,大体の中すみ見えず,姑(しばら)く引除て活眼にて惣体の体面を視て中を取るべし.
  • 第7条
    衆人の厭服する所を心掛べし,無利押付の事あるべからず.苛察を威厳と認め,又好む所に私するは皆少量の病なり.
  • 第8条
    重職たるもの,勤向繁多と云う口上は恥べき事なり.仮令(たとえ)世話敷とも世話敷とは云わぬが能きなり.随分手のすき,心に有余あるに非れば,大事に心付かぬもの也.重職小事を自らし,諸役に任使する事能わざる故に,諸役自然ともたれる所ありて,重職多事になる勢あり.
  • 第9条
    刑賞与奪の権は,人主のものにして,大臣是を預るべきなり,倒に有司に授くべからず,斯の如き大事に至ては,厳敷透間あるべからず.
  • 第10条
    政事は大小軽重の弁を失うべからず.緩急先後の序を誤るべからず.徐緩にても失し,火急にても過つ也,着眼を高くし,惣体を見廻し,両三年四五年乃至十年の内何々と,意中に成算を立て,手順を逐て施行すべし.
  • 第11条
    胸中を豁大寛広にすべし.僅少の事を大造に心得て,狭迫なる振舞あるべからず.仮令才ありても其用を果さず.人を容る丶気象と物を蓄る器量こそ誠に大臣の体と云うべし.
  • 第12条
    大臣たるもの胸中に定見ありて,見込みたる事を貫き通すべき元より也.然れども又虚懐公平にし人言を採り,沛然と一時に転化すべき事もあり.此虚懐転化なきは我意の弊を免れがたし.能々視察あるべし.
  • 第13条
    政事に抑揚の勢を取る事あり.有司上下に釣合を持事あり.能々弁うべし.此所手に入て信を以て貫き義を以て裁する時は,成し難き事はなかるべし.
  • 第14条
    政事と云えば,拵(こしら)え事繕い事をする様にのみなるなり.何事も自然の顕れたるままにて参るを実政と云うべし.役人の仕組事皆虚政也.老臣なと此風を始むべからず.大抵常事は成べきだけは簡単にすべし.手数を省く事肝要なり.
  • 第15条
    風儀は上より起こるもの也.人を猜疑し,蔭事を発(あば)き,たとえば,誰に表向き斯様に申せ共,内心は斯様なりなどと,掘出す習いは甚あしし.上に此風あらば,下必其習となりて,人心に癖を持つ.上下とも表裡両般の心ありて納めにくし.何分此むつかしみを去り,其事の顕れたるままに公平の計いにし,其風へ挽回したきもの也.
  • 第16条
    物事を隠す風儀甚あしし.機事は密なるべけれども,打出して能き事迄もつつみ隠す時は却て,衆人に探る心を持たせる様になるもの也.
  • 第17条
    人君の初政は,年に春のある如きものなり.先人心を一新して,発揚歓欣の所を持たしむべし.刑賞に至ても明白なるべし.財帑(ざいど)窮迫の処より,徒に剥落厳沍(はくらくげんご)の令のみにては,終始行立ぬ事となるべし.此手心にて取扱あり度ものなり.

3月 252008
 

ザ・シークレット
ロンダ・バーン,角川書店,2007

本書のいう秘密(ザ・シークレット)とは,いわゆる「引き寄せの法則」のことだ.あなたが考えたことが,引き寄せられ,現実化する.今のあなたは,過去にあなたが考えたことの結果であり,それ以外の何物でもない.自分を取り巻く環境も,人々も,お金を含めた所有物も,自分自身も,何もかも,例外なく.そして,将来のあなたは,今あなたが考えていることで決まる.

この引き寄せの法則を上手に使って,素晴らしい人生を送りましょう.あなたにはそれができるのです.というのが本書のメッセージだ.そして,この秘密を活用して実際に幸せに生きている様々な人達の言葉を引用しつつ,引き寄せの法則を使うための秘訣を具体的に教えてくれる.

  • 思考は磁石のようなもので,その思いにはある特定の周波数があります.あなたが思考やイメージを描くと,それが宇宙に放射されて,同じ周波数を持った事象を引き寄せます.
  • あなたが思っていることが現実となります.
  • 「引き寄せの法則」は自然の法則です.引力の法則と同じように,誰にでも平等に働きます.
  • あなたの思考があなたの発する周波数を決めます.そして,あなたの気持ちが,あなたの発している周波数を知らせてくれるのです.あなたの気分が悪いときはもっと悪いものを引き寄せる周波数と同調しています.気分が爽快な時はさらに良いものを引き寄せます.
  • 愛はあなたが放射することのできる最高の波動です.愛を強く感じれば感じるほど,また,愛を発すれば発するほど,あなたはより大きな力を利用することができるようになります.
  • 創造のプロセスが「お願いする」,「信じる」,「受け取る」といった3つの簡単な方法で,容易にあなたの願いを実現してくれます.
  • あなたの欲しいものを宇宙にお願いすることで,あなたは自分の欲しいものを明確にする絶好の機会を得ます.頭の中でそれが明確になれば,それで既にお願いしたことになります.
  • 信じるということは,お願いしたことを既に受け取ったように行動したり,話したり,思考したりすることです.あなたがそれを既に手に入れたという周波数を放射すると「引き寄せの法則」が働いて,必要な人々,出来事,状況を動かしてあなたが入手できるようにしてくれます.
  • 受け取るということは,願望が実現したときに感じる爽快な気分を感じることです.受け取ったという爽快な気分になったとき,あなたは欲しいものと同調できる周波数を発しています.
  • 既に所有しているものに対して感謝しましょう.そうすればより多くの良いものが引き寄せられてきます.
  • あなたが欲しいものに前もって感謝すれば,あなたの願望は爆発的に強められて,より力強いシグナルが宇宙に送り出されます.
  • お金を引き寄せるには,豊かさに焦点を合わせて下さい.お金が不足していることにこだわると,お金はやってきません.
  • 自分自身を愛と尊敬を以て扱って下さい.そうすれば,あなたを愛し,尊敬してくれる人々を引き寄せます.
  • 「完璧な健康体に焦点を合わせる」ことは周りで何が起きていようと,誰にでも心の中でできることです.
  • あなたが抵抗するものをあなたは引き寄せます.それはあなたが強い感情を伴って,それに焦点を合わせているからです.
  • この世の全てのものを賞賛し祝福して下さい.そうすると,否定的なことや不協和音が消滅し,あなたは最高の波動と同調します.最高の波動,それは愛です.
  • 全てのものはエネルギーです.あなたはエネルギーの磁石で,自分の欲しいもの全てに電気を送り出し,自分に向かわせ,また,あなた自身も電気を帯びて,欲しいものへと向かいます.
  • 宇宙は思考から出現します.私達は自分の運命の創造主であるだけでなく,宇宙の運命の創造主でもあります.
  • あなたの望みを実現する近道は,あなたが望んでいるものは既に与えられているのだと,絶対的な既成事実と見なすことです.
  • あなたがしなければならないことは,今,心地良い気持ちになることだけです.
  • あなたは「秘密」を既に学びました.そして,それをどう使うかはあなた次第です.あなたが何を選ぼうとそれが正しいのです.その力はすべてあなたのものです.

本書に書かれているとおり,「引き寄せの法則」そのものは新しく発見されたものではない.昔から知られていたが,広く一般には知れ渡っていなかっただけだ.ともかく,そういう法則があり,その法則を利用する力が我々にはあるのだから,存分に活用すれば良いのではないだろうか.

本書の後半で,すべてのものはエネルギーであり,ある周波数で振動しており,どの周波数と同調するかが重要なのだと書かれている.また,宇宙は思考から生まれ,我々が現実と思っているものは我々の思考を顕在化したものであると書かれている.これらはいずれも,「ハトホルの書」に書かれている内容である.その類似性に驚かされた.全く関係ないものと思って手にしていたのだが...

3月 202008
 

リーダーの易経―時の変化の道理を学ぶ
竹村亞希子,PHPエディターズグループ,2005

まず始めに指摘しておくべきことは,「易経」は単なる占いの本ではないということだ.本書でも最初にこの点を指摘している.ここを理解できないと,「占いなんて・・・」という至極当然の反応を起こし,折角のチャンスを逃してしまう.

易経は四書五経の筆頭にあげられる儒教の経典であり,帝王学の書,すなわち国を治める君主が学ぶべき書物とされてきた.なぜ,占いと帝王学が関係するのかと言えば,わずかな兆しから将来を察する直観力が,時の流れを見抜く洞察力が,栄枯盛衰の変化の道理をわきまえることが,リーダーには求められるためだ.将来を見通すのに必要なのは占いなのではない.時の変化の原理原則を知ることだ.荘子には「占わずして吉凶を知る」と,荀子には「善く易を為むる者は占わず」とある.そのためのテキストが「易経」である.

本書は,易経の内容を帝王学(リーダー論)という観点から平易に解説したものである.易経に示されている六十四卦の中から,最も代表的な卦である乾為天を詳述し,その他のいくつかの卦をもって補足している.乾為天は,龍伝説に喩えて記されており,地に潜んでいた龍が力をつけ,飛龍になって勢いよく昇り,そして降り龍となるという龍の成長過程になぞらえて,栄枯盛衰の変遷過程を説いている.そこには,人や組織の成長と衰退の原理原則が明らかにされており,成長の各段階において,リーダーとして為すべきことが示されている.

乾為天において,龍は次の六段階を経るとされる.

  1. 潜龍:地に潜み隠れたる龍.
    確乎とした高い志を描き,実現のためにの力を蓄える段階.
  2. 見龍:人を見て学ぶ龍.
    師となる人物を見付け,基本を修養する段階.
  3. 君子終日乾乾す:一日中,朝から晩まで,意志をもって努力する龍.
    自分の頭で考えて創意工夫し,独自性を生み出そうとする段階.
  4. 躍龍:タイミングを計る龍.
    独自の世界を創る手前の段階.
  5. 飛龍:大空を飛翔する龍.
    一つの志を達成し,隆盛を極めた段階.
  6. 亢龍:傲り高ぶりのために降り龍となる.
    一つの達成に行き着き,窮まって衰退していく段階.

この乾為天が易経を代表する卦である理由は,乾為天がすべて陽からなるためだ.易経は陰陽思想を基礎とするが,陰と陽は1つのものの二面であり,陰と陽は変化して循環し,陰と陽は交ざり合うことで新たなものへと進化する.陰と陽のいずれか一方がなくなれば,変化,成長,発展はない.この観点から,すべて陽からなる乾為天の危険性が窺い知れる.このため,潜龍,見龍,君子終日乾乾す,躍龍を経て,飛龍へと成長していく過程において,陰の要素が重要だと指摘されている.

陽は,積極,剛健,推進を表す.陽は強く,常に前に進む.このため,飛龍はワンマンになりやすく,自分の力を誇示して,周りと能力を競ってでも大将でいたいと思う.人の言うことは聞かないで,自己主張する.飛龍が亢龍にならないためには,受容,寛容という陰の要素が肝心である.易経が説く陰陽思想とは,このようなものである.

リーダーたらんとする志を持つのであれば,易経の教えに耳を傾けるべきであろう.

3月 162008
 

ハトホルの書―アセンションした文明からのメッセージ
トム・ケニオン,ヴァージニア・エッセン,ナチュラルスピリット,2003

因果応報.善くも悪くも,過去の自分の行いの結果が現在に現れ,現在の自分の行いの結果が将来に現れるとする.これは仏教の思想であるが,輪廻転生を真とすれば,過去の自分の行いというのは,現世での行いに限定されないことは理解できるだろう.

この因果応報を別の言葉で言うと,原因と結果の法則となる.ジェームズ・アレンの「「原因」と「結果」の法則」には,自分の人格はもちろん,自分を取り巻く環境や事の成否はすべて自分の思いの結果であると書かれている.これは昨今の成功哲学の基盤となっている考え方である.

東洋哲学も同様の考え方を有している.例えば,安岡正篤氏はその著書「知命と立命」の中で,「人間も,人生そのものが一つの「命」である.それは絶対的な働きであるけれども,その中には複雑きわまりない因果関係がある.その因果関係を探って法則をつかみ,それを操縦することによって,人間は自主性を高め,クリエイティブになり得る.つまり自分で自分の「命」を生み運んでゆくことができるようになる.」と書いている.

さらに論を進めると,因果応報,原因と結果の法則の主体は,必ずしも人間個人に限る必要はない.国家や民族など,集団としての行いにも,当て嵌めて考えることができる.

洋の東西を問わず,時代の新旧を問わず,心ある人が語っているのは,この因果応報あるいは原因と結果の法則と呼ばれるものが真であるということだ.

ここでの問いは,「良い結果を得るために,何をすべきか」ということだろう.この問いに対する本書の回答は,最後のメッセージにある.

人類,ひいてはあなた自身のなかに存在している大いなる神秘は,みずから明らかになってあなたを魅了する日を待っています.それがかなうために必要なのは,あとほんの少しの愛だけです.どうかあなた自身を愛してください.あらゆる存在を愛してください.必要なことというのは,それほどシンプルです.どんなときにも,どこにいても愛とともにありますように.

具体的には,人々や動物たちに親切にできる機会があれば親切にし,思いやる機会があれば思いやるということだ.出会いのすべては生命に貢献する機会であり,その機会に我々は自分の判断で自分の行動を選択している.その選択の結果が我々の人生を決めているわけだ.外から与えられた運命が我々の人生を決めているのではない.

そこで,次のような問いを発することが有効とされる.

この状況に少しでもよい結果をもたらすために,私にできることは何か.私をとおして生命のもっとも深遠なる目的に貢献するには,ここで私は何ができるのか.

この問いを発し,他を愛する心で自分の行動を選択すれば,素晴らしい人生を送ることができると書かれている.

共鳴振動の法則は,あなたが共鳴したものは何であれ顕在化することを約束しています.よってあなたの意識が至高の真実に共鳴すれば,この世のものとは思われないほど崇高で素晴らしいものとして人生を体験するでしょう.一方,あなたが闘いや我欲や自他を締めつけるような意識の波動で生きれば,生き地獄のような人生を体験するでしょう.

さて,以下のことを書くべきかどうか迷うのだが...

これらのメッセージは,本書のタイトルにあるハトホルと呼ばれる集合意識からのものとされる.ハトホルとは,古代エジプトにおける,天空,豊饒の女神の名であるが,本書で言うハトホルとは,ハトホル女神そのもののことではなく,ハトホル女神を通して古代文明にも影響を与えた存在のことである.それは既にアセンションを経た存在であり,人類が意識を高めるための助言を提供している.

好き嫌いがハッキリわかれる本だろう.いや,生理的に受け付けないという人が少なからずいると言った方が良いのかもしれない.だから,この本を押し付ける気は全くない.だが,私の心には訴えかけるものがあったし,読むべき時に読んだと思う.

3月 152008
 

知命と立命―人間学講話
安岡正篤,プレジデント社,1991

人間を支配する因果律を知る知命,それを操作して自分の運命を創造する立命.これらのために学問をする.東洋哲学に基礎を置き,青年を鼓舞する安岡正篤氏の講演録だ.本書の最初と最後の文章を引用しておこう.

「命」というのは,絶対性,必然性を表し,数学的に言うならば,「必然にして十分」という意味を持っている.自然科学は,宇宙,大自然の「命」,即ち必然的,絶対的なるものを,物の立場から研究して科学的法則を把握した.

人間も,人生そのものが一つの「命」である.それは絶対的な働きであるけれども,その中には複雑きわまりない因果関係がある.その因果関係を探って法則をつかみ,それを操縦することによって,人間は自主性を高め,クリエイティブになり得る.つまり自分で自分の「命」を生み運んでゆくことができるようになる.

我々が宿命的存在,つまり動物的,機械的存在から脱して,自分で自分の運命を創造できるか否かは,その人の学問修養次第である.

どうしても,自ら志を立てて実践するという心構えとか根本的生活態度というものを確立しないと,なにを言っても空論である.いかなる期待される人間像も理想社会もみな空論・幻影である.だから人間は機会あるごとに,己に反って己自らが考える.王陽明と楊茂の聾唖の問答でいうならば,常に「多少の閑是非を省了」する必要がある.

諸君はこれからだんだん世の中に出て,複雑煩瑣な多忙な世の中に活動してゆかねばならない.よほどこの自主独立の信念・哲学を持たないと,いつの間にか魂は裳抜けの殻,自分というものを失ってしまって,わけのわからぬことになりやすい.よって常にこういう学問を怠らないように,この得難い縁,勝縁というものを大切にして,これを遠い道の因,ありがたき因,勝因として,そして勝果を結ぶよう絶えず心掛けていただきたいと思う.

3月 142008
 

独断と偏見で選んだ書籍を,研究室課題図書と称して,研究室の本棚に並べている.もちろん,専門書ではない.課題図書の目的は,薄っぺらい知識の獲得ではなく,人間形成にある.つまり,日本の将来を担う学生達に,自覚を促し,人間として成長しなければならないという気持ちを抱いて貰うために提供している.原則として,私が読んだ本の中から選んでいるので,相当偏っているとは思う.著者で言うと,ピーター・F・ドラッカー,デール・カーネギー,安岡正篤などである.

こんな私の我が儘を受け入れてくれる,うちの研究室というのは,なかなか懐が深い.研究室を希望してくれる学生も優秀で,見込みのある奴らばかりだ.普通,隣の家の芝生は青く見えるそうだが,そうは見えない.

そんな研究室課題図書シリーズに,英語学習教材を加えることにした.かねてより,研究室メンバーの英語力を向上させなければならないという共通認識はあったのだが,何かしらの行動をおこすところまでは至っていなかった.しかし,毎年夏に研究室旅行として海外の一流大学を訪問したり,外資系企業への就職を目指す学生が増えたりする中で,英語力の強化が不可欠であるという認識(危機感と呼ぶべきか)が学生の間にも広がってきた.

そこで,またもや独断と偏見で,英語学習教材を選定し,研究室の本棚に並べた.ここで,そのうちの2つ,アメリカ人の話す英語のアクセントを身に付けるための教材を紹介しておこう.

3月 102008
 

このブログ(および前身の独り言)をはじめ,あちこちで書いているが,研究者や技術者を育てるという観点で,大学教員としての私がなすべきことは,学生に下記のような力を身に着けてもらうことだと考えている.

  • 論理的に考える力
  • 論理的な文章を正しい日本語で書く力
  • 魅力的なプレゼンテーションを行う力
  • 英語力,および世界を意識できる力

2004年頃までは,こればかりを考え,それなりの努力をし,それなりの成果もあったと思う.卒業生の話を聞く限り,文章を書く,プレゼンをする,という点で同僚を圧倒するという話は聞いても,同僚に圧倒されるという話は聞かない.

ところが,2005年以降,自分の行動が大きく変化してきている.もちろん,研究者や技術者として,上記4項目の重要性は全く変わらない.しかし,重要なのはそれらだけではないという考えを,行動に反映させるようになった.具体的には,ドラッカーやカーネギーを読めよということから始まり,徐々に,人間として錬成することの重要性に気付くようにという方向に進んでいる.

新渡戸稲造は「武士道」の中でこう書いている.

知能ではなく品格が,頭ではなく魂が,骨折って発達させる素材として,教師によって選ばれるとき,教師の職業は聖なる性格をおびる.

「聖なる」ところまで到達できれば望外の喜びであるが,やはり,目指すべきはその方向だと感じる.そもそも,京大生なんて頭がいいのは当然で,放っておいても知識を獲得するくらいのことはできる.日本の未来を担う彼らであればこそ,知能ではなく品格が,頭ではなく魂が,大切になると思う.

実際,そういう人達が政治家や官僚になるなら,日本はもっとまともな道を歩めると思う.

3月 092008
 

大学院生および助手として過ごした数年間に,当時のボスから様々なことを学んだ.その中で繰り返し言われたことに,「レベルの低い人に腹を立てても仕方ない」というのがある.これは,生きていれば理不尽に思えることも経験するだろうが,いちいち腹を立てても自分が損するだけ,レベルの低い人に自分のレベルを合わす必要はない,もっと上を目指して,レベルの高い人間になるよう努力しなさいと,短気な私を誡めて言われたものだ.

また同時に,「レベルの高い人と交わりなさい」とも繰り返し言われた.

新渡戸稲造の「武士道」を読みながら,そのことを思い出した.

ニーチェが,「あなたの敵を誇りとすべきである,そうすれば,敵の成功はまたあなたの成功である」と言ったが,これは<サムライ>の心を代弁するものである.まさに,勇気と名誉は,平時において友となるに明らかに値する人たちだけを,私たちは戦時には敵とみとめるべきであると,ともにひとしく要求する.勇気がこの高さに達するとき,それは<仁>に近づく.

「武士道」には,ニーチェの言葉も数回引用されているが,自伝と位置づけられる「この人を見よ」しか読んでいないような私には,正直,「武士道」は読み切れない.全く情けない話だが...

もう1つ,指摘しておきたいことがある.

例えば,ジェームズ・アレンの「「原因」と「結果」の法則」や類書を読んだことがある人なら,自分の人格はもちろん,自分を取り巻く環境や事の成否はすべて自分の思いの結果であるということを知っているだろう.

人間には感覚と感情というものがある.感覚は中立であり,そこには善も悪も快も不快もない.いわば物理的刺激に過ぎない.その感覚に意味を与えているのは,その人間そのものであり,それが感情である.自身の経験や考え方が,感覚を意味づけるわけだ.

人間のレベルとは,要するに,この意味づけの仕方で決まるということではないか.心の持ちようこそ,大切であろう.

近年,このような考え方は広く普及してきているように感じる.成功哲学系のみならず,スピリチュアル系,5次元系等々.ちなみに,今読んでいる(同時に数冊読んでいるが)「ハトホルの書―アセンションした文明からのメッセージ」にも,同様のことが書いてある.この種の本は好き嫌いがハッキリ分かれると思うが,なぜ手に取ったかというと,エジプトの「死者の書」にハトホルという女神が出てきたから.まあ,ご参考までに.