3月 152008
 

知命と立命―人間学講話
安岡正篤,プレジデント社,1991

人間を支配する因果律を知る知命,それを操作して自分の運命を創造する立命.これらのために学問をする.東洋哲学に基礎を置き,青年を鼓舞する安岡正篤氏の講演録だ.本書の最初と最後の文章を引用しておこう.

「命」というのは,絶対性,必然性を表し,数学的に言うならば,「必然にして十分」という意味を持っている.自然科学は,宇宙,大自然の「命」,即ち必然的,絶対的なるものを,物の立場から研究して科学的法則を把握した.

人間も,人生そのものが一つの「命」である.それは絶対的な働きであるけれども,その中には複雑きわまりない因果関係がある.その因果関係を探って法則をつかみ,それを操縦することによって,人間は自主性を高め,クリエイティブになり得る.つまり自分で自分の「命」を生み運んでゆくことができるようになる.

我々が宿命的存在,つまり動物的,機械的存在から脱して,自分で自分の運命を創造できるか否かは,その人の学問修養次第である.

どうしても,自ら志を立てて実践するという心構えとか根本的生活態度というものを確立しないと,なにを言っても空論である.いかなる期待される人間像も理想社会もみな空論・幻影である.だから人間は機会あるごとに,己に反って己自らが考える.王陽明と楊茂の聾唖の問答でいうならば,常に「多少の閑是非を省了」する必要がある.

諸君はこれからだんだん世の中に出て,複雑煩瑣な多忙な世の中に活動してゆかねばならない.よほどこの自主独立の信念・哲学を持たないと,いつの間にか魂は裳抜けの殻,自分というものを失ってしまって,わけのわからぬことになりやすい.よって常にこういう学問を怠らないように,この得難い縁,勝縁というものを大切にして,これを遠い道の因,ありがたき因,勝因として,そして勝果を結ぶよう絶えず心掛けていただきたいと思う.

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