6月 292008
 

「いい家」が欲しい。 改訂2版
松井修三,創英社,2007

自宅の購入や建築を考えている人には,是非,一読を勧めたい.つい最近,私も自宅購入を検討しようと勉強を始めたばかりで,数十軒程度の住宅を見学し,十冊程度の本を読んだにすぎないが,本書に書かれている内容は知っておくべきだと思う.

住宅建築を手掛ける著者の信条は「住まいとは,幸せの器である.住む人の幸せを心から願えるものでなければ住まい造りに携わってはならない」とのことだ.このような信条を持つ人達が住宅建築業界や管轄省庁に多くいれば,欠陥住宅がこれほど造られることはなかっただろうにと思う.自宅の購入や建築を考えている人であれば,「いい家が欲しい!」と思っているのは間違いない.その願いを実現するためには,「構造」,「断熱の方法」,「依頼先」の三つの選択のどれか一つでも誤ってはいけないというのが松井氏の主張だ.

まず,「構造」については,四季の変化があり,高温多湿な夏と低温少湿な冬に対応しなければならない日本では,国産の木材を用いた木造軸組工法が最良の選択だとする.海外産の木材では日本の気候風土に対応できず,鉄やコンクリートでは快適な生活は実現できないというのがその理由だ.

「断熱の方法」については,外断熱(外張断熱)しかありえず,日本の気候風土に適した工法は「外断熱・二重通気(ソーラーサーキット)工法」だとされる.現在の主流である内断熱(充填断熱)は,本質的に高断熱に不向きな工法であり,仮に高断熱が実現できたとしても,壁内結露によって構造を腐らせる危険性が高い.壁内結露を防ぐには徹底的に防湿する必要がある.ところが,内壁側を防湿シートで包み込むと,まさにペットボトルハウスになってしまい,木造の良さを全く活かせなくなってしまう.注意すべきは,外断熱なら何でも良いというわけではないことだ.外断熱ブームに乗ろうと,なんちゃって外断熱を平気で施工する業者も多いらしい.また,シロアリ対策には万全を期す必要があることも指摘されている.

最後の「依頼先」の選択については,四つの相性(人と人との相性,工法とプランとの相性,予算との相性,工期との相性)を最初に確かめるべきだとされている.結局,信頼できるところを探し出すしかない.その際に,本書の精神に則った家造りを行う工務店で構成される『「いい家」をつくる会』が役立つとのことだ.

本書では,かなり厳しくハウスメーカーを批判している.悪口を見聞きするのは決して心地よいものではないが,ことが自宅建築であるのだから知らなかったでは済まされない.本書で指摘されている,ハウスメーカーの利益重視体質から来る弊害は心得ておくべきだろう.その上で,自分の責任で選択すればよい.何も勉強せずに,住宅展示場で表面(付帯設備)だけを見て,床下,壁内部,小屋裏に注意を向けない人は,価格に見合った,良質で,住み心地の良い家を手に入れられない可能性が高い.それが本書の警告だ.

本書の批判本への反論に力が入っている部分もあり,ハウスメーカーへの批判も厳しく,所々文意を読み取れない箇所もあったが,それでも本書に目を通すことを勧めたい.

目次

  • だれも,教えてくれなかった…
  • なぜ「いい家」が見えないのか?
  • 三つの選択と四つの相性
  • 最初の選択【構造を何にするか?】
  • 第二の選択【断熱の方法をどうするのか?】
  • 第三の選択【依頼先はどこにするのか?】
  • 正直な家造りとは
  • 「いい家」を造るのはだれか?

6月 282008
 

ローコスト住宅のつくり方
海野健三,彰国社,2003

様々な角度から,ローコスト住宅を実現するための方法を述べている.ローコスト住宅を目指す人もそうでない人も色々と参考になるだろう.

まず,建築を請け負う人々を締め付けて低価格を実現することも行われているが,それは持続可能なローコストではないと指摘している.他書においても,日本の住宅事情のお粗末さは散々指摘されているが,本書では,施主,設計士,建設業者すべてが納得し,良い住宅が建つような社会的な仕組みを構築していく必要があると主張している.そうしないと,結局,ローコスト住宅は日本に根付かないだろうと.

具体的なコスト削減項目としては,無駄に高価なシステムキッチンを使わないこと,家具・建具を安く作る方法,安く床暖房を設置する方法,内装をしないで構造を活かす方法,床・壁・天井の素材の選び方などが示されている.

本書で特に力説されているのは,ローコスト住宅を実現するためには,建設費だけでなく,ランニングコストやメンテナンスコストをしっかり検討する必要があるということだ.初期費用が多少高くても,メンテナンス費を抑えることができれば,数十年の中でトータルで十分にメリットがあるということだ.まあ,当然の話ではある.そんなことすら考えていない人はいないだろうと思うのだが,世間一般には考えていない人もいるのだろう.

ランニングコストを抑制するという観点で,特に紙面を割いて詳しく述べられているのが,高断熱高蓄熱の重要性だ.断熱,気密,換気,蓄熱について,その考え方が述べられている.ローコストかどうかに関係なく,ここは参考になる.

目次

  • ローコストをはじめる前に
  • ローコスト実現のための極意
  • コストをどう捉えるか
  • 高断熱高蓄熱がローコストの秘訣
  • 熱と素材をコントロールする
  • ローコストの将来形

6月 262008
 

光と風を感じる家 (LEE LIVING)
集英社,2007

個人住宅の写真集.「光と風を感じる家」というタイトルから想像できる通り,吹き抜け,大きな窓,テラス・デッキのある家ばかり.さらに,こういう個人住宅の雑誌や本に登場する家は,広々した間取りで部屋数が多くなく,たとえ2階建てでもLDKが2階にあるのが共通点のようだ.確かに,1階のLDKに大きな窓を設置するのは,セキュリティ&プライバシーの両面から問題があるように思える.

もちろん,紹介されているすべての家を素敵に感じるわけではない.個性的なので,好き嫌いが出てくるのは当然だろう.いずれにせよ,参考になるのは確かだ.

紹介されているのは建築家の設計による家ばかりなのだが,このような本を見ていると,普通の建売住宅なんて買えなくなってしまいそうだ.全く魅力を感じなくなる.

本書の最後に,「家づくりサポートシステム」の紹介がある.これは,建築家3人によるコンペを行い,そのうちの1人に自宅の設計を依頼するというもの.面談,設計,現場監理など一通り含めて,315,000円(建築家への謝礼は別途)とのこと.自分で建築家を探すのが難しいという人には良い仕組みかもしれない.

目次

  • 人が集まる快適空間,「光と風」があふれる家
  • 夢を実現させた「光と風」の湘南スタイル
  • こだわり条件をクリアして完成させた「光と風」の家
  • 「光と風」の使い方,こんな工夫
  • 家づくりの情報集

6月 212008
 

超長期予測老いるアジア―変貌する世界人口・経済地図
小峰隆夫(編),日本経済研究センター(編),日本経済新聞出版社,2007

当然ながら,将来の予測は難しい.とりわけ,数十年後の経済や社会についての予測は不確定要素が多すぎて困難であり,意識的か無意識的かは別として,嘘をつくのは容易である.本書は,そのような困難を認識した上で,比較的精度良く予測できる人口を軸として,アジアを中心とした2050年までの世界経済を展望している.

その展望の主要な結果は以下のようなものである.

  • 大きく変化する世界人口地図
  • 続々と高齢化する世界
  • 存在感を増す中国とインド
  • 1人当たり所得では先進国の優位変わらず
  • 変貌著しいアジア

これらの展望に基づいて,下記3点の我々の常識が誤りであると結論づけている.

  • 世界の中で日本において特に少子高齢化が進み,日本がその経済的・社会的影響を最も強く受ける
  • アジア経済は世界における成長センターだ
  • 日本は世界第二の経済大国だ

つまり,日本だけでなく,ASEANを含むアジアの比較的発展した国々では急速に少子高齢化が進み,経済の成長が抑えられる恐れがあるということだ.

少子高齢化と経済成長との関連性を考える際に,本書では,人口ボーナスと人口オーナスという概念を重視している.人口ボーナスとは,経済発展→所得向上→人口増加→少子化→勤労者割合増加によって,経済成長が容易になる現象である.しかし,その状態は長続きしない.少子化の結果,勤労者高齢化→勤労者割合増加と進み,経済は停滞してしまう.これが人口オーナスである.現在の日本は人口オーナス下にあり,経済成長は難しい状態にある.ところが,日本を除くアジア諸国も,既に人口ボーナスの時代を終えつつあり,間もなく人口オーナスの時代に突入する.

さて,この警鐘に対して,日本をはじめとするアジア諸国はどのような対応をするであろうか.少子化を抑止,反転させるという発想もあるが,それは人類の持続可能性を脅かすものではないだろうか.では,解はどこにあるのか.実際のところ,よくわからない.しかし,考える必要はある.

目次

  • 2050年への展望と覆される三つの常識
  • 経済が変える人口と人口が変える経済
  • 世界人口のいま
  • 急速に進むアジアの少子高齢化
  • 人口オーナス下のアジア
  • 人口減少の先行組vs.後発組
  • どうなる日本の将来
  • 人口大国の台頭
  • 未来のためのコストを担う

6月 212008
 

成長の限界―ローマ・クラブ「人類の危機」レポート」においては,技術的楽観論への批判が記されている.環境,エネルギー,資源,食料などの問題を解決するためと称して,様々な研究が行われているわけだが,この批判に耳を傾けておく必要はあるだろう.象徴的な箇所を引用しておく.

ここで技術の分析について長々と論ずる必要を感じたのは,世界モデルの結論に対する反論として,最も一般的でしかも最も危険なものは,技術的楽観論であることを知っているからである.技術は,問題の兆候を除去することはできるが,本質的な原因に作用することはできない.すべての問題に対する究極的な解決策として技術を信奉することは,最も基本的な問題−−有限なシステムにおける成長の問題−−から目をそらし,解決策として有効な行動をとることを妨げることになってしまう.

6月 212008
 

成長の限界―ローマ・クラブ「人類の危機」レポート
D.H.メドウズ,D.L.メドウズ,J.ラーンダズ,W.W.ベアランズ三世,ダイヤモンド社,1972

ローマ・クラブの「成長の限界」について聞いたことがない人,この報告書に掲載されている,西暦2100年を前に世界人口が急減することを示すグラフを見たことがない人は恐らくいないだろう.そうは言うものの,これまで私もこの報告書「成長の限界」を読んだことはなかった.ところが先日,図書館で目にとまったので,読むことにした.読むべきタイミングなのだろう.

本報告書は,人類が無為無策に傍若無人な振る舞いを地球上で続けるなら,100年もしないうちに,資源不足,環境汚染,食糧不足などを原因として,危機的状況に陥ると警告している.この警告が出されたのが1972年.それから30年以上が経ち,まさに警告通りの道を人類は歩んでいるのではないかという危機感を持つ.それと同時に,ローマ・クラブの先見の明に敬服する.

「成長の限界」において強調されているのは,幾何級数的成長という概念だ.この幾何級数的成長によって想像以上に早く人類社会の成長の限界が訪れる.その反論として,技術の進歩が問題を解決してくれるという楽観論がありうる.しかし,この報告書では,この技術的楽観主義を厳しく誡めている.革新的技術によって,資源不足,環境汚染,食糧不足などに対策が示されたとしても,問題の本質である幾何級数的成長を抑制しない限り,成長の限界は訪れる.技術革新はたかだか数十年の時間稼ぎにしかならないと.

これらの主張は,どのようにして導かれたのだろうか.この点には非常に興味をそそられるが,実は定量的なモデルに基づくシミュレーションが利用されている.世界モデルと呼ばれるこのモデルには,様々な因子・現象の間の因果関係とダイナミクス(時間的な遅れ)が考慮されている.もちろん,大胆な仮定の下での非常に荒いモデルではあるが,モデルの使用目的が明確に意識しされており,複雑に関連し合ったポジティブ・フィードバックとネガティブ・フィードバックの影響がきちんと検討されており,まさに,大規模かつ複雑な問題へのシステムズ・アプローチのお手本である.

近年,環境,エネルギー,資源,食料などの問題が深刻化しており,それに取り組む研究も多数あるが,この「成長の限界」をまとめるに至ったプロジェクトのように卓越した視点と手法によるものが,どれ程あるのだろうか.

様々な観点から,一読しておくべき報告書だと思う.

目次

  • 序論
  • 幾何級数的成長の性質
  • 幾何級数的成長の限界
  • 世界システムにおける成長
  • 技術と成長の限界
  • 均衡状態の世界
  • ローマ・クラブの見解

6月 202008
 

引き寄せの法則 エイブラハムとの対話
ジェリー・ヒックス,エスター・ヒックス,ソフトバンククリエイティブ,2007

人は,何かを強く望み,その実現を信じるならば,欲しいものを所有でき,なりたい人物になれ,したいことをできる.これは,人の思考が放つ振動が宇宙から共鳴するものを引き寄せるためである.これこそが宇宙を支配する法則,「引き寄せの法則」である.したがって,人はこの宇宙の法則を理解し,実践することによって,幸せな人生を謳歌することができる.逆に,自分が望むような人生を送っていないと感じる人は,「引き寄せの法則」を理解し,自分の思考を修正する必要がある.

以上が本書の主張する内容であり,「ザ・シークレット」(ロンダ・バーン,角川書店,2007)「宇宙を味方にしてお金に愛される法則」(ボブ・プロクター,きこ書房,2007)にも書かれている内容だ.

しかし,本書の情報源は,本書のタイトルにもある「エイブラハム」であり,著者によるエイブラハムとのチャネリングによってもたらされたものである.この点で,生理的に本書を受け付けられない人もいると思う.私は別に抵抗がないのだが...そういう意味では,「ザ・シークレット」(ロンダ・バーン,角川書店,2007)「宇宙を味方にしてお金に愛される法則」(ボブ・プロクター,きこ書房,2007)を先に読んだ方が良いだろう.

6月 192008
 

かしこく「いい家」を建てる70の方法―「まちの建築家」が本音でアドバイス
小林高志,主婦と生活社,2005

個人住宅専門の建築家である著者が,住宅建築における建築家の役割,建築家との付き合い方について,書いた本.もちろん,自宅の建築を依頼しようとする人達に向けたメッセージが中心ではあるが,建築家の果たす役割が詳しく書かれているので,建築家に依頼しない場合には,自分でどういうことをしなければならないか(何に注意が必要か)が把握できる.そういう観点から,自宅購入希望者なら誰にでも参考になる内容だ.一読しておいて損はしない.

目次

  • 得をするか損をするかはあなたの器量で決まる
    あなたは「いい家」の主になれるか
  • どんな建築家にも芸術の神さまがいる
    建築家はなにを考えているか
  • 単に設計するだけが建築家の仕事ではない
    建築家はなにをしてくれるのか
  • 建築家の見積もりチェックで工事費は下がる!
    建てたい家はいくらかかるか
  • どんな暮らしがしたいかを伝えるだけで十分
    どういう間取りが「いい家」なのか
  • アドバイスをお願いするだけの方法もある
    なんのためのリフォームなのか
  • 建てては壊す家から長寿命で健康な家へ
    これから家はどうなっていくか

6月 192008
 

間違いだらけの家選び―チラシ・看板・間取りでわかる!!
市村博,廣済堂出版,2003

建築士であり,ホームインスペクターを名乗る著者が,建売住宅や建築条件付き売り土地を購入する際の注意事項をまとめた本.

具体的な事例を示しながら,購入者が犯しやすいミスを指摘し,住宅素人であってもチェックできるし,チェックしなければならない項目が示されている.

欠陥住宅のことばかりが頭にあると,折角の住宅購入が全く楽しくなくなってしまうと思う.そういう事態を避けるためにも,最低限度の知識は身に付けて,自分で自分を守れるようにしないといけない.その上で,安心して住宅建設を進めるには,第三者による検査を受けることも有効だと感じた.住宅購入を考えている人なら,一読しておいて損はしない.

目次

  • 住んでから後悔しないための建売住宅選びの鉄則
  • 信じられないような,ホントの話
  • 良い物件には出会えるのか?実況報告,建売現場
  • 看板・チラシにだまされるな!よーく見ると???だらけ
  • 銀行も共犯者!?違反建築でも目をつぶって融資を実行
  • 販売会社の売り方の「手口」教えます
  • ここをチェックすれば大丈夫.完成現場の正しい見方

6月 192008
 

きもちのいい家
手塚貴晴,手塚由比,清流出版,2005

夫婦で建築家という手塚夫妻が,自分達が設計した家を,施主へのインタビューを中心に紹介した本.自宅の紹介も含まれている.

自宅の建設を検討するようになったので,その参考にしようと手にした.本書で紹介されている家々には,度肝を抜かれる.「こんな家あり!?」という感じだ.実際,国内外の雑誌で紹介されたり,海外から視察に来たりという,そんなレベルの家がリストには含まれる.そういう意味で,非常に参考になった.いずれの施主も大満足の様子で,「こんな家に住みたい!」という熱い想いの大切さを感じた.

著者が指摘しているとおり,便利な生活がしたくて,安い家が良いという人には普通の家が無難なのだろう.一方,拘りのある人には,建築家に依頼するのは優れた選択のようだ.

住宅建設というと,欠陥住宅が話題になるが,本書に登場するような家は縁がない.なお,著者が手掛けた住宅の最低金額は2500万円だそうだ.

本書の終わりの方で,著者がいわゆる「高気密・高断熱」について自説を展開している.そこで,目指すべきは低気密・高断熱であると述べられている.素人の私には真偽が定かでないが,低気密を目指すというのは違うのではないかと感じた.もちろん,「低気密=風通しが良い」では決してない.風通しとは窓を開けたときの状態,気密とは閉め切った状態での空気の動きを言っているのだから.非常に気持ちよさそうな家の事例を本書から学ぶとして,高気密・高断熱については,例えば,「体にいちばん快適な家づくり―高断熱・高気密の常識のウソ」(岡本康男,講談社,2004)を参考にすると良いと思う.

日本でも,代々受け継いでいけるような,もっと良い家を建てるべきだという,海外在住経験を基にした著者夫妻の意見は至極もっともに聞こえる.

目次

設計した住まいを訪ねて

  • 鎌倉山の家
  • 腰越のメガホンハウス
  • 屋根の家
  • 熱海のステップハウス
  • 軒の家
  • 空を捕まえる家III
  • 縁側の家
  • 隅切りの家

こんな家に住んでみたかった

生活をデザインする