6月 022008
 

以前,「行動経済学 経済は「感情」で動いている」に記載されていた下記問題を紹介した.解説しておこう.

問題4(アジアの病気問題;フレーミング効果)

600人が死ぬと予想されるアジアの病気を撲滅するため,2つのプログラムが考案された.どちらのプログラムを選ぶか.問Aと問Bにそれぞれ答える.

問A

  1. 200人は助かる.[72%]
  2. 確率1/3で600人助かり,確率2/3で誰も助からない.[28%]

問B

  1. 400人死ぬ.[22%]
  2. 確率1/3で誰も死なず,確率2/3で600人死ぬ.[78%]

問題中の[]内の数字は,実験において選択した人の割合を表している.

問Aと問Bを冷静に見比べてもらえば,全く同じ問いであることがわかるはずだ.実質的な内容は同じで,表現だけが異なる.ところが,選択した人の割合は反転してしまっている.この結果は,問題が表現される方法(これをフレームという)によって,人間の判断や選択が影響を受けることを示している.つまり,同じ内容の質問であっても,尋ね方によって,答えは180度反転する可能性があるということだ.これはフレーミング効果と言われる.

フレーミング効果を活用すれば,マスコミが実施する世論調査などにおいて,世論をどうにでもコントロールできてしまうというわけだ.全く恐ろしい話だ.

6月 022008
 

以前,「行動経済学 経済は「感情」で動いている」に記載されていた下記問題を紹介した.解答を示しておこう.

問題3(代表性のワナ)

4面が緑,2面が赤のサイコロがある.このサイコロを何回か振ったとき,次の3系列のうち,どれが最も生じやすいか.

  1. 緑赤緑緑緑
  2. 赤緑赤緑緑緑
  3. 赤緑緑緑緑緑

緑が4面,赤が2面なので,思わず2番目(赤緑赤緑緑緑)と答えてしまった人が多いのではないだろうか.もちろん,正解は1番目(緑赤緑緑緑)だ.1番目の系列が2番目の系列に含まれるという事実から,2番目が正解でないことは一目瞭然なのだが,間違う人も多い.この問題は,人間が「代表性のワナ」に陥りやすいことを示す例となっている.

6月 022008
 

以前,「行動経済学 経済は「感情」で動いている」に記載されていた下記問題を紹介した.解答を示しておこう.

問題2

隣家には子供が2人いるのだが,あなたはその性別を知らない.次の3つの場合について,もう1人も女の子である確率はいくらか.

  1. 隣家の奥さんに「女の子はいますか」と聞いたところ,答えは「はい」であった.
  2. 隣家の奥さんに「上の子は女の子ですか」と聞いたところ,答えは「はい」であった.
  3. 隣家の奥さんが女の子を1人連れているのを見た.

正解は順に1/3,1/2,1/2なのだそうだが,実は,まだ納得できていない.関西国際空港からパリを経由してリヨンに向かう移動中にも,悶々としていた.帰国するまでには納得したいところだ.

6月 022008
 

以前,「行動経済学 経済は「感情」で動いている」に記載されていた下記問題を紹介した.解答を示しておこう.

問題1(モンティ・ホール・ジレンマ)

ドアが3つあり,1つは「あたり」,他の2つは「はずれ」だとする.あなたは,A,B,Cの3つのドアからAを選んだが,まだ開けていない.すると,答えを知っている出題者がCのドアを開けた.もちろん,それは「はずれ」だ.ここで出題者があなたに尋ねた.「Aでいいですか?」

このとき,Aのままにすべきか,それともBにすべきか.

この問題は,アメリカの人気番組「駆け引きしよう」で実際に行われていたものを抽象化してある.そのため,原問題は,その司会者の名を取って,「モンティ・ホール・ジレンマ」と呼ばれているそうだ.私は知らなかったのだが,非常に有名な問題らしい.

この問題を世間に知らしめたのは,マリリン・ヴォス・サヴァントという女性だ.彼女が「パレード」という雑誌のコラム「マリリンに聞いてみよう」で,読者から寄せられた本問題に「変えるべき」と答えたところ,全米から抗議が殺到した.抗議した者の中には,高名な数学の研究者も含まれており,物議を醸したそうだ.

ちなみに,このマリリンはIQ228で,世界最高の知能指数の持ち主としてギネスブックにも掲載されたらしい.知能指数というのは,平均が100,標準偏差が15になるように設定されている.つまり,IQ100なら至極平均的な知能の持ち主で,IQ135以上なら上位1%に入ることになる.私も中学3年生の夏,部活動が終了し,友達と一緒に塾に入るときに,知能テストを受けて,その結果を教えてもらった.うろ覚えだが,そのときの結果が確かIQ144だったと思う.当時は,その意味を全く知らなかったのだが,およそ上位0.2%といったところだろうか.このことから,IQ228はとんでもない数字だとわかる.

さて,モンティ・ホール・ジレンマに戻ろう.正解は「変えるべき」で,マリリンは正しい.私は間違えた.なぜだか分からないという人は,「行動経済学」を読んでみよう.

6月 022008
 

行動経済学 経済は「感情」で動いている
友野典男,光文社,2006

本書を読んで痛感したのは,私はまるで確率(特にベイズルール,事前確率とか事後確率とかだと思う)を理解していないということだ.「だと思う」と書いたのは,本当に理解していないので,自分が何をわかっていないのかすらわかっていないからだ.最悪だ...

とにかく,本書に登場する問題を見てみよう.ただし,問題は簡略化してある.

問題1(モンティ・ホール・ジレンマ)

ドアが3つあり,1つは「あたり」,他の2つは「はずれ」だとする.あなたは,A,B,Cの3つのドアからAを選んだが,まだ開けていない.すると,答えを知っている出題者がCのドアを開けた.もちろん,それは「はずれ」だ.ここで出題者があなたに尋ねた.「Aでいいですか?」

このとき,Aのままにすべきか,それともBにすべきか.

問題2

隣家には子供が2人いるのだが,あなたはその性別を知らない.次の3つの場合について,もう1人も女の子である確率はいくらか.

  1. 隣家の奥さんに「女の子はいますか」と聞いたところ,答えは「はい」であった.
  2. 隣家の奥さんに「上の子は女の子ですか」と聞いたところ,答えは「はい」であった.
  3. 隣家の奥さんが女の子を1人連れているのを見た.

問題3(代表性のワナ)

4面が緑,2面が赤のサイコロがある.このサイコロを何回か振ったとき,次の3系列のうち,どれが最も生じやすいか.

  1. 緑赤緑緑緑
  2. 赤緑赤緑緑緑
  3. 赤緑緑緑緑緑

問題4(アジアの病気問題;フレーミング効果)

600人が死ぬと予想されるアジアの病気を撲滅するため,2つのプログラムが考案された.どちらのプログラムを選ぶか.問Aと問Bにそれぞれ答える.

問A

  1. 200人は助かる.
  2. 確率1/3で600人助かり,確率2/3で誰も助からない.

問B

  1. 400人死ぬ.
  2. 確率1/3で誰も死なず,確率2/3で600人死ぬ.

これらの他にも多くの問題が紹介されているのだが,私の解答は惨憺たるものだった.ただし,確率に関する問題に対して散々な結果だったものの,論理に関する問題や,他人の行動を推量して判断する問題はクリアした.

さて,このような問題に瞬時に解答し,しかも全問正答するような人がどれほどいるだろうか.そんな人間離れした超合理的人間は「経済人」(ホモ・エコノミカス)と呼ばれるが,実は,これこそが標準的な経済学が前提としている人間像だ.我々はみんな完璧に合理的で個人的利益を徹底追求し,間違いを犯すことは勿論,感情で判断や行動が鈍ることなど決してない.この前提の下に,経済学は構築され,政策決定などに利用されている.全く恐ろしい話だ...

そのような経済学に反旗を翻し,人間は必ずしも完璧ではなく,その判断や行動は感情に大きく左右されることを認めようとするのが「行動経済学」だ.本書は,これまでの数多くの研究成果を紹介しつつ,行動経済学の必要性を説く入門書だ.行動経済学では,心理学が重要な役割を担う.

非常に面白い本だった.経済学に興味がない人も読んでみる価値があると思う.自分も含めて,人間の判断がどれほど好い加減かを思い知らせてくれる.情報操作に対する防御能力も高まるかもしれない.

さて,紹介した問題の解答だが,別に書くとしよう.まずは,自力で答えて欲しい.

6月 022008
 

ベイズ統計学入門
渡部洋,福村出版,1999

ベイジアンの勉強をしようと思い立ち,入門書を探したところ,この「ベイズ統計学入門」が良さそうに見えたので読んでみた.本書の「はじめに」には,次のように書かれている.

本書はベイズ統計学,そのなかでもとくに推測理論に関する部分のための入門書として書かれたものである.(中略)高度な理論への第一歩としての入門書と,本当の初心者向けのやさしい解説書としての入門書というものがある.本書は,後者のやさしい入門書として書いたつもりである.(中略)本書をとにかく読み通していただければ,どのように複雑高度なモデルであろうとも,モデルを立てデータを集めれば,あとはベイズの定理にそのデータを組み入れるだけでよいということがおわかりいただけるものと思う.

関西国際空港からパリのシャルルドゴール空港に向かう機内で全部読んだが,確かに,「モデルを立てデータを集めれば,あとはベイズの定理にそのデータを組み入れるだけでよい」ことは理解できた.そういう意味で,著者の目的は達せられていると思う.ただ,「やさしい入門書」とは言い切れないようにも思う.前半においては,ベイズの定理や確率・統計の基礎が丁寧に説明されているので,まさに初心者向きの入門書と言えよう.しかし,ベイズ推測の本論に入ると,どんどん加速してゆく.丁寧に説明しようという意図は伝わってくるのだが,それでも,当然のように話が進んでいくところで,その展開についていけない部分がいくつかあった.もちろん,ザッと一通り目を通しただけで全てを理解しようというのが無茶なのだろうが...

例題が多く盛り込まれているところも本書の優れた点だろう.式だけ並べられても,やはり実感が湧かないというのが正直なところだ.特に初心者なら尚更だ.そういう意味で,具体的な例題は理解を助けてくれている.しかし,その例題についても,後半は飛ばし気味だ.「えっ,そこで終わり!?」と感じる箇所がいくつかあった.特に,実験計画法や回帰分析にベイズ推測を用いている最終部分において,ベイズ推測ではこうなりますという計算は示されるのだが,その結果が他の方法とどれほど違うのか,どれほど優れているのか,がよくわからなかった.頁数の制約など色々と事情があるのだと推察するが,消化不良気味だ.

一初心者の私が気になった点を指摘したが,総じてよく書けている入門書だと思う.これからベイズ統計学を勉強するなら,この本を候補の1つとして間違いないだろう.ただし,ベルヌーイ分布と正規分布に関するベイズ推測を説明する中で,これでもかというほど,次々と○○分布というのが登場し,確率密度関数,尤度,事前・事後分布などの式が現れる.数式アレルギーの人は気絶するかもしれない.覚悟して取り組む必要がある.