6月 172008
 

計測自動制御学会 制御技術部会 2008年度第1回研究会に参加した.この研究会は,計測自動制御学会 制御部門 多分解能マルチスケールシステム調査研究会が共催し,日本学術振興会第143委員会と私が代表を務めさせてもらっている日本学術振興会第143委員会ワークショップNo.27が協賛した.

研究会のテーマは,「大規模シミュレータによる非線形システムの状態推定 −気象予測からプロセス制御まで−」という魅力的なもので,下記3件の講演が行われた.

  • データ同化システムの構築と検証
    統計数理研究所 上野玄太 先生
  • 気象・気候変動予測の超大規模シミュレーションと初期値データ制御
    海洋研究開発機構 地球シミュレータセンター 高橋桂子 様
  • トラッキング・シミュレータによるプラントの運転革新
    横河電機 大谷哲也 様

「データ同化」という言葉を聞いたことがなかったため,一番目の講演にも興味津々だったのだが,要するにモデルを観測データに合わせることで,カルマンフィルタやその非線形拡張版であるアンサンブルカルマンフィルタ,粒子フィルタが紹介された.先生曰く,データ同化というのは方言とのこと.なるほど.

最も興味深かったのは,テレビなどで名前を聞くことはあっても,これまで直接話を聞く機会のなかった「地球シミュレータ」が登場する二番目の講演だ.大気と海洋,そして海面のシミュレーションをするわけだが,従来の解像度が一辺100kmの立方体であったのに対して,現在は10kmになっているとのこと.時間軸まで含めると,計算量は単純に1万倍となる.これにより,大気の渦など重要な気象現象を表現できるようになったそうだ.しかし,例えば台風を正確に模擬しようとすれば,積乱雲の発生を捉えられる必要があり,さらに解像度を上げなければならないとのことだった.

マルチスケールという観点で興味深かったのは,グーグルアース(Google Earth)に気象予測結果を載せるという計画だ.ご存じの通り,グーグルアースは世界中のどこにでもフォーカスすることができ,かつズームイン・アウト機能を持つ.それに合わせて,地球シミュレータによって予測された気象を表示させるというものだ.重要なのは,地球,日本,東京といったレベルの違いによって,使用すべきモデルが異なり,レベル間での情報の授受が必要になることだ.化学プロセスでも,プロセスシミュレーションとCFD(数値流体力学)シミュレーションを併用する技術が開発されているが,マルチスケールシミュレーションの重要性はますます認知されるだろう.

三番目のトラッキング・シミュレータは,自分の専門分野に近いこともあり,何回か聞いている内容だ.化学プロセスならではの取り組みとして,興味を持ってもらえたのではないかと思う.