6月 212008
 

超長期予測老いるアジア―変貌する世界人口・経済地図
小峰隆夫(編),日本経済研究センター(編),日本経済新聞出版社,2007

当然ながら,将来の予測は難しい.とりわけ,数十年後の経済や社会についての予測は不確定要素が多すぎて困難であり,意識的か無意識的かは別として,嘘をつくのは容易である.本書は,そのような困難を認識した上で,比較的精度良く予測できる人口を軸として,アジアを中心とした2050年までの世界経済を展望している.

その展望の主要な結果は以下のようなものである.

  • 大きく変化する世界人口地図
  • 続々と高齢化する世界
  • 存在感を増す中国とインド
  • 1人当たり所得では先進国の優位変わらず
  • 変貌著しいアジア

これらの展望に基づいて,下記3点の我々の常識が誤りであると結論づけている.

  • 世界の中で日本において特に少子高齢化が進み,日本がその経済的・社会的影響を最も強く受ける
  • アジア経済は世界における成長センターだ
  • 日本は世界第二の経済大国だ

つまり,日本だけでなく,ASEANを含むアジアの比較的発展した国々では急速に少子高齢化が進み,経済の成長が抑えられる恐れがあるということだ.

少子高齢化と経済成長との関連性を考える際に,本書では,人口ボーナスと人口オーナスという概念を重視している.人口ボーナスとは,経済発展→所得向上→人口増加→少子化→勤労者割合増加によって,経済成長が容易になる現象である.しかし,その状態は長続きしない.少子化の結果,勤労者高齢化→勤労者割合増加と進み,経済は停滞してしまう.これが人口オーナスである.現在の日本は人口オーナス下にあり,経済成長は難しい状態にある.ところが,日本を除くアジア諸国も,既に人口ボーナスの時代を終えつつあり,間もなく人口オーナスの時代に突入する.

さて,この警鐘に対して,日本をはじめとするアジア諸国はどのような対応をするであろうか.少子化を抑止,反転させるという発想もあるが,それは人類の持続可能性を脅かすものではないだろうか.では,解はどこにあるのか.実際のところ,よくわからない.しかし,考える必要はある.

目次

  • 2050年への展望と覆される三つの常識
  • 経済が変える人口と人口が変える経済
  • 世界人口のいま
  • 急速に進むアジアの少子高齢化
  • 人口オーナス下のアジア
  • 人口減少の先行組vs.後発組
  • どうなる日本の将来
  • 人口大国の台頭
  • 未来のためのコストを担う

6月 212008
 

成長の限界―ローマ・クラブ「人類の危機」レポート」においては,技術的楽観論への批判が記されている.環境,エネルギー,資源,食料などの問題を解決するためと称して,様々な研究が行われているわけだが,この批判に耳を傾けておく必要はあるだろう.象徴的な箇所を引用しておく.

ここで技術の分析について長々と論ずる必要を感じたのは,世界モデルの結論に対する反論として,最も一般的でしかも最も危険なものは,技術的楽観論であることを知っているからである.技術は,問題の兆候を除去することはできるが,本質的な原因に作用することはできない.すべての問題に対する究極的な解決策として技術を信奉することは,最も基本的な問題−−有限なシステムにおける成長の問題−−から目をそらし,解決策として有効な行動をとることを妨げることになってしまう.

6月 212008
 

成長の限界―ローマ・クラブ「人類の危機」レポート
D.H.メドウズ,D.L.メドウズ,J.ラーンダズ,W.W.ベアランズ三世,ダイヤモンド社,1972

ローマ・クラブの「成長の限界」について聞いたことがない人,この報告書に掲載されている,西暦2100年を前に世界人口が急減することを示すグラフを見たことがない人は恐らくいないだろう.そうは言うものの,これまで私もこの報告書「成長の限界」を読んだことはなかった.ところが先日,図書館で目にとまったので,読むことにした.読むべきタイミングなのだろう.

本報告書は,人類が無為無策に傍若無人な振る舞いを地球上で続けるなら,100年もしないうちに,資源不足,環境汚染,食糧不足などを原因として,危機的状況に陥ると警告している.この警告が出されたのが1972年.それから30年以上が経ち,まさに警告通りの道を人類は歩んでいるのではないかという危機感を持つ.それと同時に,ローマ・クラブの先見の明に敬服する.

「成長の限界」において強調されているのは,幾何級数的成長という概念だ.この幾何級数的成長によって想像以上に早く人類社会の成長の限界が訪れる.その反論として,技術の進歩が問題を解決してくれるという楽観論がありうる.しかし,この報告書では,この技術的楽観主義を厳しく誡めている.革新的技術によって,資源不足,環境汚染,食糧不足などに対策が示されたとしても,問題の本質である幾何級数的成長を抑制しない限り,成長の限界は訪れる.技術革新はたかだか数十年の時間稼ぎにしかならないと.

これらの主張は,どのようにして導かれたのだろうか.この点には非常に興味をそそられるが,実は定量的なモデルに基づくシミュレーションが利用されている.世界モデルと呼ばれるこのモデルには,様々な因子・現象の間の因果関係とダイナミクス(時間的な遅れ)が考慮されている.もちろん,大胆な仮定の下での非常に荒いモデルではあるが,モデルの使用目的が明確に意識しされており,複雑に関連し合ったポジティブ・フィードバックとネガティブ・フィードバックの影響がきちんと検討されており,まさに,大規模かつ複雑な問題へのシステムズ・アプローチのお手本である.

近年,環境,エネルギー,資源,食料などの問題が深刻化しており,それに取り組む研究も多数あるが,この「成長の限界」をまとめるに至ったプロジェクトのように卓越した視点と手法によるものが,どれ程あるのだろうか.

様々な観点から,一読しておくべき報告書だと思う.

目次

  • 序論
  • 幾何級数的成長の性質
  • 幾何級数的成長の限界
  • 世界システムにおける成長
  • 技術と成長の限界
  • 均衡状態の世界
  • ローマ・クラブの見解