8月 222008
 

【改訂第三版】建てる前に読む本
NPO法人家づくり援護会,作品社,2007

住宅建築に関する本は数多く出版されている.デザインを誇らしげに紹介するもの,断熱工法について自説を主張するもの,間取りについて書かれたもの,自宅建築に際して知っておくべき事項をまとめたもの,等々.本書は,そのタイトル通り,自宅を建てる前に知っておくべき事項をまとめた本である.特徴的なのは,欠陥住宅の根絶を目指して設立されたNPO法人の編集によるものという点だ.

本書では,家づくりに関する相談や支援事業を行うNPO法人「家づくり援護会」の経験に基づき,欠陥住宅が生まれる主要な原因を指摘し,その被害に遭わないために注意すべき点が解説されている.印象的なのは,契約書の内容や契約の時期,見積書のチェック方法,地盤調査の方法などが詳しく説明されている点だ.

トラブルの多くは,詳細が何も決まっていない段階で,施工業者に有利な施工請負契約書に易々と押印してしまう施主に原因があるようだ.いや,まともな施工をしない業者が悪いのは当然なのだが,それを防止することに無頓着な施主であってはならないということだ.そもそも施工請負契約は,施工内容や費用が完全に決まってから結ぶものであり,「こんな間取りで2300万円ですね」なんて段階で印鑑を押すものではない.特に,建築条件付き土地の売買で好い加減な契約が多く,その結果として深刻なトラブルも多発しているという.また,時期だけでなく,契約内容そのものにも注意すべき点が多くある.保証内容などもそうだ.

欠陥住宅の原因として決定的なのが不同沈下(土地自体が傾くこと)であるため,地盤調査についても詳述されている.スウェーデン式サウンディング試験が実は不十分であることなど,業者はそれで万全だというような説明をすることが多いだけに,「えっ,そうなの?」という指摘も多い.

結局,欠陥住宅の被害に遭わないためには,優良な施工業者に依頼するのが一番近道ということになるのだが,優良な施工業者を見付けるのは素人にとって極めて困難である.誰だって,優良な施工業者に依頼したいのだから.本書では,業者を選ぶときのポイントを示すと共に,NPO法人「家づくり援護会」が推奨する施工業者のリストを掲載している.

NPO法人「家づくり援護会」の活動についても多くの紙面が割かれており,

  • 相談事業
  • 家づくりサポート事業
  • 検査事業
  • 診断・調査・測定事業
  • 設計サポート事業

などについて書かれている.正直,将来の自宅建築を想定し,勉強を始めると,建てる気が失せる.デザインの本を見て,あれがいい,これがいいと勝手なことを妄想している間は気楽なのだが,住宅建設の品質が劣悪で,不法行為が横行し,まともに行政も機能していない日本で,まともな家を確実に建てるのは決して容易ではない.そういう観点で,本書で紹介されているような支援事業は極めて有効だと思う.

家づくりを考えているのであれば,読んでおいて損はない.強くお薦めする.

目次

  • 家づくりのトラブルを防ぐ
  • 施工業者選びで決まる家づくり
  • 第三者機関参加による家づくりの提案
  • 理想の家づくり
  • 家づくりの予備知識
  • 家づくり援護会ガイド
  • イエンゴ完成保証制度

8月 222008
 

当初は参加しない予定だったが,電気通信大学で開催されたSICE Annual Conferenceに参加した.計測自動制御学会が主催するこの会議については,2005年に「学会の国際化」,2006年に「SICE-ICCAS 2006@釜山(韓国)」と題してコメントを残している.

敢えて正直に述べるが,国際会議の1つとして評価すると,レベルが低い.国際会議は数多くあるため,限られた時間と予算を有効に使うためには,厳選された会議にのみ参加すべきであるが,その合格水準に達していない.所詮,私の偏見なので,あまり深刻に受け止めないで欲しいが...

非常に気になるのはOS(organized session)の在り方だ.OSというのは,担当者(organizer)がある特定のテーマに関するセッションを企画し,その分野の人達に論文投稿を呼びかけるものだ.OS 自体は極めて有効な企画方法であり,論文投稿を促し,議論を活発にするのにも役立つ.ところが,この度のSICE Annual ConferenceのOSを見てみると,1セッション(5〜6件の論文発表)すべてが同一の研究機関からの発表というものが複数ある.過半数が同一の研究機関からの発表というOSも含めると,その数は少なくない.担当者(organizer)も頼み込まれて断れずという事情にあるのだろうから,申し訳ないが,それでも,OSとしての体をなしていないと言う他ない.そういうセッションは,会場に発表者しかいないという状態にもなりがちだ.一体,誰の利になっているのだろうか.

実は,「SICE-ICCAS 2006@釜山(韓国)」において,同様の指摘をしている.

会議の質に関わる重要な問題点を指摘すると,セッション構成(プログラム編成)に組織化された印象が無く,寄せ集め的な雰囲気が漂っている.20以上のセッションがパラレルで行われるのだが,論文をもっと適切に分類する余地は非常に大きいと感じた.オーガナイズドセッションが主体になっているのだが,「とにかくオーガナイズしました(論文を集めてきました)」という悲壮感は漂うものの,プログラム全体を見渡して,それぞれの論文をより適切なセッションに割り振れば,全体としてより素晴らしい(発表する側にも聞く側にも有益な)会議になるだろう.

OSを含むセッション構成に関しては,今後の改善を期待したい.

他人事のように批判ばかり書いたが,もちろん,大学院生に英語での研究発表の機会を与えるとか,アジア圏の連携を強めるとか,様々なメリットがある.日本の学会が国際的に認知されるという観点からも,その意義は大きいと思う.それでも,現状のままでよいとは思えないので,今後の発展を期待したい.