8月 262008
 

京都大学大学院情報学研究科システム科学専攻への異動に伴い,加筆修正しました.
(2012年2月12日)


私が所属していた大学院(京都大学大学院工学研究科化学工学専攻)での経験をふまえて,大学院入試(修士課程または博士前期課程)を突破して,第一志望の研究室に進学するために必要な知識,というか実行すべきことをまとめておきます.工学研究科や情報学研究科など工学系の大学院であれば大抵通用すると思いますが,文系は知りません.他を探して下さい.

実行すべきこと

  • 大学院で取り組みたい研究分野を決める
  • その研究分野で最高の研究室と教員を探す
  • その研究室を訪問し,教員と面談する
  • 大学院入試の募集要項を精読する
  • 大学院入試の出題範囲,教科書,講義内容,過去問などを入手する
  • 勉強する
  • 願書は複数の大学院に出す

以下,順に説明します.

研究分野を決める

特に他大学大学院への進学を希望するような場合,4回生の夏に大学院入試があるとすると,遅くとも3回生の間に,志望する大学院を決定しておく必要があります.実は,これが非常に難しく,他大学への進学が内部進学に比べて圧倒的に少ない一因になっていると思います.というのも,大学の講義と研究は全く別物で,通常,3回生は研究について何も知らないからです.講義で顔を見掛ける教員がどのような研究をしているかを知らない学生がほとんどでしょう.4回生で研究室配属され,手取り足取り教えてもらいながら,1年かけて,ようやく研究の初歩を身に付けるというのが普通ではないでしょうか.

つまり,他大学大学院への進学を希望するなら,気合いを入れて情報収集する必要があるわけです.所属する大学の先生方には,優秀な学生に積極的に他大学大学院への進学を推奨する理由は何もありません.惰性で大学生活を送っていると,道は開けないということです.

事前に,具体的な研究テーマまで考えておく必要はありません.「こんなことがしてみたい」という希望があれば十分です.例えば,化学工学を主とする専攻を志望するのであれば,プロセスシステム工学なのか,環境なのか,反応なのか,分離なのか,生物なのか,といったところを決めておけば良いでしょう.

最高の研究室と教員を探す

大学も大学院も,学校名だけで選ぶ時代ではありません.志望する研究分野が決まったら,その分野で最高の研究室と教員を探しましょう.ここで強調しておきたいのは,日本国内から探さなければならないという制約はないということです.気合いを入れて,海外の大学も含めて探してみましょう.もちろん,種々の理由で海外には行けないという人もいるでしょう.しかし,国際的な視点で研究室を選ぶという意識が大切です.この文章を読んでいるような人は,将来,国際的に活躍する人材です.国内の大学に進むにしても,そこで国際的に活躍するための基礎力を身に付けなければなりません.それが可能な大学院に進学しなければなりません.そもそも,わざわざ他大学大学院を受験しようというのに,国際的に活躍していないような研究者のところを志望するのは意味不明です.

では,レベルの高い研究室や教員をどのように見付けるか.これが問題です.とりあえず,その研究分野のキーワードで検索して,ヒットするような研究室や教員から調査してみたらよいでしょう.世の中には研究者検索サイトもありますので,そういうサイトを活用するのもよいでしょう.

国際的に活躍している研究者であれば,その定義から明らかなように,

  • 英語論文を書いている
  • 国際会議で論文発表している

のは当然です.研究業績を見て,英語での論文発表がないような研究者は候補から外しましょう.なお,論文の数は研究の活発さを示す指標ではありますが,重要なのは研究の質ですので,数のみに目を奪われないようにしましょう.その上で,

  • 国際会議で基調講演(招待講演)をしている
  • 学会等から論文賞や技術賞などを受賞している

などの実績があれば有力候補になります.研究活動が国際的に注目されていれば,国際会議での発表を依頼されたりします.また,研究成果が非常に高く評価されたなら,授賞対象にもなるでしょう.研究者の履歴を調べてみて下さい.

なお,国際的に認知されている研究室であったとしても,学生にとって,その研究室が良い研究室かどうかはわかりません.学生を労働力としてしか考えていないような研究室には絶対に行ってはいけません.学生が国際会議で発表しているか,論文の著者に含まれているかなども確認してみるとよいでしょう.論文の第一著者がどれも教授という研究室があれば,要注意です.第一著者というのは,その論文に最も貢献した人がなるべきなのですが,それがすべて教授というのは,教授が職権を乱用している可能性があります.もちろん,スーパーマンのような教授もいるでしょうから,見極めが必要です.

例えば,化学工学を主とする専攻を志望していて,プロセスシステム工学に興味があるなら,京都大学大学院工学研究科化学工学専攻は有力候補になるでしょう.

情報系の専攻を志望しているなら,もちろん,京都大学大学院情報学研究科システム科学専攻は有力候補になるでしょう.

研究室を訪問し,教員と面談する

当然ながら,研究者として優れているのと,人間として優れているのとは,異なる概念です.研究業績だけで人物を判断してはいけません.研究室や教員の候補が決まったら,その研究室を訪問し,教員と面談しましょう.所属している学生の声にも耳を傾けるべきです.

他大学の教員に訪問を申し込むのは気が引けるかもしれませんが,全く問題ありません.訪問を嫌がるような教員であれば,学生の教育に情熱がないのでしょうから,そんな研究室は候補から外した方が無難です.ただし,国際的に活躍している研究者は,学生の想像を絶するほど多忙なものです.そんな研究者が学生一人のために時間を割くのであれば,学生は礼を尽くさなければいけません.

師事するに足る教員を見出して下さい.その出会いは,何物にも代え難い,人生の宝となるでしょう.私自身,大学院から助手にかけての時代に指導していただいた教授から多大な影響を受けました.まさに恩師であり,研究者としての現在があるのも,その先生のおかげです.

募集要項を精読する

志望する研究室が決まったら,募集要項を入手し,精読しましょう.ただし,募集要項が公開されるのは受験の数か月前でしょうから,まずは前年度の募集要項でも構いません.その場合,受験時の試験科目や評価方法が大きく変わることがないか,志望する研究室の教員に確認しましょう.募集要項には出題科目が記載されていますから,まず,これを確認しないと話になりません.例えば,英語の場合,独自の試験を実施する大学院もあれば,TOEICやTOEFLを課す大学もあります.京都大学大学院情報学研究科システム科学専攻は後者で,TOEFLまたはTOEICの得点を評価に利用しています.

教科書,講義内容,過去問などを入手する

高校の講義内容は全国共通ですが,大学の講義内容は千差万別です.教員が自分の教えたいことを教えているためです.同じ科目であっても内容が同一であるとは限りません.使用する教科書も,英語であったり,日本語であったり,様々です.当然ながら,大学院入試問題は,それぞれの大学での講義内容に基づいて作成されます.このため,受験しようとする大学院の学部での講義内容を知ることは不可欠です.

また,出題される科目の教科書を知るだけでは不十分です.教科書のどの部分が出題範囲なのかを把握しなければなりません.さらに,教科書に書かれてはいなくても,教員が説明している内容があるかもしれません.圧倒的に有利な内部進学者と戦うには,情報収集に全力を尽くす必要があります.

受験勉強の必須アイテムは,過去問です.少なくとも,過去3年分以上の過去問を入手し,勉強を始める前に目を通しておきましょう.何を勉強しなければならないかが掴めるはずです.最近は,ウェブサイトで過去問を公開している大学院も少なくありません.公開されていない場合には,大学院の事務に問い合わせてみましょう.あるいは,進学を希望する研究室の教員や学生に相談してみましょう.

勉強する

以上の準備が整ったら,後は勉強あるのみです.周囲の学生が何をしようが関係ありません.自分の人生を切り開くのは自分です.自分の選んだ道を信じて,ひたすら勉強して下さい.

願書は複数の大学院に出す

念のため,願書は複数の大学院に提出しておきましょう.京都大学大学院工学研究科化学工学専攻では,万が一落ちたときのために,とにかく東大に願書を出しておけという指導が一般的です.

おわりに

世の中には,学歴ロンダリングなんていう言葉もありますが,恐らく,自分の実力に自信がない奴の遠吠えです.無視して差し支えないでしょう.大学と大学院で異なる学校に行くのは,世界では普通です.井の中の蛙にならず,自分にとってベストの環境を求めて下さい.

補足

京都大学大学院情報学研究科システム科学専攻を目指す人へ