10月 232008
 

聖なるヴィジョン
ジェームズ・レッドフィールド,角川書店,2001

本書では,「偶然の一致」や「神秘的な体験」の意義や重要性が強調されている.偶然の一致は共時性などとも呼ばれ,必要なものや情報が必要なときに偶然手に入る,誰かのことを考えているとその人に偶然出会う,何かを成し遂げようとするときに必要な支援が偶然得られるなどの出来事を意味している.経験したことがある人も多いだろう.

ここで認識すべきことは,偶然の一致と思われているこれらの出来事は,決して偶然起こったわけではないということだ.自分の思考が空間に伝播し,宇宙に影響を与え,必要なものを引き寄せたというのが真相である.「原因と結果の法則」,「引き寄せの法則 エイブラハムとの対話」,「ザ・シークレット」,「宇宙を味方にしてお金に愛される法則」,そして聖書など,幾多もの書物に書かれている通りというわけだ.

これが真理だとすると,我々は「何を考えるか」について細心の注意を払って生きる必要がある.まさに「思考は現実化する」の通り,考えたことが現実となるからだ.否定的な,破壊的な,不安や絶望から来る思考ではなく,肯定的な,建設的な,希望や慈愛から来る思考で常に自分を満たしておく方が良い.著者は以下のような著者自身の経験を挙げている.

出版のチャンスがまったく与えられないことを,失敗であり,良くない出来事だと思い込んでいた.この思い込みが,それまでは私を導いてくれた偶然の一致を起こらなくさせていたのだった.それに気付いたとたん,私は気を引き締め,原稿にさらに手を入れて,この真理を強調することにした.(中略)二,三日すると,友人の一人が,最近ニューヨークからこの近所に引っ越して来た人物のことを話してくれた.

我々の思考がいかに強力であるかは様々な実験によって確認されている.例えば,ランドル・バード博士は,心臓病患者を2つのグループに分け,一方はボランティアから快癒の祈りを送ってもらい,一方は祈りを受けないという実験を行ったところ,祈りを受けたグループは,受けなかったグループに対して,抗生物質は20%で済み,人工呼吸器を必要としないなど病状も非常に良かったという結果を得た.さらに,祈る相手を個人的に知っている必要があること,思いが神や高次の自己とつながった感覚から来ている場合に最も効果があること,祈りが長期間に及ぶほど効果があることも示されている.

祈りのような意識的なものだけでなく,無意識の思い込みも現実に影響を与える.オーク学校で行われた実験では,無作為に選ばれた子供達の名簿が,テストで選ばれた優秀な子供達の名簿であるとして教師に渡された.その学年の終了時に,その子供達は実際に成績が良く,IQテストの結果も著しく向上した.

意識的あるいは無意識な思いの影響については,肯定的な方向だけでなく,否定的な方向にも働くことに注意しなければならない.思いによって,我々は他人を害することも,自分自身を害することもできる.

私達が無意識の思いで自分自身の現実に否定的な影響を与えることも事実である.自分の能力,外見,将来性について否定的に考えていると,その思いは私達の感じ方や実際に身に起こる出来事に,大きな影響を与えるのだ.

最も心にとめておかなければならないことは,他人に対する私達の態度や思いが,いかに大切かということである.自分も他人も肯定的にとらえ,常に意識を高め合っていれば,思いもかけぬ出来事がひもとかれてゆくのだ.

私達がすべきことは,こうしたことすべてを毎日の生活に取り込み,毎日の生き方に生かしてゆくことである.私達は知性を持ち,反応し,エネルギーが躍動する宇宙に住んでいる.そして,そこでは他の人々の期待や思いが外へと放射して,私達に影響を与えているのだ.

自分の思いや考えが現実世界に影響を与えるとすれば,感情のおもむくままに,不安や怒りにまかせて何かを思ったり考えたりすることは非常に危険である.反対に,自分の意識を自分の夢に集中し,夢が実現する様子を心に描くことができれば,それが現実になるということだ.もちろん,その夢や思考が社会や人類に害を為すものであってはならない.そのような場合には,西洋風に言えば「原因と結果の法則」,東洋思想的に言えば「カルマの法則」によって,自分に害が跳ね返ってくるだろう.

自分の思いや考えが現実世界に影響を与える.夢は現実になる.これが,「原因と結果の法則」,「引き寄せの法則」,「ザ・シークレット」など様々な呼び方をされている宇宙の法則であり,より良い人生を送るために我々が知っておくべき事柄である.

そして,自分の思いや考えが現実世界に影響を与えるのは,我々がエネルギーのみからなる世界に存在しており,我々の思考は特定の波長を持ったエネルギーであり,同じ波長のエネルギーは共鳴するためである.「引き寄せの法則 エイブラハムとの対話」や「ハトホルの書―アセンションした文明からのメッセージ」に書かれている通りである.我々は物質世界に生きているが,アインシュタイン博士がE=mc2という公式を発見した通り,物質はエネルギーの一形態である.

この法則に納得するのであれば,我々は日々の人間関係を根本的に見直す必要に迫られるだろう.自分自身に対して肯定的なイメージを持ち続けているか.不安や恐怖を抱いていないか.それらは現実化する.家族に対して,彼らに勇気や希望を与えるような肯定的なイメージを持ち続けているか.欠点ばかりを指摘し,不平や不満で自分の心を満たしてしまっていないか.それらは現実化する.学校で,職場で,その他あらゆる場所で,あらゆる人に,肯定的なイメージを持ち続けているか.各人が持つ素晴らしい能力を信じているか.誰かに害を為すような思いを心に抱いていないか.それらは現実化する.そして,良いことも悪いことも,すべては自分自身に跳ね返ってくる.

特に,親が子供に接する際の思考や態度は決定的に重要である.自分の子供は,とても良い子であり,優れた能力に恵まれ,考え得るすべての長所を持っていると信じているか.欠点ばかりに意識を合わせていないか.それらは現実化する.

大切なことは,物事の基本にあるエネルギーの動きを忘れないことだ.子供が規則を無視したり,不注意に飛び出したりする時は,彼らを止め,しかりながら,同時に子供の顔の中の天才の部分に焦点をあてて,彼らの意識を高めてやればいいのである.私達が望んでいるのは,お前のやったことは良くないが,お前はよい子だ,というメッセージを伝えることなのである.

ここで言えることは,子供の将来について直観的に何か感じたとしても,すぐに結論を出したり,自己満足的な予言をしたりしてはいけないということなのだ.そんなことをすれば,未来に対する子供の責任を奪い去ることになってしまう.子供の未来は親の直観よりも常に幅が広く,共時的なものなのだ.私達にできることは,自分の気持ちをやさしく話し,子供達が何をしているか確かめたい気持ちや,彼らが行きづまると手助けしたくなる気持ちを抑えることだけである.子供達が自分の責任で犯した間違いは,多くの場合,彼らの人生にとって,とても重要な学びを与えてくれるものなのである.

悪いのは,自分の尊厳や社会的地位の決定要因として,子供を利用する親である.リトルリーグや子供美人コンテストに夢中になっている親がその良い例である.一番大切なことは,親が古いものにとらわれず,自分自身の真実を発見し続けてゆくことなのである.子供が私達のもとに生まれたのは,私達の人生を観察するためであり,そうすることによって,親の成長から学び,自らを成長させてゆくためなのである.

子供に対しては,大切なことはエネルギーを与え,過剰な介入を避けて正直に導き,私達が本当は何者なのかを学ばせることである.そうすれば,子供からはその対価として,豊かな共時性が私達に送り返されるであろう.愛とエネルギーを相手に注げば注ぐほど,共時的なメッセージがすぐにやって来るようになり,私達の人生はより創造力に満ち,実り豊かで胸の躍るものになる.

本書は,人間の霊性に焦点を合わせて書かれており,輪廻転生や臨死体験などについても触れている.もちろん,神という存在も頻繁に登場する.こういうものに拒絶反応を示す,あるいは嫌悪感を抱く人もいるだろう.正直,それでも構わないと思う.

ただ,本書に書かれていること,いや,様々な人々が様々な形で主張している本質的には同じことを,自分の生活に取り入れることに何かデメリットはあるだろうか.自分自身の夢に焦点を合わせ,それが実現できると信じ,不安や恐怖感に惑わされず,自分も含めて誰もが大切な使命を持ってこの世界に生まれてきたと考え,家族や友人,その他自分と関わる人すべてに肯定的なイメージを持ち,彼らの幸福を願い,そのような自分の思いが現実化することを信じ,偶然の一致を活かすことを意識して日々の生活を送るようにしてみたとしよう.それで,何か失うものがあるだろうか.失うものがないのであれば,実践しない理由があるだろうか.

目次

  • 気づきの始まり
  • 偶然の一致
  • 私達は今,どこにいるのか?
  • 呼応する宇宙
  • 権力闘争の克服
  • 神秘体験
  • 本当の自分を見付ける
  • 意識的な進化
  • 新たな人間関係を生きる
  • 新しい文化への移行
  • 死後の世界からの展望
  • 人間の運命

  4 Responses to “聖なるヴィジョン”

  1. こんばんは。
    「信念の魔術」(C.M.ブリストル)も、面白いですよ。

    自分が強い信念を持って臨み、行動すれば、必ず実現する。
    これもまさに宇宙の法則ですよね。

  2. ruruさんのご推薦は,「信念の魔術」ですか.まだ読んでいませんので,早速,図書館にて借りてみようと思います.

    米国からの帰国者に対して,大学から,自宅待機(就業禁止)命令が発令されました.これから1週間,研究室には行けません.じゃあ,図書館に行っていいのかという問題は残ります...

  3. おかえりなさいませ。
    就業禁止令。。。あららら、それは大変ですね。

    自宅待機(一週間のお休み?)は、パパ大好きなおちびさん達が引き寄せたのかもしれませんね。
    たまにはのんびりして、日頃の疲れを癒してくださいね。

  4. 確かに,子供達が引き寄せたのかもしれませんね.
    帰国後の数日間は,朝から晩まで子供達と一緒に存分に遊びました.
    物凄く久しぶりです.

    金曜日から大学に復帰し,来週からは日常生活に戻ります.

    6月に学会でポーランドに行く予定ですが,ここも1人感染が確認されているので,帰国後1週間自宅待機の可能性があります.早期の終息を願います.

 Leave a Reply

You may use these HTML tags and attributes: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>