2月 082009
 

世間一般にとってはどうでもよいことかもしれないが,大学の在り方が国家の将来に及ぼす影響は計り知れないので,本当は気にしておく必要がある.教育基本法変更なども同様.政治に無関心だと,後で泣きを見ることになりかねないので要注意だ.

さて,私の現在の肩書き(役職)は「准教授」である.2007年4月1日に施行された「学校教育法の一部を改正する法律」によって,それまでの肩書きだった「助教授」の職階が廃止されたため,自動的に新たに設置された「准教授」となった.

当然,名称変更だけではなく,職務も変更されている.助教授と准教授の違いを知るためには,その定義を見てみるのが一番良い.かつての学校教育法では,教授,助教授,助手は次のように定められていた.

学校教育法

第58条 大学には学長、教授、助教授、助手及び事務職員を置かなければならない。

6 教授は、学生を教授し、その研究を指導し、又は研究に従事する。

7 助教授は、教授の職務を助ける。

8 助手は、教授及び助教授の職務を助ける。

要するに,助教授は教授の補佐役ということだ.これが何を意味するか,極端な例を挙げるとわかりやすい.「おい,××の研究なんてするな.私が大好きな○○の研究だけやっていればいいんだよ.私は○○にしか興味ないのだから.××の研究がしたいなら・・・」ということが法律で容認されていたわけだ.無茶苦茶な例ではあるが,実際,これを読んで顔がひきつる人もいるのではないかと思ってしまう...

一方,現行の学校教育法では,教授,准教授,助教,助手は次のように定められている.

学校教育法

第92条 大学には、学長、教授、准教授、助教、助手及び事務職員を置かなければならない。ただし、教育研究上の組織編制として適切と認められる場合には、准教授、助教又は助手を置かないことができる。

6 教授は、専攻分野について、教育上、研究上又は実務上の特に優れた知識、能力及び実績を有する者であつて、学生を教授し、その研究を指導し、又は研究に従事する。

7 准教授は、専攻分野について、教育上、研究上又は実務上の優れた知識、能力及び実績を有する者であつて、学生を教授し、その研究を指導し、又は研究に従事する。

8 助教は、専攻分野について、教育上、研究上又は実務上の知識及び能力を有する者であつて、学生を教授し、その研究を指導し、又は研究に従事する。

9 助手は、その所属する組織における教育研究の円滑な実施に必要な業務に従事する。

助教授と准教授の違いは明確だろう.助教授が教授の補佐役だったのに対して,准教授は職務に関して教授と対等である.教授と准教授の違いは,知識,能力及び実績が「特に」優れているか否かだけだ.ようやく,国際標準に法律が追いついてきたと言えるだろう.しかし,組織文化が一朝一夕に変わるはずはなく,名称変更のみで実態は旧態依然というところも多いのではないだろうか.

私が所属する組織においても,准教授は独立した研究室を持てない,学生を実質的に指導はしても公式な指導教員にはなれない,などの制約がある.これらは法律で定められているわけではなく,各組織の教授が決めることだ.

なお,教授,准教授,助教を無分別に独立させればよいというものではない.研究の独立性を保証することは重要だが,学生の研究指導を教員1名のみが行えば(他の教員が全く意見を言わないならば),視野が狭くなる恐れがある.例えば,私が学生と共に取り組む研究すべてを教授が完全に理解できるわけがないし,その必要もないが,研究室全体で実施するゼミでのコメントは大変貴重である.気付きを得られる.バラバラに研究していたのでは得られない効果だ.研究室運営に必要な事務作業も,個々に処理していたのでは効率が悪すぎて,肝心の教育や研究が疎かになるのは自明だ.教育と研究の効果を最大限に高めるために,見直すべきことは山ほどあるはずだが,現在の大学は目先の競争的資金の獲得に明け暮れている.

改めて振り返ってみると,自分は助手や助教授としての職務を全うしていなかったのではないかと思う.自分の好きな研究を好きなようにさせてもらってきたので...本当にありがたい.

 Leave a Reply

You may use these HTML tags and attributes: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>