国境なき医師団によって,毎年,「10の最も深刻な人道的危機」リストが発表されている.
「10の最も深刻な人道的危機」は,スーダン南部に広がっていた飢餓がまったく国際的な注目を集めず見過ごされている状況に警鐘を鳴らすため,国境なき医師団が1998年に「10の最も報じられなかった人道的危機」というリストを発表したことに遡る.それ以降10年にわたって,毎年,深刻な10の人道的危機の選定と発表が続けてられてきた.
2008年の「10の最も深刻な人道的危機」は以下の通り.
- イラク:攻撃の的となる援助と人材不足で阻まれる医療援助
- エチオピア:戦闘が人道援助を遮断
- コンゴ民主共和国:東部で戦闘が激化
- ジンバブエ:インフレ率2億3100万%
- スーダン:ダルフール地方と南部地域の避難民
- ソマリア:壊滅的人道状況に追い打ち
- パキスタン:北西部の武力衝突激化
- ミャンマー:大災害への注目の陰で依然放置される医療上の危機
- HIV/結核:増加する二重感染患者に不足する対策
- 子どもの栄養失調:進歩する栄養治療
興味があれば,国境なき医師団(MSF)のウェブサイトで内容を確認してもらいたい.
これらが本当に深刻な問題であることは疑う余地もないが,いずれも遠い他国のことで,日本は平和で豊かで幸せだねと言っていられなくなってきたなと憂鬱になる.日本社会において貧困問題がいかに深刻化しているかは,「「生きづらさ」について」(萱野稔人,雨宮処凛,光文社,2008)にも書かれている.貧困問題に取り組んでいる雨宮処凛氏と哲学者である萱野稔人氏の対談をまとめたものだ.
「「生きづらさ」について」を読んだ後,たまたまNHKのテレビ番組「そのとき歴史が動いた」を見ていると,マーティン・ルーサー・キング・ジュニア(Martin Luther King, Jr)のアフリカ系アメリカ人公民権運動を取り上げていた.マルコムXとは対照的に,非暴力抵抗運動によって人種差別撤廃を勝ち取ろうとしたのがキング牧師である.
この番組で,あまりに酷い人種差別の実態が映し出されていたのだが,日本人はこれを他人事として片付けられるのだろうかと,ふと疑問に感じた.働く意志はあっても働く機会を与えられない人達,働いても生活できない人達,そのような人達を意図的に作り出す政策を推し進める政治家達,そしてそれを求める財界人達.日本人は他国の人種差別を侮蔑できる立場にあるのだろうか.
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