3月 192009
 

3月18-20日の3日間,横浜国立大学にて化学工学会年会が開催されている.初日の先端化学産業シンポジウムにおいて,「世界経済の構造変化と日本の対応」と題して,野口教授(ノースアジア大学)の講演があった.明らかに講演慣れされており,きちっと笑いを組み込みながら,主張すべき点は強調し,上手な講演で感心した.内容も面白かったので,以下に,覚えているポイントをメモしておこう.

  • 世界経済の問題はサブプライムローンではない.サブプライムローンそのものの損失額は,たかがしれている.問題は,CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)というMITが開発した信用創造のための詐術(こうは言っておられなかったが,私は詐術だと思っている)の破綻である.CDSによる損失が連鎖的に生じると,世界のGDPを上回る損失が出て,世界経済は崩壊する.回避策は,金融機関への公的資金注入や国有化による破綻阻止しかない.
  • 日本の内需拡大を求める声があるが,実態を誤解している.2006年の輸出対GDP比を調べると,日本の14.8%に対して,米国7.9%,英国18.7%,ドイツ38.7%,中国36.6%,韓国36.7%である.日本の外需依存度は低い.世界経済が後退し,貿易が減少すると,ドイツ,中国,韓国などは大きなダメージを受けることになる.日本の比ではない.
  • 世界的に見て,日本の金融システムは頑強である.金融機関のトップはダメだが.結果的に,ゼロ金利政策をとる米国のドルをはじめ,今後輸出の落ち込みで経済が冷え込むであろうドイツなどEUのユーロ,それに新興国の通貨は対円で大幅に安くなるだろう.円は1ドル80円程度が予想される.オーバーシュートがあれば,50円台があってもおかしくはない.韓国はデフォルトに近く,前回の通貨危機と同じ状況になっている.ウォンはさらに下落するだろう.
  • 世界の金融機関を助けられるのは日本の金融機関であり,増資を引き受けるなどすることになる.しかし,金融システムは頑強だが,金融機関の経営は軟弱なので,離れを貸して母屋を取られる状態になると予想される.
  • 1980〜90年代には,日本の技術タダ乗りが欧米から非難されたが,1990年代後半から,日本の対欧米技術貿易は輸出超過に転換している.つまり,特許収支は黒字であり,日本の技術を欧米が活用している状態にある.世界シェア80%以上,さらには100%という凄い技術力を持つ企業が多くあるのが日本の強みである.ものづくり力のある,つまり実体のある日本経済は本質的に強く,この不況から最も早く回復する可能性がある.
  • 日本の英語教育は素晴らしい.文部(科学)省の英語教育政策は絶賛できる.今回ノーベル賞を受賞した日本人の多くが日本にいた.それは,英語ができないからである.もし英語ができたなら,海外に行っていた可能性が高い.つまり,人材流出・頭脳流出を阻止するために,英語が聞けるようにも話せるようにもしてこなかったのである.実に戦略的だ.加えて,インターネットが情報源となる現代においては,英語を読めることが非常に重要である.したがって,ヒアリングやスピーキングは放置し,英文法に拘り,実に些細なことを教え込んできた英語教育は正しい.
  • 今年に入ってから,マスコミの世界経済に対する論調に変化が見られる.危機を煽らなくなった.これは,危機を煽ると広告収入が減少することに,ようやく気付いたからである.

  2 Responses to “世界経済と日本の話”

  1. 先生、質問です。
    о日本の英語教育は素晴らしい。の項
    これは本気のお話なのですか?シニカルなお話ですよね。
    こういう視点で英語教育を考えた事あらへんかったので、
    面白くて、ひょっとすると、まんまと野口教授の術中にはまったんかいなと感じてますが…。

  2. もちろん,「笑い」の部分ですが,そこまで考えて英語教育政策を立案していたとしたら,凄いですね.脱帽です.

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