3月 232009
 

問題解決の心理学―人間の時代への発想
安西祐一郎,中央公論社,1985

人間はどのようにして問題を解決しているのか.この問いに答えようとしているのが本書である.問題解決のメカニズムがわかれば,より良く問題解決を行うための手掛かりが得られるはずである.そういう意味で,本書は重要な示唆を読者に与えてくれる.

問題解決のためには,断片的な知識を持っているだけでは不十分である.そのような知識は,自分の経験と結びついていないために,自分にとっての意味を持っていない.このため,実際に問題解決に利用することを通して知識に意味づけし,問題解決のための知識へと変化させる必要がある.

人間は経験的に知識を身につけていくことができる.問題解決者としての人間が,知識の獲得を基本的な機能として容易に用いることができるのは,私たちがいつも「何かのために」知識を獲得しようとしているからである.何かの目的を果たそうとする限り,我々はその目的に向けて問題を理解し,解き,吟味して,目的を果たすのにできる限り役立つような形で新しい知識を身につけようとする.その結果,得られる知識は先々の問題解決のために役立つ,「生きた」知識となりうる.

つまり,問題解決にとって重要なのは,目的である.

未来の行く先を自由に決められること,これが問題解決者としての私たち人間をユニークな存在にしている最大の特質なのだ.(中略)

ある目標の達成に向けて,私たちは自分の心理的能力をフルに発揮することができる.

ところが,右に言ったように,その目標自体を自分で自由に決められるとしたらどうだろう.もしそうだとしたら,私たちの問題解決能力は,信じられないくらいのひろがりを持つことになる.(中略)

しかも,新たな目標は,ある目標に向かった問題解決のプロセスの中から生まれてくる.その意味では,目標は目標を生んでゆく.これは目的とか願望とかいうことばを使っても同じことだ.つまり,「何のために」が「何のために」を生み出してゆくわけだ.

まとめて言えば,「何のために」を無限に問いながら,その問いを問い続け,また答え続けるために,多くの素晴らしい心理的能力をシステマティックに発揮してゆける−それが,問題解決者としての私たち人間なのだと言うことができよう.

本書は,このように締めくくられている.

問題解決者としての人間が持っている機能的特徴を明らかにするために,様々な心理学的実験の結果が紹介されている.それぞれが非常に興味深く,自分についての気付きを与えてくれる.

目次

  • 問題解決の時代
  • 問題解決者としての人間像
  • 記憶とイメージ
  • 思考
  • 問題を理解すること
  • 問題を解くこと
  • 行うことと吟味すること
  • 問題解決システムとしての人間とコンピュータ
  • 「何のため」の心理学に向けて