3月 302009
 

昔から,大学の講義はろくなものではないと言われてきた.やる気のない教授が原因だ.最近では,FD(Faculty Development,大学教員の教育能力向上)が叫ばれている.しかし今,二流教員が御祓箱(おはらいばこ)になる日が近付いてきている.

世界一流の講義を「YouTube EDU」で検索,閲覧できるからだ.

「あの先生の講義に出るくらいなら,TouTube見てた方がよくない?」

「だよね!」

ということだ.講義に出てきた学生がノートパソコンで「YouTube EDU」を見ているかもしれない.もしそうだとしたら,学生を批判する前に,自分の講義を見直そう.

YouTube、全米大学の講義ビデオを集めた「YouTube EDU」を開設

Google傘下のビデオ共有サービス「YouTube」は米国時間2009年3月26日、サイト内に全米の大学の動画コンテンツを集めたサイト「YouTube EDU」を開設した。講義の録画や学校紹介など、各大学が公式に投稿した多量の動画を閲覧/検索できるようにしている。

マサチューセッツ工科大学、イェール大学、スタンフォード大学など、全米の100以上の大学の講義チャンネルの動画を1つのサイトに集約した。大学別の動画一覧や、再生回数が多い動画、チャンネル登録が多い動画を検索できるほか、同サイト内だけを対象とする検索も可能である。

日経BP社,2009年3月30日)

えっ,「YouTube EDU」は英語だから,日本語しかできない学生には日本語のできる教員が必要だって? 確かにその通り.素晴らしいニッチ戦略だ.言葉の壁は,関税障壁なんかよりも遙かに高い.

しかし,日本国内でも二流教員はうかうかしていられない.いまや,多くの大学でオープンコースウェアとして講義が公開されている.オープンコースウェアは,元々,マサチューセッツ工科大学(MIT)が始めたものだが,確実に広がりつつある.さらに,大学によっては,講義資料の公開のみならず,講義そのものを配信しつつある.例えば,Podcastでの配信がそうだ.iPodがあれば,誰でも無料で講義を受けられる.

当然ながら,京都大学もオープンコースウェアに取り組んでいる.2008年には,Google傘下のYouTubeとコンテンツパートナーシップを結び,「YouTube 京都大学オープンコースウェア」を公開した.YouTubeとの提携は,国立大学としては日本で最初だったらしい.なかなか,やるじゃん.

えっ,いまどきの出来の悪い学生は自分でオープンコースウェアなんて見に行かないって? 確かにその通りかも.世の中のニーズは多様ってことか.まだまだ,二流教員にも活路はあるかな.

さて,今後,日本の大学教育はどのようになるのか.英語で講義をやれという圧力が強まりつつあるが,英語の下手な教員が英語の分からない学生に英語で講義をするのは大変に決まってる.自分で講義なんてしないで,代わりに「YouTube EDU」を学生に見せるなんてことになるかもね.

  4 Responses to “YouTubeで二流教員は御祓箱”

  1. yoshikです。
    ボクはまた別の見方をしています。
    これをきっかけに超天才児が生まれてくるのではないかと思います。
    英語さえできれば、たとえ11歳の子供でさえ、
    StanfordやMITの講義を見て、勉強することができます。
    社会人や勉強・研究(やバイトや合コン)に忙しい学生より
    時間のある初等教育課程の児童は趣味感覚でMITやIITの講義を聴いて、
    分からない部分は大人に聞いたり自分で調べたり。
    過去30年、中学の数学の先生は、生徒から「高校への数学」や「大学への数学」の
    学力コンテストの質問をされたらどうしようかと恐怖していたでしょうが、
    これから20年は、MITの線形代数の講義について質問されるでしょう。
    うはは。

    やはりここで自分の子供に無理やりでも英語を学ばせる価値があるなと
    思ってしまいます。

    ということを、息子(1歳8ヶ月)とMITの線形代数の講義を拝聴しながら、
    考えておりました。

    一方で、加納先生の講義ならPODCASTで受信したいです。
    いつ配信してくださるのでしょうか。。。

  2. 5年以内に状況が大きく変わるとは考えていませんが,インターネットが社会の在り方を大きく変えたように,講義の動画配信が与える影響には注意しておく必要がありますね.自分の付加価値を高めるのに,どのように活用できるか,興味津々です.狙いが定まったら,Podcastingするかもしれません.大学のOCWを活用するかどうかも,メリット・デメリットを見極めてということになります.

    「電通の鬼十則」
    2. 仕事とは,先手先手と働き掛けていくことで,受け身でやるものではない.
    6. 周囲を引きずり回せ,引きずるのと引きずられるのとでは,永い間に天地のひらきができる.

    いずれにせよ,日本にいながらにして,いや自宅にいながらにして,世界最高峰の講義が聴けるようになりつつあるわけですから,素晴らしいですね.

  3. はじめての投稿になります。高校の同級生です、おひさしぶりです。
    私も大学の関係者ですが、楽をしたいと思えば、楽ができてしまう日
    本の大学の現状というのは、どうなのかな?と思うところがあります。

    しかしPodcastingができたら、日本の大学はかわるかもしれませんね。

  4. 超久しぶりです.詳細はメールにて!

    教員も職員も公務員みたいなものですから,「楽をしたいと思えば楽ができてしまう」というのは,おおよそその通りだろうと思います.しかし,「楽をしたら罰せられる」という仕組みは絶対にダメだと思います.というのは,楽をしているかしていないかを判断する方法がないからです.研究成果が出ない人を「楽をしてる」と断じられるか.極めて独創的な凄い研究で,頑張っても結果が出ないのかもしれません.評価する能力もないのに研究成果を評価するなんて傲慢なことをすれば,くだらない論文の量産という事態を生むでしょう.誰もが凄い研究成果を出すなんて無理な話ですから.理系と文系では全く事情が違うとも思いますが...

    どうでしょう.教職員の採用者に問題があるのかもしれません.人を見る眼がないという意味で.あるいは,採用システムに.いずれにせよ,私の周りのことで言えば,「もうちょっと楽しないと死ぬんじゃない?」という人が多いような気がします...

 Leave a Reply

You may use these HTML tags and attributes: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>