4月 172009
 

今年も,大学1回生配当の「基礎情報処理演習」という演習科目を担当している.一人一台コンピュータを使う演習科目で,コンピュータリテラシーを身に付けることを目的としている.最初は教育用計算機システムの電源オン・オフから始め,メールの使い方,情報検索,UNIXのファイルシステムやシェル,TeX,HTMLとCSS,さらには各種ソフトウェアの利用へと進んでいく.

今週,メールの使い方を演習した機会に,受講生へメッセージを送信した.対象は,私が担当するクラスの学生120名だ.毎年,同様のメッセージを新入生に送っている.全く新しい環境で,これからの人生の基盤を構築していく若者に,志を持って,有意義な学生生活を送って欲しいためだ.伝えたいことが毎年変わるはずもないので,似たような内容になるが,受け取る学生にとっては一生に一回のことなので,役立つかもしれない.今年,新入生に送付したメッセージを記載しておこう.

過去のメッセージは,2005年4月「新入生へのメッセージ:理想を思い描いて,実行しよう」,2007年4月「新入生へのメッセージ:すべては自分の未来のために」にある.

新入生へのメッセージ

大学に入学した今,自分の将来について一度じっくりと考えてみると良いでしょう.30歳,40歳になったとき,自分はどんなことをしているのか想像して下さい.どんなことをしていたいか理想を思い描いてみて下さい.そして,数十年後,理想的な自分になっているために,今から実行しなければならないことをリストアップしてみて下さい.それを実行して下さい.これだけで,ボケーッと大学生活を過ごすことなんてできなくなるでしょう.君達の将来は,君達が今していることの積み重ねで決まるんです.それ以外の何物でも決まりません.

補足

環境で自分の人生が決まるのではなく,自分が環境を決めているということについては,「「原因」と「結果」の法則」(ジェームズ・アレン,サンマーク出版,2003)が参考になるでしょう.有名な本です.もっと手軽に読める本としては,いわゆる引き寄せ系の本があります.例えば,「引き寄せの法則 エイブラハムとの対話」(ジェリー・ヒックス,エスター・ヒックス,ソフトバンククリエイティブ,2007)「ザ・シークレット」(ロンダ・バーン,角川書店,2007)など.

そんな先のことは分からないよ,というのが本音かもしれません.でもね,問題を先送りにすることで,幸せな未来が訪れると思いますか.残念ながら,そんなに世の中は甘くないですよ.

では,もっと近い未来のことを考えてみましょう.数年後には,大学院入試や就職試験が待っています.実力がなければ,良い研究室で好きな研究をする権利は与えられません.好きな企業にも就職できません.やりたい仕事もさせてもらえません.例えば,必修科目の成績が悪ければ,行きたいコースに行けません.大学院入試の成績が悪ければ,行きたい研究室に行けません.勉強がすべてではありませんし,試験がすべてでもありませんが,それでも,結果で勝負するしかないこともあるのです.

手遅れになってからでは遅いんです.健闘を祈っています,

もう一つ.京都大学なんて,極東のマイナーな大学の1つにすぎないことを自覚して下さい.平均的な京大生というのは,世界レベルでは,所詮2流でしかないでしょう.目を海外へ向けてみましょう.自分の未来をちっぽけな島国の中に閉じこめておく必要なんてありません.

20世紀最高の知識人とも評されるドラッカーの言葉を紹介しておきましょう.若い日本人に向けた言葉です.

日本の若い世代の人達には,20代から遅くとも30代前半のうちに,少なくとも2〜3年は日本を離れて,他国で働く経験を積むことをお勧めしたいと思います.情報が高度に専門化し,ごく限られた領域だけを守備範囲とするスペシャリストが増えている世の中で,日本人は若者を他分野にまたがる知識や技術を持ったゼネラリストに育てる術に長けています.それにもかかわらず,私が接してきた日本人の中には,視野が狭く,「世界について十分な知識が備わっていない」と感じさせる人が多数存在しました.海外経験の少なさがその原因です.学ぶべき課題は日本の外にいてこそ得られます.ぜひとも国外に出て行って,視野を大いに広げて欲しい.知識社会が招来する新しい時代においても,日本が世界のメインパワーであり続けるための原動力になってほしいと願っています.

「ドラッカーの遺言」(P.F. ドラッカー,講談社,2006)

補足

成果をあげるために何が必要かを考えるなら,「経営者の条件」(P.F.ドラッカー,ダイヤモンド社,2006)「プロフェッショナルの条件―いかに成果をあげ,成長するか」(ピーター・F. ドラッカー,ダイヤモンド社,2000)を読むとよいでしょう.必ず得るものがあるはずです.

補足として,いくつか本を紹介しましたが,寸暇を惜しんで本を読むことを勧めます.教養のない,人間的な魅力のない,自慢は一流大学を卒業したことだけという,そんな人間にはならないで下さい.

近代日本の礎を築いた志士を数多く育てながら30歳にして刑死した吉田松陰は,年500冊を読破していたそうです.現在でも,各界にて重責を担うような人達は総じて寸暇を惜しんで読書をしているものです.是非良書を読み,立派な人物になって下さい.みな極めて優秀であり,それなりの地位に付くべき人材であり,それ故に社会的な責任(noblesse oblige)を負うことを自覚して下さい.

補足

人間的に成長するという観点からは,「青年の大成―青年は是の如く」(安岡正篤,致知出版社,2002)「人を動かす」(デール・カーネギー,創元社,1999)などが参考になると思います.

初回講義でも述べましたが,体育会でもサークルでもNGOでも何でも良いので,工業化学科以外に,できれば京大以外に人脈を作れるような活動をすると良いと思います.講義室と自宅の往復だけで大学生活を終わらせるなんて馬鹿な真似はしないように.

最後に,アルバイトについて.学費が必要とか,多少の遊ぶお金が必要とかでアルバイトをするのは良いことです.社会勉強にもなるでしょう.でも,過度に時間を費やさないように.せいぜい時給数千円程度でしょ.そんな金額,大学在学中に実力を付けて,卒業後に稼いだら,誤差みたいなものです.たかだか数十万円程度のために,アルバイトで貴重な時間を無駄にして,将来悔いることのないように.

勉強,遊び,アルバイト.自分の将来を思い描き,最適なバランスを実践して下さい.

ちなみに,上記は私の意見です.これが正しいというわけではありません.他人の話を鵜呑みにするのではなく,間違っていても構わないので,まずは自分の意見を持つようにして下さい.そのためには,教養を身に付ける必要があるし,普段から様々なことを考えるようにもしなければならないでしょう.

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