4月 202009
 

人を伸ばす力―内発と自律のすすめ
エドワード・L. デシ,リチャード・フラスト,新曜社,1999

最近読んだ本の中で,もっとも多くの気付きを得られたように思う.子供,生徒,部下,さらには自分自身であってもよい.人を育てるという問題に興味があるのであれば,是非一度読んでみて欲しい.いかに我々が間違ったことを当然と思い込んでいるかに愕然とさせられる.

本書の内容については,既に何度か紹介してきた.

人を育てるというとき,そのあるべき姿として,我々は,自分で設定した目標の実現に向けて自発的に努力できるような人を思い描くのではないだろうか.人がそのようになるためには,何が必要なのだろうか.本書は,このような問いに答えてくれる.

人が内発的に動機づけられるためには,望ましい結果を得るための活動(例えば勉強や運動)に対して有能感を感じる必要がある.自分にはできるという感覚がなければ,やる気は生じない.さらに,自律性を支援されることによって内発的動機づけは促進される.有能感と自律性がともに高められ,互いに補いあって成長を支える力となり,人々の達成感や生涯にわたる学習を導くのである.これが著者の主張であり,有能さと自律性を感じ人生を自分で切り開いていく人は,そうでない人に比べてあらゆる点で,計り知れないほど豊かであると述べられている.

内発的動機づけが本書の大きなテーマの一つであるが,非常に興味深いのは,どのようなときに内発的動機づけが低められるかという研究結果である.望ましい結果や良い行動に対して,金銭やプレゼントなどの報酬が与えられるとき,内発的動機づけは低下する.つまり,金銭やプレゼントが与えられるときだけ,そのような行動をするようになってしまう.報酬は自由な行為を外部から統制される行為へと変えてしまうのであり,報酬によって人は多くの活動に対して興味を失ってしまうのである.この事実を我々はどれだけ認識しているだろうか.子供を餌で釣ろうとばかりしていないだろうか.最悪だ...

さらに,内発的動機づけを促進するために必要な自律性については,選択の機会を提供することが人の自律性を支えるために重要であると述べられている.あれをしろ,これをするなとガチガチに決めつけるのではなく,できるだけ広く設定された制限の範囲内で,自分で選択させることによって自律性が養われていく.

これらの他にも,多くの気付きが得られる良書である.

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