4月 222009
 

(2014年12月25日 リンク修正)

学位を取るために論文が学術雑誌(ジャーナル)に掲載されれば十分ですというような,低レベルの話が対象ではない.できるだけ多くの人に論文を読んでもらい,研究成果を社会のために役立てたいと願うときに,どのように論文を書けばよいかという話が対象である.

まず,肝に銘じておかなければならないのは,ほとんどの論文は読まれないという現実だ.自分の専門分野であってさえ,論文数を稼ぐために論文が大量生産され,似たようなテーマの国際会議や国内学会があちこちで開催される現在,すべての論文に目を通す時間など誰にもない.査読者に指名されない限り,読みたいと思える論文しか読みはしない.

では,どのようにして,読みたいと思える論文がピックアップされてくるのか.その過程を検討すれば,おのずと,読まれる論文の条件が明らかになる.論文を読んでもらうためには,次の3つが必要条件である.

  • キーワード検索でヒットすること
  • 論文タイトルで読む候補に挙がること
  • 論文要旨(abstract)で惹き付けること

以下,順に見ていこう.

キーワード検索でヒットすること

紙媒体が主体であった昔とは異なり,電子化が進んだ現在,学術雑誌(ジャーナル)の目次を眺めて,気になる論文を探すことはあまりしない.もちろん,定期的に送付されてくる学会誌や論文集の目次くらいには目を通すだろうが,ほとんどの研究者には,図書館に行って膨大な数の学術雑誌(ジャーナル)の目次を眺めるだけの余裕はない.

その分野をリードする研究者の論文は別格(ここでの対象外)として,通常は,データベースのキーワード検索で論文を探すことになる.つまり,キーワード検索でヒットしないかぎり,永遠に論文は読まれない.GoogleやYahoo!などの検索エンジンで上位表示されないページは世の中に存在しないに等しいと言われるのと同じ理屈だ.

重要なキーワードは,モレなく,タイトルか要旨(abstract)に組み込んでおかなければならない.タイトルか要旨(abstract)という点に注意して欲しい.論文を絞り込むために,本文を検索対象から外す可能性が高いため,キーワードが本文に書かれているだけではダメだ.

論文タイトルで読む候補に挙がること

論文の構成要素の中で,最初に目がいくのがタイトル(論文題目)だ.データベースの検索結果で表示されるのもタイトルだ.タイトルで第一印象が決まる.最重要なキーワードを厳選し,タイトルに含めておく必要がある.

論文要旨(abstract)で惹き付けること

要旨(Abstract)が魅力的でなければ,論文は読んでもらえない.キーワード検索でヒットし,タイトルで読む候補に挙がったとして,次の段階は,要旨(Abstract)による読む価値があるかないかの判断だ.読者を「この論文は読んでおこう!」という気にさせなければならない.

最低限の要求として,研究の目的と結論が簡潔かつ明確に書かれていることが必要になる.要旨(Abstract)だけで,論文で最も主張したいことが伝えられないといけない.あれもこれもと欲張ってはいけない.贅肉をそぎ落とし,筋肉質で美しい要旨(Abstract)を目指すべきだ.

書いた後で,十分に時間をおいてから,客観的に読み直してみよう.その要旨(Abstract)を見て,心の底から「この論文は読んでおこう!」という気持ちになるか.知的好奇心を刺激されるか.論文が提供する価値(新規性や有用性)は明確か.もちろん,誤字脱字などは論外だ.

補足

これまでに数多くの学生の論文原稿を見てきて,感じてきたことを,まとめてみた.論文執筆に加えて,上手に魅力的な学会発表をするためのアドバイスなどについては,「学会発表や卒業研究発表の前に読みたいプレゼンテーション・アドバイス」も参考になるだろう.

敢えて書く必要もないだろうが,内容に価値があることが論文執筆の大前提だ.付加価値のない論文を書くのはやめよう.

読み返してみると,ブログやアフィリエイトサイトの検索エンジン最適化(SEO)みたいな話だが,実際,共通部分は多いと思う.

主要アドバイス一覧

勉強,レポート作成/論文執筆,研究発表/プレゼンテーションについて,主に卒業や修了を目指す学生へのアドバイスの一覧

(2015年1月15日リンク追加)

4月 222009
 

ロジカル・プレゼンテーション―自分の考えを効果的に伝える戦略コンサルタントの「提案の技術」
高田貴久,英治出版,2004

副題にあるとおり,「提案」に焦点を宛てた解説書である.良い提案をするために当然必要になる論理的思考の説明もあるが,いかに提案を成功させるかという観点で首尾一貫している.そのため,論理的思考の類書にはない,会議設計力や資料作成力についても多くの紙面が割かれており,それが本書の特徴となっている.

本書の印象は,「当然のことが書かれている」というものだ.きちんと書かれており,まともな解説書になっているので,この種の本を読んでいないなら,読んでみる価値はある.既に色々と読んだ人にとっては,会議設計力や資料作成力についてで価値が見出せるかどうかに依存するだろう.

目次

  • 新規事業立ち上げのストーリー
  • 提案の技術とは
  • 論理思考力―話をつなぐスキル
  • 仮説検証力―疑問に答えるステップ
  • 会議設計力―議論をまとめるスキル
  • 資料作成力―紙に落とすステップ
  • 最終章