6月 182009
 

EURECHA

欧州に,EURECHA (The European Committee for the Use of Computers in Chemical Engineering Education)という組織がある.名前の通りではあるが,ウェブサイトには組織の目的が次のように記されている.

EURECHA was formed in 1983 to enable software for teaching and methods of computer aided teaching to be exchanged between universities in Europe.

EURECHAの活動には,教育用ソフトウェアへの投資(開発支援),ケーススタディの実施,ショートコースやワークショップの開催などが含まれる.ケーススタディでは,毎年,プロセス設計や最適化などの課題が提示され,学生コンテストが開催されている.現在参加中の国際会議ESCAPE(European Symposium on Computer Aided Process Engineering)では,その中のEURECHAセッションで学生コンテストの表彰が行われた.ちなみに,EURECHA Student Contest Problem 2009は”Design of Phthalic Anhydride Production Process”である.

欧州の強みは,各国がバラバラに何かに取り組むのではなく,欧州全体で取り組むというスタイルにある.ソフトウェア開発にしても,コンテスト用課題作成にしても,相当な労力がかかるため,小さな組織で取り組むのは難しい.特に継続するのが難しい.また,大学教育全般についても,欧州全体でカリキュラムを統一しようとしている.

日本での取り組み

では,日本ではどうか.JABEEでもデザイン科目が必要とされ,また,伝統的に化学工学ではプロセス設計が重視されてきた.EURECHAの学生コンテストに似たものとして,化学工学会のシステム・情報・シミュレーション部会が,ソフトウェア・ツール学生コンテストを開催している.プロセス設計部門と一般ソフトウェア・ツール部門の2部門にわかれており,プロセス設計部門の2009年度の課題は「クメン製造プロセスの設計」である.現在までのところ,この学生コンテストは一部会の活動にとどまっているが,化学工学にとって本当にプロセス設計が大切なら,学会レベルの活動として取り組むべきであろうし,逆にプロセス設計が大切でないなら,化学工学出身者は何で飯を食うのか?に答える必要がある.

パンアメリカ(汎米)での取り組み

今回のEURECHAセッションでは下記2件の講演があった.

  • The Role of Structured Multimedia in Improving the PSE Teaching Impact
    Prof. Jiri Klemes, EC Marie Curie Chair (Exc) INEMAGLOW, Hungary
  • PanAmerican Advanced Study Institute and Virtual Libraries on PSE
    Prof. Ignacio E. Grossmann, Carnegie Mellon University, Pittsburgh, USA

一件目の講演は大したことなかった.

二件目は,PASI (PanAmerican Advanced Study Institute)の紹介で,北中南米が一致団結して,研究者や技術者の教育に取り組んでいる.DOEとNSFが支援しており,かなり気合いが入っているようだ.PASIについては,NSFのウェブサイトで次のように紹介されている.

The Pan American Advanced Study Institutes (PASI) Program, is a jointly supported initiative between the Department of Energy (DOE) and the National Science Foundation (NSF). Pan American Advanced Studies Institutes are short courses ranging in length from ten days to one month duration, involving lectures, demonstrations, research seminars and discussions at the advanced graduate and post-doctoral level. PASIs aim to disseminate advanced scientific and engineering knowledge and stimulate training and cooperation among researchers of the Americas in the mathematical, physical, and biological sciences, and in engineering fields. Whenever feasible, an interdisciplinary approach is recommended.

様々なテーマでショートコースを開催しているが,プロセスシステム工学関連では,PASI on Emerging Trends in Process Systems Engineering: Sustainability, Energy, Biosystems, Multi-scale Design & Enterprise-wide Optimization (Argentina, August 2008)が開催されている.モデリングや最適化から,バイオや新エネルギーまで,トピックスは実に多岐に渡っている.

アジアでの取り組み

同じくEURECHAセッションに参加していた韓国の研究者との話の中で,このような取り組みをアジア(極東)でもやるべきだということになった.例えば,博士後期課程を中心とする大学院生に国際会議を経験してもらうことを目的として,一日だけの研究発表会を実施するなどの案が出た.アジア圏では,既に”PSE Asia”という国際会議を2〜3年ごとに開催しているので,”PSE Asia”がない年に開催するなどすれば,効果が上がると考えられる.

元々,我々のプロセスシステム工学研究室では,研究室旅行として海外の大学訪問を実施しているので,全く問題はないだろう.できるだけ早い時期に世界を知る(肌で感じる)ことは大切だと思う.