7月 292009
 

化学工学特論第一『研究・技術・自分のマネジメント』

今年4月に「研究・技術・自分のマネジメント」に書いたように,修士課程対象の化学工学特論第一のテーマを『研究・技術・自分のマネジメント』として,約3ヶ月間の講義を行った.途中,将来を嘱望される若手2人に特別講演をお願いした.

  1. 「研究活動で得た能力は社会人になって役に立つのか?」,木村義弘氏
  2. 「人生は経営〜自分を経営するにあたって大事なこと」,杉本哲也氏

講演者と学生有志の交流を促すために昼食会も設定し,いずれの特別講演も学生には大いに刺激になった様子だった.

最後の講義では,とにかく私が大学生に言いたいのはこういうことだとして,「大学新入生へ: 受講生に宛てた本気モードでのメッセージ」にも掲載した暑苦しいメッセージを配布し,レポート課題を示した.

化学工学特論第一『研究・技術・自分のマネジメント』のレポート課題は2つ.

  1. 最低5冊の良書に対する書評を書く.書評は1冊につき1000字程度で構わない(長ければ良いというものではない).なお,書評には,P.F. ドラッカー,安岡正篤,D. カーネギーの書籍を各1冊以上含むこと.もちろん,特別講演で紹介された書籍を読むことも推奨する.
  2. 技術経営(MOT)を主題とする書籍を読み,研究者や技術者として,自分自身の研究テーマ設定あるいは研究の進め方にどのように活用できるかを考える.その考察をふまえて,技術経営(MOT)の観点から,自分が取り組んでいる研究,自分が属する研究室が取り組んでいる研究,あるいは自分が属する専攻が取り組んでいる研究を評価する.どのような観点からの評価でも,どのような手法を用いての評価でも構わないが,さらに投資すべき,現状維持,撤退すべきなど,何らかの意志決定結果とその根拠を明確にすること.

大学院生が感銘を受けた本

化学工学特論第一『研究・技術・自分のマネジメント』では,予め推薦図書として複数の本を挙げておいた.提出されたレポートを読んだ結果,修士課程の学生が読んで参考になる,感銘を受けるという意味では,「人を動かす」(デール・カーネギー,創元社)が一番良かったようだ.圧倒的な支持を得ていた.特別講演をしてくれた杉本君が,学生時代に私から読むように勧められ,自分の人生を変えた一冊だと言うだけのことはあるのだろう.

まだ読んだことがないなら,読んでみるといい.お勧めだ.

同じくデール・カーネギーの「話し方入門」(デール・カーネギー,創元社)も非常に好評だった.話すなんてことは誰でも日常的に無意識にやっていることだが,適切な話し方というものがあることを教えてくれる名著だ.こういう本を読んでいる人と読んでいない人が同じ話し方やプレゼンテーションをするはずがない.自分の想いを人に伝えるためには,適切な方法を身に付けておく必要がある.誰もが読んでおいて損はしない本だ.

知識労働者として成果を出せるようになって欲しいという観点から推奨したのが,ピーター・ドラッカーの一連の著作だ.

「経営者の条件」(ピーター・F. ドラッカー,ダイヤモンド社)「プロフェッショナルの条件」(ピーター・F. ドラッカー,ダイヤモンド社)のいずれかを読んでみて,その通りだと頷くものの,まだピンと来ない部分もあるという意見が多かった.仕事に対する自覚が足りない学生時代には,そう感じても不思議ではない.いずれ読むべき時が来るだろうから,そのときに読み返してもらえれば良い.ただ,就職する前だからこそ,本当は今読むべきだと思う.

ピンと来ない部分があったとは言え,時間管理の重要性を含め,成果を出すために為すべきリストは大いに参考になったようだ.

ジャンルは異なるが,「青年の大成」(安岡正篤,致知出版社)に感化された学生も多かったようだ.内容がかなり精神的になってくるので,好き嫌いも出てくる.もちろん,こういう類の本は,読者のレベルに応じて,内容も違って見える.ショーペンハウエルが「誰しも自分以上のものの見方はできない」と言いゲーテがメフィストフェレスに「しょせん,人間は,自分が学べることしか学ばない」と言わせた通りだ.それでも,類書の中では,本書は若者向けに書かれているので,学生にも読みやすい.この本を読んで,良い師友を持つことや読書することの重要性を実感できた人は幸運だ.それだけでも,化工特論第一を受講した甲斐があったと,いずれ実感するときも来るかもしれない.

推奨した本のいくつかについて,「この本をもっと早い時期に読んでおきたかった」という感想が複数あった.そうだろう.私なんて,そんな本だらけだ.しかし,後悔しても仕方がない.化学工学特論第一『研究・技術・自分のマネジメント』を通して,そのような本と出会えたのだから,今は,それをどう活かすかを考えるときだ.そして,今からは,良書を読むことを自分に課すのがよい.週1冊読めば,1年で50冊読める.これだけであっても,良書を読めば,人生が変わることを請け合おう.

  4 Responses to “大学院講義で人気のあった本を紹介”

  1. 本講義の受講生から,下記のようなメールをもらった.本当に有り難い.特別講演を引き受けてくれた木村君と杉本君にも改めて感謝しよう.ありがとう.

    先生の講義を受けて研究生活を続けていく、モチベーションがかなり上がりました。またこれまで正直、自分自身の為にお金を稼いで将来楽な生活を送ればいいと思っていましたが、自分の経験や能力を生かして、社会のため又は国家の為に役立つことを成し遂げたいと思っております。

  2. 受講生からのメール第二弾.講義を始める前にやりたいと思っていたことのうち,どれだけを実際にできたのか,自分でもよくわからない.それでも,受講生それぞれの立場において,何か役に立ったと感じてもらえたなら,それで救われる気がする.

    今回取り扱っていただいた内容の中で技術・自己マネジメントの回は私にとって大変有意義な内容でした。今までの自分の強みの分析の仕方、今後の研究の進め方や研究の捉え方が甘すぎることに気づかせられました。ポートフォリオを使って自己分析を行うことで何が自分に欠けているかが前よりも明確になりました。それによってやるべきことも明確になりました。講義内容や課題図書を参考に今回学んだ事を実践していきたいと思っております。

  3. 木村@インドです。

    講義お疲れ様でした。
    なかなか大学院の講義としてはチャレンジングな内容で、
    機会をいただいたこと、私自身も楽しめましたし、
    学生の皆様も感想メールからして楽しんでいたのではないでしょうか。

    何はともあれ、「来年も加納先生が担当」に1票入れたいと思います。

  4. 日本もようやく夏本番です.暑くなってきました.
    インドでも絶好調でしょうか.生々しいブログも楽しみにしてますよ.

    まずは,改めて,講演ありがとうございました.お願いして本当によかったです.

    化学工学特論は第一から第四まで,各期に一つずつあって,教員が持ち回りで担当します.3〜4年に一回まわってくる感じでしょうか.このため,しばらく私の出番はありません.当然ながら,「自分をマネジメントしろ!」なんてことを熱く語る講義もしばらくないでしょう.そんなことをしようと画策するのは私一人だけみたいです.まあ,異端なのはいつものことですけどね.

    それで,講義とは離れて,今回の特別講演のようなことを継続していく枠組みを検討中です.幸いにも,教育と研究になら好きなように利用してもらってよいという資金を企業からいただいて,貯めてきましたので,それを活用しようと考えています.「○○塾」とか「□□セミナー」とか,そんな名前でも付けて,加納主催で年数回の講演会でもやっていこうかと.

    というわけで,名前を募集します!

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