11月 022009
 

大学の現実を示しておこう.「大学院での英語講義の是非」を検討する際にも欠くことのできない基礎資料である.

QS Quacquarelli Symonds“が毎年発表している”THE – QS World University Rankings”(世界の大学ランキング)がある.総合順位は,

#1 ハーバード大学(米国)

#2 ケンブリッジ大学(英国)

#3 イェール大学(米国)

であり,トップ10位を米国6大学と英国4大学とが占拠している.トップ11〜20位には,米国7大学の他,オーストラリア,カナダ,スイスと英国(同点)が入ってくる.この上位ランキングを見れば,明らかだろう.国際的に影響力のある大学ランキングにおいては,英語圏の大学が世界を支配している.日本を含めて,非西洋諸国(アジア,アフリカ,南米など)の大学は,米国1カ国のトップ10位にも遠く及ばないと評価されているわけだ.

日本語でこの記事を読んでいる読者は,「一体,日本の超難関大学はどうなっているのか?」と疑問を抱くことだろう.日本のトップ3の総合順位は以下の通りだ.

#22 東京大学

#25 京都大学

#43 大阪大学

ちなみに,日本国内私学トップは慶應大学であり,総合順位は#142となっている.ただし,これはあくまでも総合順位である.「○○大学は△位なんだって〜!」と言っているだけでは,いかにも頭が悪そうに見える.もう少し詳しく見ておく必要がある.

例えば,”Academic Peer Review”(識者への聞き取り調査)という評価項目では,東京大学と京都大学は100点満点を取っており,世界を代表する大学と互角に渡り合っている.ちなみに,大阪大学は49位だ.この他の項目では,東京大学の場合,工学・ITが6位,生命科学が7位であり,トップ10にランクインしている.京都大学の場合,自然科学が10位,工学・ITが16位とトップ20にはランクインしている.つまり,これらの項目での好評価に反して,何かが大きく足を引っ張っているわけだ.

その最たるものの1つが,”International Faculty”(外国人教員比率)だ.東京大学と京都大学はトップ10がどうこうと言えるレベルではなく,上位300位にすらランクインしていない.同様に,”International Students”(留学生比率)での評価も悪く,東京大学は282位,京都大学は300位圏外だ.

これらは外国語という壁が原因とも言えるが,国内の高等教育への関心の低さが原因となっている評価項目もある.それは,”Student Faculty Ratio”(学生と教員の比率)だ.東京大学が29位に踏みとどまっているのに対して,京都大学は84位である.しかも,この数年間,教員数を減少させろという政治圧力は極めて強く,教員が抜けても補充できないような状況にある.

結果の一部を抜粋したに過ぎないが,以上が現実である.万人が認めざるを得ない優れた評価手法があったとして,それで東京大学が22位になるかどうかは知らない.知るよしもない.しかし,我々が生きているこの世界で,世界的に影響力のある大学ランキングで,東京大学は22位,京都大学は25位と評価されている.そして,この評価結果を世界中の人が見ている.この事実は揺るぎようがない.

その上で,この評価結果をどう解釈するか,高等教育行政や大学運営にどう反映させるか,あるいは反映させないかが問題である.日本人にありがちな反応は,経済国際開発機構(OECD)が2003年に実施した国際学力調査(PISA; Programme for International Student Assessment)の結果が公表されたときのように,「順位を上げろ〜!」だが,何の思考もなしに順位を上げるべきという結論に飛びつくのは,やはり,頭が悪そうに見える.そもそも,大学は何のために存在しているのか.国は大学に対して何を為すべきか,また何を為すべきでないか.そのような基本的事項をきちんと検討しておかないと,酷いことになる.