11月 252009
 

ふたりの証拠
アゴタ・クリストフ(著),Agota Kristof (原著),堀茂樹(訳),早川書房,2001

三部作の二作目.お前もかという感じだが,やはり,第一作である「悪童日記」に比べて,インパクトがない.

「ぼくら」の日記である「悪童日記」は,一切の感情が封殺され,簡潔な文章で,事実のみが淡々と記されていた.そこには,「ぼく」は存在しなかった.大きな町から「おばあちゃん」のいる小さな町に疎開してきたときから,戦後,行方知れずだった「おとうさん」が再訪してくるときまで,ずっと,「ぼくら」のままだった.ところが,日記の最後で,鉄条網で封鎖された国境を越えようとして地雷で爆死したおとうさんを踏み台にして,一方が国境を越える.そして,もう一方は,おばあちゃんの家に戻る.こうして,「ぼくら」が「ぼく」になったところで日記は終わる.衝撃的な結末だった.

本書「ふたりの証拠」は,その小さな町で,おばあちゃんの家に残った一方の「ぼく」の物語だ.だが,彼にはLUCAS(リュカ)という名前が与えられ,彼を取り巻く人々にも名前が与えられ,本書はもはや日記という形式をとらない.それでも,事実を簡潔に述べる文体はそのままに,その小さな町で,LUCASと彼を取り巻く人々が織りなす人生を描き出す.それは,私からすれば極めて非日常的だ.

本書の終盤,外国からやって来た男が,LUCASが書き続けていた日記を,その日記を預かっていた人物から受け取る.その男の名はCLAUS(クラウス).彼こそ,LUCASの双子の兄弟だ.LUCASに会いに来たのだ.LUCASは随分と前に小さな町を去ってしまったのだとも知らずに.

そして再び,物語は衝撃的な結末を迎える.一体,LUCASとは何者なのか.CLAUSとは何者なのか.「ぼくら」とは一体何であったのか.そして,日記は何だったのか.

最終作「第三の嘘」を読めば,その答えが見つかるだろうか.