11月 272009
 

第三の嘘
アゴタ・クリストフ(著),Agota Kristof (原著),堀茂樹(訳),早川書房,2006

悪童日記」,「ふたりの証拠」に続く三部作の完結編(恐らく).

幼い子供だった「ぼくら」は,全体主義国家に占領された母国で,戦争の只中を,両親から離れて生き抜いていかなければならない.戦後には,共産主義国家に占領された母国で,抑圧された生活を強いられることになる.そんな双子の兄弟が,目にしたもの,耳にしたものについて,感情を一切排して,淡々と書き記したとされる「悪童日記」.そこには戦争の何たるかが書かれている.「悪童日記」は,それまで不可分であった「ぼくら」が,国境を越えようとして地雷に吹き飛ばされた「おとうさん」の屍を乗り越えて外国へ去る一人と,「おばあちゃん」の家に残る一人とに離別したところで終わる.

共産主義国家に占領された母国,「おばあちゃん」の家に残った一人の人生を描いたのが「ふたりの証拠」だ.その一人は名をリュカという.リュカは小さな町で様々な人々と交わる.随分と年月がたってから,外国の男が小さな町に来る.彼はリュカを探している.彼の名はクラウス.リュカの双子の兄弟だという.もはや小さな町にリュカはいないが,クラウスは,ある人物からリュカのノートを受け取る.離別以来,リュカが書き留めたものだ.クラウスは幼い頃を過ごした小さな町にとどまるが,観光ビザが切れて不法滞在で捕まる.その調書において,リュカのノートは全くのフィクションであり,そこに登場する人物も事件もすべてが架空のものであるとされる.唯一,「おばあちゃん」の存在を除いては.

「ぼくら」とは誰なのか.リュカは,クラウスは,実在するのか.一体,何が真実で,何が嘘なのか.前二作読了後に頭の中を駆け巡る謎に答えを与えるのが,本書「第三の嘘」である.

「ぼくら」は「あのこと」以来,壮絶な人生を強いられてきた.クラウスは頭の中でリュカに話しかける.

人生はまったく無益なものだ,無意味そのものであり,錯誤であり,果てしのない苦しみだ,こんなものを発明した<非−神>の陰険さたるや,到底理解できるものではない

戦争,離別,殺人,再会,自殺.クラウスがクラウスを埋葬した墓の前にいる.

私たち四人があらためていっしょになれる日も近いなと思う.これで母が死んでしまえば...列車.いい考えだな.

この三部作で最も印象に残ったのは,やはり一作目「悪童日記」だ.内容もさることながら,表現の斬新さも刺激的であり,勉強になった.二作目「ふたりの証言」,三作目「第三の嘘」も面白い作品だった.だが,やはり私は文学作品を次々に読んでいくことはしないだろう.読むべき本が山積しているから.

 Leave a Reply

You may use these HTML tags and attributes: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>