12月 052009
 

まあ,そんなわけはない.ランキングするという悪趣味は脇におくとしても.

まず,その「本当に強い大学ランキング【2009年版】」を知らないことには話にならないので,リンク先を読んで欲しい.そこには,「大学の実力を見るカギは財務・教育・就職の三つ」と書かれてあり,「財務力」「教育力」「就職力」の3項目のランキングが1〜100位まで掲載されている.

「財務力」と「就職力」は,まあいい.こんなものは数値を見れば誰でもおおよそのことはわかる.

問題は「教育力」の評価だろう.「教育力」を評価するために考慮されている指標は4つで,記事の最後に以下のようにまとめられている.

【教育力】
教育研究充実度(2008年度、%)
 私立大は(教育研究経費+病院経費)÷帰属収入×100
 国公立大は(教育経費+研究経費+診療経費+教育研究支援経費)÷経常費用×100
GP等採択件数
 文科省「大学教育・学生支援推進事業」テーマA(大学教育プログラム)、同テーマB(学生支援推進プログラ ム)の09年採択件数と「質の高い大学教育推進プログラム(教育GP)」と「海外先進教育研究実践支援」の 教育実践型の08年採択件数、「新たな社会的ニーズに対応した学生支援プログラム(学生支援GP)」の07〜08年度採択件数および「特色ある大学教育支援プログラム(特色GP)」「現代的教育ニーズ取組支援プロ グラム(現代GP)」「海外先進教育実践支援」の07年度採択件数の合計。
科学研究費補助金
 文科省2009年度採択(新規採択+継続分)の速報ベース(09年4月発表)。
教員1人当たり学生数(2009年5月現在、人)
 東洋経済調べ。学生数÷教員数

1つめの「教育研究充実度」は,収入に占める教育研究経費と病院経費の割合だ.病院経費が凄まじいと教育研究は充実していることになる.せめて,学生1人あたりの教育研究経費にでもすべきだろう.そうすれば,水で薄めたマス教育しかしないところは篩い落とされる.

2つめの「GP等採択件数」は,文科省が大学法人化を機に大学の目の前にぶらさげたニンジンにどれだけ首尾良く食らいつけたかを示す.この指標は,研究成果を論文数で数えることと大差ない代物だろう.本質的な意味があるようには思えない.まずは,これだけの資金をばらまいて,結局のところ,どういう効果があったのかが問われないといけない.資金提供した文部科学省も,受益者である大学も,効果ありと言い張るだろう.では,何を根拠に正当な評価を下せるのか.まあ,偉い方々はそこまで考えて実行しているのだろうけど.

3つめの「科学研究費補助金」は,公的な研究予算の獲得額だ.費やした経費で研究成果が評価できるなら,研究費を指標としてもいいだろう.しかし,そうだとしても,科学研究費補助金がすべてではない.その他にも研究費は様々な方法で獲得できる.いや,ちょっと待て.評価したいのは「教育力」ではなかったのか.一体,東洋経済は研究費と「教育力」にどんな関係を仮定しているのだろうか.それに,大学の規模を無視して,採択された件数や金額の合計を比較することに意味があるとは思えない.平均値にも意味はないだろう.研究費は平等に分配されるわけではないからだ.100人教員がいて,1人のスーパースターと99人の凡人だとしよう.スーパースターは一人で10億円を稼ぎ,凡人は一人で100万円ほどしか稼がない.合計は11億円,平均は1千万円だが,いずれも教育力を表すとは思われない.彼らが1000人の学生を指導しているとしよう.スーパースターも凡人も10名ずつ指導する.学生1人あたりの研究費は,スーパースターの研究室なら1億円,凡人の研究室なら10万円だ.さて,どの数字が大学の教育力を表していると言えるだろうか.ここで,99%の学生は10万円しか分配されないことに注意して欲しい.

4つめの「教員1人当たり学生数」は,まともな指標の1つだろう.

こうして眺めてみると,結局,注ぎ込んだお金の総額だけを見ているようだ.東洋経済が先進各国の「教育力」をランキングしたら,GDPに対する教育支出が突出して小さい日本はほぼ最下位になることだろう.

大学ランキングでは,当然ながら,東京大学を筆頭に,旧帝大や有名私大が上位にランクインする.しかし,教育の成果は,大学でどれだけ学生を成長させたかで評価されるべきものである.群を抜く学生を大量に入学させておきながら,多少ましな学生を輩出するようでは,大学は何も教育に貢献していないに等しい.そして,優等生的なYesマンが大活躍する歴史書なんて見たことがない.指示通りに動ける人材を養成することも必要だろうが,ガチガチに凝り固まった基準に合うものだけを評価するような制度下で育成できる人材なんて,所詮は程度がしれているのではないか.

こんなことを書こうと思ったのは,昨日参加した教育シンポジウムで,工学研究科長が「大学ランキングで京都大学の教育が酷いことになっている」と嘆いておられたからだ.こうして,ランクを上げるための活動が激しくなる.そのランキングに本当に意味があるなら良いが,そうでないなら,無意味な努力になりかねない.

A:知の拠点である大学が,週刊誌レベルのランキングに右往左往していたことがあったんだって.

B:へぇ〜.

A:昔,経済的に繁栄したジャパンという国の話だよ.

B:ジャパンって,中国の海側の?

いや,ここまで書いてきて,ハッと気付いた.この東洋経済の本当に強い大学ランキングは,確かに,本当に強い大学ランキングだと言える.少なくとも,集金力という観点で強い大学ランキングになっていそうだ.それならそうと書いてくれればいいのに.集金力ランキングとか.真面目に教育とかについて考えるのは無粋というものなのだろう.

参考: 世界の大学ランキング: 英語圏の大学による世界支配という現実