12月 072009
 

先週,工学研究科(大学院)と工学部(大学)の教育シンポジウムに参加した.第一回に参加したときのことは,「第一回工学部教育シンポジウム@京都大学」に書いてある.今回は5回目だったかな.シンポジウムの冒頭,工学研究科長が某大学ランキングにおける京都大学の教育への低評価を嘆いておられたことは,「東洋経済の本当に強い大学ランキングは本当に意味のある大学ランキングか」に書いたとおりだ.

さて,今回のシンポジウムでは,博士課程に在学する学生へのアンケート調査結果が,担当した学生から紹介された.経済的負担のことや,就職のことなど,様々な結果が報告されたが,ここでは,英語論文の執筆について取り上げておこう.

大学で教員をしていれば,あるいは学生であっても,英語で論文を書く機会はあるだろう.少なくとも,研究重視の大学で理工学系であれば,日本人向けのサービスという意味を除けば,日本語で論文を書いてみても仕方がない状況ではないだろうか.今や国際語は英語なのだから.

当然,研究室の戦力である博士課程学生も英語で論文を書く.上記のアンケート調査には,その英語論文の仕上げをどうしているかという設問があった.教授のチェックや添削業者に発注などが多かったように思うが,コメントが傑作だった.

教授の英語が正しいかどうかわからないので,何とかして欲しい

いや,全くその通りだろう.実際,私も,正しい英語を書いているという自信はない.論文はすべてアメリカ人に添削してもらっている.幸い,何年も添削をしてもらっているおかげで,真っ赤になって返却されてくることはなくなったが,それでも,「文法的に間違ってはいないが,普通,英語でそういう表現はしない」なんていうのはわからない.前置詞や冠詞の用法も難しい.

このような状況をふまえて,調査結果を報告してくれた学生の提案は,「大学で英語論文を添削してくれる人を雇用したらどうですか」というものだ.この提案には大いに賛成する.添削業者に外注しているような研究室は相当な金額を支払っているはずだからだ.その費用を集めれば,大学で雇用することもできなくはないだろう.例えば,1日に論文2報で計20ページを添削するとしよう.1年に250日添削すると,合計5000ページになる.1ページ2000円とすれば,添削費用は1千万円だ.問題は,こんな条件で請け負ってくれる人がいるのかという点だが...

  9 Responses to “英語論文をどのように仕上げるか”

  1. >このような状況をふまえて,調査結果を報告してくれた学生の提案は,
    >「大学で英語論文を添削してくれる人を雇用したらどうですか」というものだ.
    >この提案には大いに賛成する.
    これ面白いですね。現在は業者に発注とありますが、これは研究室毎にまちまちなんでしょうか?それとも学科レベルでしょうか?そのときの業者ってテクニカルライティング専門の業者なんでしょうか?

    何故こんなことを聞くかと申しますと、例えば京都大学のような大きな国立大学、しかも研究が活発な大学の論文添削を担うとすれば何人のネイティブが必要なんだろうか、ということです。もし相当な数ならば、雇用はJokerかもしれません。

    またテクニカルな論文の添削は、内容もある程度理解できないといけないので、レベルの高い方が必要ですよね。文法だけではないと思うのですが、彼らを大学で「囲う」ことができるのか、なかなか現実的にはいかがでしょうか。つまり添削(というか論文英語を読解し、文法ミスを指摘する)スキルを持っており、かつ専門用語に長けているネイティブとすると必然的にレベルの高い方となりえますが、そういう方はプロの通訳やらほかの魅力的な仕事もあるでしょう。

    一方で論文添削が必要な時期は、各専攻やらで十分ばらけるのでしょうか。
    アカデミックな世界から遠ざかったので分かりませんが、「学会の繁盛時期」(実際の論文提出はその半年前とかでしょうが)があるというならば、「雇用」は固定費の観点から厳しいように思います。

    むしろ大学が質の高い添削者を大学内でマネジメントする部署を抱える、つまり添削業者組織を大学として組織する、ということも方向性としてはありそうですね。

    企業でいうプロフィットセンターは大学でいう研究室ですから、それ以外の部門、つまりコストセンターはできうる限りアウトソースするのが原則と考えます。

    また、一方で「本当にそこまで精緻な英語論文を書く必要があるのか」ということは少し疑問です。もちろんアカデミックな世界で、きちんとした英語がかけなければバカにされるのでしょうが、どこまで要求されるのか。話すのと一緒で、「完璧な英語論文を書かなくてはならない」というのがどこかで強迫観念になって日本人の英語論文輩出数を抑制してしまっているのではないか。例えば今求められていると思われている英語論文の「きちんとしている」というレベルが95%だとして、添削を使わず50-70%の「きちんとしているレベル」で論文を出すことでどこまで評価が下がるのか。

    コンサルで有名な大前研一氏の名著「企業参謀」はもともと英語で出版されて欧米でベストセラーになり、彼の名前を一気に押し上げましたが、実際の英語は「逐語訳的」な英語に思えてなりません。英語の勉強のために原著を買いましたが、「こりゃ英語の勉強にならんな」と思って結局、日本語で読み直したくらいです。

    ほかに一案ですが、もっと研究室内もしくは学科内での縦横の工夫を作ってもいいかもしれません。
    どうせ同じような論文であれば、実験方法やら導入部分の英語などは似通ってくると推察しますが、こういう表現集を研究室単位、学科単位、もしくはほかの大学と連携してどんどん作っていく、というのもいいのではないでしょうか?英語論文wikiみたいなものです。日本文を検索したら、添削済みの類似表現がヒットして流用できる、ような。

    それか国家プロジェクトで、翻訳ソフトを作るのもいいかもしれません。それこそ日本国民全員を「英語恐怖症」から救い出すかもしれません。

  2. 一部補足させてください。

    >どうせ同じような論文であれば、
    ここ何か悪意があるように見えますが、「同じ研究分野であるので実験方法等は似てきており、そこで用いた英語表現は流用できるはずでは」という話です。まったく他意はないですよ!!!
    「どうせおんなじような研究しかしてないんでしょ?といいたいのか!」と悪意をもって読解されかねない表現で失礼しました。大丈夫ですよね?笑

  3. 回答していきます.

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    1.現状について
    研究室単位でバラバラのはずです.少なくとも私が知る範囲では,専攻や研究科の単位で取り組んでいるという話を聞いたことはありません.外注しているところは,恐らく技術英語専門業者を利用していると想像します.

    PSE研では,アメリカ人に論文添削を依頼しています.彼は今はリタイアしていますが,Purdue Univ.で留学生等が書く原稿の添削を担当していたと聞いています.添削を依頼すると,2日以内に戻ってきます.年間20件ほど依頼していると思います.我々のケースは極めて恵まれている方だと思います.

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    2.可能性について
    「問題は,こんな条件で請け負ってくれる人がいるのかという点だが」というのは,まさにこの点を問題としています.京大の研究者が書く論文を内容まで把握して添削できる能力があるとしたら,他にいくらでも仕事はあるでしょう.安月給で働く理由はありません.現実には,内容がわかることまで要求するのは困難で,工学に関する素養があり,英語が添削できればよいのだと思います.ジャーゴンを添削するのは無理で,あくまで英文を添削してもらうということです.

    時期の問題はないでしょう.論文は年中書きますし,国際会議も年中あります.

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    3.精緻な英語論文を書く必要について
    相当程度,分野によると推測しますが,私の領域でいうと,50-70%だとリジェクトされる恐れがあります.新規性や有用性が採録基準を満たしていても,英語が酷いと査読者の心証を確実に害します.査読時には,「まともな英語か?」というチェック欄がありますので,そこのスコアが下がり,客観性不足としてリジェクトされるわけです.実際,酷い英語の論文を読むのは疲れます.

    英語が堪能でなく,論文を書き慣れているわけでもない学生が書くとき,問題は深刻です.研究室内で英語チェック体制が構築できればいいですが,現実には難しいでしょう.学生が書いた英語を添削するのは,特に学生が書いた文章をできるだけ生かしてやろうとすると,自分でゼロから書くのと比較して,数倍時間がかかります.生かす方向で頑張るのですが,追い詰められると,section全部を書き換えたりします.それでも,私が書く英語なんて極めていかがわしいです.

    そんなこんなで,英語添削を研究室の外に依頼する必要性はあると判断します.

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    4.表現集について
    論文は文学作品ではないので,行間を読んでもらう必要は全くないどころか,行間を読ませるようではダメなわけです.そうすると,いくつかのよく使う表現さえ習得しておけば,論文の大部分は書けることになります.ある分野の論文を数十報も読めば,その分野の論文はなんとなく書けるようにはなると思います.

    表現集は良いと思います.実際,英英辞典や活用辞典の例文を見ながら英文を書きます.翻訳ソフトも使っています.ただ,現在の翻訳ソフトのレベルでは,まともな英語論文は書けません.まだまだです.私が翻訳ソフトを利用するのは,同じような表現ばかりを繰り返してしまうときに,もっと違った表現の仕方はないかを調べるためです.

    また,最近では,科学技術英語に関するテキストも多数出版されています.添削前後の例文を載せているものもありますから,そういうテキストを参考にすることはできるでしょう.ただ,紙のテキストでは検索できないので,「英語論文wikiみたいなもの」はいいかもしれません.できれば使えると思います.

    一般論として,学生に言えるのは,もっと辞典を使えということですね.英和・和英辞典だけで英文を書けると思っていたら困ります.加えて,”The Elements of Style”くらいは目を通しておけということですね.

  4. 早速の長文返信有難うございます。これは心して返信コメントしなければ。。。

    >彼は今はリタイアしていますが,
    1でおっしゃられているPSE研での、「リタイヤした方の活用」はキーになるのではないかと思います。もう少し抽象化すれば、「本職ではないけども十分な能力を持っている方」でしょう。3でやはり精緻な英語論文の必要性が求められるとおっしゃるわけですが、感覚としてアメリカの「大学生」レベルはいかがでしょうか?もし可能なレベルなのであれば、「リタイア組」と「大学生組」を組織すると面白いかもしれません。ある程度のテクニカルタームも抑えているでしょうから。
    大学生を使う場合のリスクとしては研究成果が学会以前に流出する危険性かなと思いますがいかがでしょう?メリットとしてはコストを抑えられることでしょうか。また「日本でもこんな研究がなされている」ということをアメリカの大学生が知ることによって、アメリカからの留学生が増える副次効果が出る可能性もあります。リスクに関しては、契約で縛る手もございますでしょうから、体制の整備次第だと思いますが、いかがでしょう?
    また日本人大学院生が「自分はアメリカの大学生にダメだしされてる。。。」と言葉にしないながらもちょっと心が擽(くすぐ)られるでしょうから、英語のレベルも上げようとするのではないでしょうか。

    英語論文wiki、そういう集いを作る、というのはいかがでしょう?
    日本全体で、「英語での論文作成は口では言えないが、やっぱりきつい」という学生や研究者のために。実際英語論文を書いて、添削を受けた方がその表現を投稿していって作っていく。基本的には大きな学術分野毎のカテゴリー(化学、電気、原子力。。。などなど)と表現のカテゴリー(実験方法に関するもの、結論の述べ方に関するもの。。。などなど)のタグ付をしていく。
    ただ、それでも冠詞の使い方などはカバーできないでしょうね。逆に「そのままコピーアンドペイスト」していると、まだ話題にもなっていない初登場の単語について、theをつけたりして読者が「?」となるかもしれません。そういうリスクは前もって理解して使うべきでしょう。(書籍版の表現集も同様でしょうし)
    契約書作成を始めたころは、似たような契約書を複数並べて切り貼りして、各条項との整合性(論理性と表現両方)がとれておらず上司にこっぴどく叱られました。切り貼りする場合も、ある種のベーシックスキルを身につける必要はあるでしょうね。

    以上すべて仮説ベース(言い換えれば妄想)で考えてみました。

  5. 「リタイヤした方の活用」は本当に良いと思います.それで生活するわけではないので,切迫感がないですし,能力的にも問題ありません.「良いお小遣い稼ぎだよ.特に君は良いお客だ.」と彼は言ってます.この「良いお客」というのは,そこそこの英文を初めから書いてくるので,それほど手がかからないという意味です.業者と違って,個人ベースの付き合いなので,何かと融通がききます.「これ凄く大事な論文だから,しっかりチェックして!」とか,「締切が2日後だから,大至急でお願い!」とか.先日は1カラム・シングルスペースで50頁くらいの論文をチェックしてもらいましたが,やはり2〜3日で見てくれます.専門業者の価格を知りませんが,1/10どころの差ではないと思います.

    「大学生」ですが,内容が理解できないのは仕方ないとして,英語表現のみの添削であればできると思います.「英語表現のみ」というのは,論理的でない文章を論理的な文章に修正することを期待しないという意味です.実際,日本人の学生が日本語で論理的な文章を書けるかというと,必ずしもそうではありません.英語論文の添削は大変ですが,日本語論文でも真っ赤になりますから.そうすると,英語ネイティブの大学生でも,しっかりしたテクニカル・ライティングができることは期待できないということです.したがって,辿々しい英語でも仕方ないから,とにかく全体の構成と論理展開はしっかりした原稿を作成し,英語表現のみを添削してもらうのであれば,可能だと思います.

    「英語論文wiki」は面白いですね.実際,私が今操作しているパソコンのSSDには,数十個の添削済みファイルが保存されています.これまでにも,何とかこの遺産を有効活用できないものかと考えることはありました.何もアイディアが出てこないのが頭の悪さを物語っていて悲しいのですが...日本語では書かないため,日本語は付随していません.元の英文と添削結果があります.

    使い方としては,自分で書いた英文を入力して,それと似た添削結果付き例文をデータベースから探してくるという感じでしょうか? キーワードの検索でなく,「文章」の検索って,それなりにできるんでしょうか? 「英語論文wiki」の場合,キーワードを調べたいわけではなく,むしろキーワードはどうでもよくて,言いたいことを英語の文でどう表現するかが知りたいわけですね.この場合,検索するときに,キーワードの適合率などは指標として効果的でないように思うので,どうするんでしょう.そんな研究をしている人もいるんでしょうね.

  6. 1. 人材について
    そのお話を聞いていると、やはりリタイヤした方がよさそうですね。何より「ギラギラしていない」部分がいいかもしれません。ただ他の研究室もそういう出会いに恵まれるか、恵まれないとしたらどうするか。。。でしょうね。そういう出会いをモノにできる、というのもその研究室の実力と言ってしまえばそこまでですが、京都大学もしくは工学系研究科、あるいは化学工学専攻として組織として動くということが必要になるかもしれませんね。

    2. 英語論文wiki:添削済みファイルの活用
    ざっと思いつく方針でいえば以下かな、と思います。
    ・添削済 英文の抜粋/全文(著作権的に難しいでしょうか)の投稿
    ・タグの付記(領域:化学工学、内容:実験手順)
    ・コメント/日本語の挿入(コメントは日本語で。例:「○○を利用した実験方法・手順」日本語元があれば挿入。)
    ・日本語でも英語でも検索可能/タグ別検索可能
    >むしろキーワードはどうでもよくて,言いたいことを英語の文でどう表現するかが知りたいわけですね.
    →ここで重要になるのが、「タグ」や「コメント」となると思います。

    英語論文wiki、これを本職ではないので、そこまで時間をかけるものでもないと思います。そして、そこまで作りこむ必要があるか。それもないと思います。まずはこういうプラットフォームがあることが重要ではないかなと思います。

    いかがでしょう?

  7. 「タグ」と「コメント」で検索するわけね.なるほど.

    考えるべきことの1つは,各種辞典(英和・和英辞典,活用辞典,英英辞典)の電子版との違いは何か,電子辞典には出来なくって「英語論文wiki」にはできることって何か.電子辞典で事足りるなら,それでいい気がするし.

    まだ考える必要がありそう.

  8. 最近利用しましたが、英文校正なら値段的にも質的にも
    http://www.uni-edit.net/
    がよかったです。
    何回か再校正もお願いしたのですが無料で見てくれ、親身になってくれて気持ちよくやり取りができましたよ。

  9. Why promoting comments in English? As a matter of fact, English is easier for me to write and this is why I am writing mine in the language.

    So, Ohmae san does not write English well? That’s sad. And many Japanese college students do not write papers in English well? That’s sad. This includes graduate students, too? That’s sad. Even professors are not excluded? That’s sad.

    They all should study English more seriously. That is for sure.

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