1月 052010
 

日本でいちばん大切にしたい会社
坂本光司,あさ出版,2008

日本でいちばん大切にしたい会社

本書「日本でいちばん大切にしたい会社」で紹介されている会社では,社員の表情が明るく,会社に誇りを持って,活き活きと一生懸命に働いている.経営者は社員とその家族を大切にし,顧客を大切にし,地域社会に役立とうと精一杯のことをしている.本人が望まない非正規雇用や派遣労働,株主と経営陣のことしか眼中にない人員整理,さらには倫理観を喪失した不快極まる不祥事など,不況下では嫌なニュースに触れることが多いが,そんな社会環境にあっても,増収増益を続けている会社だ.それを可能にしているのは,会社が幸せにしようとしている社員や顧客である.

坂本氏は,会社経営とは「5人に対する使命と責任」を果たすための行動であるという.1番目は社員とその家族,2番目は外注先・下請け企業の社員とその家族,3番目は顧客,4番目は地域住民,そして最後に5番目が株主である.

「会社は株主のもの」という考え方に真っ向から異を唱え,幸せでない社員が顧客を幸せにできるはずがなく,そんな会社が株主を幸せにできるはずもないという.下請け企業の社員も含めて,働くことを通して幸せを感じている社員が,顧客のために商品を開発し,サービスを提供する.その真心に感動した顧客や地域住民が会社を支える.その結果として,業績はついてくるのであり,株主も株主であることに満足感を得られる.

アングロサクソン流の拝金主義が浸透した結果,株主重視を謳う企業が多いが,短期的利益に固執する経営は企業の継続的発展を阻害し,社員の幸せを犠牲にしている.そのような企業が顧客重視を謳ったところで,まるで信用できない.

本書「日本でいちばん大切にしたい会社」で紹介されている会社は5社.社員の70%が障害者である日本理化学工業株式会社(ダストレスチョーク),「いい会社をつくりましょう」を社是とした「年輪経営」で知られる伊那食品工業株式会社(寒天),弱者のための物づくりを続ける中村ブレイス株式会社(義肢装具),お菓子を通じて地域の人々を幸せにすることを目的に掲げる株式会社柳月(菓子),寂れた商店街にありながら全国の顧客に圧倒的に支持される杉山フルーツ(果物).

上記5社以外にも,コラムにおいて,株式会社ファンケルスマイル,ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社,樹研工業株式会社,キシ・エンジニアリング株式会社,株式会社ホリックス,株式会社アールエフ,柏屋,オオゼキ,メリーチョコレートカムパニーの9社が紹介されている.

いずれも,社員と顧客を大切にし,結果的に,素晴らしい業績をあげている会社だ.会社は何のために存在するのか,企業経営とは何か,を問い直すきっかけを与えてくれる.

これから学生の就職活動が佳境にさしかかるが,学生には「何のために働くのか」という原点に立ち返って考えてみて欲しい.本書「日本でいちばん大切にしたい会社」も読んでおくべきだろう.それでもなお,大企業が良いなら,あるいは流行を追いかけ,社名で着飾りたいなら,それもいい.もちろん,既に働いている人にも読んでもらいたい.

目次

第1部 会社は誰のために?

  • 「わかっていない」経営者が増えている!
  • 会社経営とは「五人に対する使命と責任」を果たすための活動
  • 業績ではなく継続する会社をめざして
  • 業績や成長は継続するための手段にすぎない
  • 社員は利益だけを求めているわけではない
  • 「多くの人を満足させる」こと。それが会社の使命
  • 経営がうまくいかない理由は内側にある
  • 中小企業にしかできないことがある
  • 日本で大切にしたい会社を増やそう
  • 続けていくことの大切さ

第2部 日本でいちばん大切にしたい会社たち

  • 障害者の方々がほめられ、役立ち、必要とされる場をつくりたい 日本理化学工業株式会社
  • 「社員の幸せのための経営」「戦わない経営」を貫き、四八年間増収増益 伊那食品工業株式会社
  • 「人を支える」会社には、日本中から社員が集まり、世界中からお客様が訪ねてくる 中村ブレイス株式会社
  • 地域に生き、人と人、心と心を結ぶ経営を貫いていく 株式会社柳月
  • 「あなたのお客でほんとうによかった」と言われる、光り輝く果物店 杉山フルーツ