1月 132010
 

“想い”と“頭脳”で稼ぐ 社会起業・実戦ガイド 「20円」で世界をつなぐ仕事
小暮真久,日本能率協会マネジメントセンター,2009

「TABLE FOR TWOは,開発途上国の飢餓と先進国の肥満や生活習慣病の解消に同時に取り組む,日本初の社会貢献活動です」

著者の小暮氏は,このTABLE FOR TWO INTERNATIONAL(TFT)というNPO法人の事務局長だ.具体的に,どのようにして飢餓と肥満を同時に解消するのか.TFTのコンセプトは次のように紹介されている.

企業の社員食堂にカロリーを抑えたヘルシーメニューを加えてもらい,その代金のうちの二十円が開発途上国の子どもたちの給食一食分として寄付される.そのことで,貧困とメタボリック・シンドローム(メタボ)という二つの社会課題を同時に解決することを目指す.

重要なのは,この目的を達成するために,事業として成立する「しくみ」を構築することだ.優れた「しくみ」がなければ,いくら高邁な理想を掲げたところで,持続的な活動はできないだろう.TFTに転職する前にマッキンゼーでコンサルタントをしていた小暮氏は,「5P」というフレームワークで「しくみ」を考えたという.5Pとは,Purpose,Partnering,People,Promotion,Profitの5つのPを指す.この5つのPについて検討しておけば,重要事項は網羅できているとされる.このようなフレームワークは他にも様々なものがあり,ケースバイケースで問題解決に適したフレームワークを利用する.MBAやMOTでのケース演習というのも,こうしたフレームワークを自由自在に扱えるようになることを目的としている.

本書「“想い”と“頭脳”で稼ぐ 社会起業・実戦ガイド 「20円」で世界をつなぐ仕事」は,そのタイトルの通り,著者の熱い想いに満ちている.アフリカの飢餓問題を解決したいという想い,そのような社会貢献活動の基盤としてのNPOの地位を向上させたいという想い,社会起業という働き方を多くの人に知ってもらい,自分がやりたい・やるべき仕事に出会って欲しいという想い,そんな想いに満ちている.

今でこそ広く知られるようになったTFTだが,そこに至るまでの道は険しかったと告白されている.世間の白い目との戦いだったと.それでも,世界の食の不均衡を是正するという理想を掲げ,その実現に向けて取り組んでいる自分自身が誇らしかったであろうし,やるべきことをやっているという充実感もあっただろう.そういう働き方ができるというのは本当に幸せなことだ.そして,そういう働き方は自分で選べる.実際,小暮氏は自分で掴み取った.

本書では「天職」という表現が使われているが,私は大学での教育&研究職が天職であると思っているし,教育&研究を通して社会貢献をすると宣言している.このように,天職は人それぞれ異なるものであるし,自分がやるべきことを見付けることが大切だと思う.そして恐らく,やるべきことというのは,私的に金持ちになることとかではないだろう.

本書「“想い”と“頭脳”で稼ぐ 社会起業・実戦ガイド 「20円」で世界をつなぐ仕事」は,研究室卒業生である辻君が,最適研究会の講演「想いを活かす仕事とは?」の中で紹介してくれた.良い本を紹介してくれて,ありがとう.就職する学生は読んでおくとよい.

目次

  • 「ワクワクしながら働く」ということ
  • TFTのビジネスモデルと苦難の創業期
  • 世界最高峰のコンサル会社からNPOへの転身
  • 社会起業にビジネススキルをいかす
  • 「しくみ」と「想い」が大きなつながりをつくる
  • 小さなしくみで革命を起こす