1月 232010
 

「アエラ族」の憂鬱 「バリキャリ」「女尊男卑」で女は幸せになったか
桐山秀樹,PHP研究所,2009

図書館の新刊書コーナーで偶然見付け,以前どこかで本書のタイトルを見た覚えがあったので,借りて読んでみた.本書でいうアエラ族とは,AERA読者一般ではない.もっと限定して,AERAの女性記事を読み,その女性記事に影響されるアラフォー女性たちのことだ.普通の人達には特に読む必要はない本と言える.私が手にしたのは,1つには,本書が対象とする女性がちょうど同世代(より少し上)にあたるため,多少の興味を持ったからだ..

AERAの女性記事に対して,プロローグには次のように書かれている.

首をヒネらざるを得ないのが,朝日新聞グループの出版部門である朝日新聞出版が発行する週刊誌『AERA』の女性記事にたびたび登場する,バリバリのキャリア女性を意味する「バリキャリ女」とか「おひとりさま女」の言動である.

本書「アエラ族の憂鬱」で著者は,AERAの女性記事を批判し,アエラ族に,つまり結婚を拒否し,出産と育児を拒否し,ビジネスキャリアに人生を賭け,旧来の女性の幸せを否定した女性に,目を覚ませと訴える.本書のメッセージは次のようにまとめられている.

「アエラ族」は,社会が自らに求めた「妻」「主婦」「母親」の道をすべて,「自由を奪う」という理由で拒否してきた.そして,アイデンティティを唯一表現できると信じたビジネス上のキャリアのみを実現したが,「百年に一度」と呼ばれるリーマン・ショック後の大不況の中で,企業からもその存在を否定され,いまやリストラの恐怖に脅えているのである.これが「アエラ族の憂鬱」だ.

「アエラ族」よ,女性が持つ本来のコミュニケーション能力をもっと磨け.できそこないの男のように一つの人生に固執すべからず,である.

そういうわけだから,アエラ族でない人が読んでも仕方ない.それでも読んでみた私だが,本書で引用されている評論家等の意見はなかなか面白い.いくつか紹介しよう.

「「婚活」時代」の共著者である山田昌弘氏は,「婚活」という言葉が本人の意図と乖離して独り歩きしていることについてコメントしている.

東京都で調査すると,六〇〇万円以上の年収を期待する未婚女性は三九・二%,これに対して六〇〇万円以上を稼ぐ当該年齢の未婚男性はわずが三・五%という調査結果が出た.

年収六〇〇万円以上の独身男性三・五%と聞いて,それをつかまえなければダメというのは一種のギャンブルである.年収六〇〇万円以上の独身男性三・五%を見つけ,気に入られ専業主婦になるよりも,共働きでそこそこの結婚生活をめざすほうが実現可能性がはるかに高い.

その上で,そのような結婚生活を実現するために「女性よ,狩りに出よ」と述べたのが「婚活」の本来の意図であると山田氏が述べていると,本書では紹介されている.リッチな専業主婦を目指して3.5%争奪戦に参入するのではなく,現実を見ろということだ.

ところが現実には,マスメディアが「婚活」を曲解して取り上げ,「婚活」しなければ良い条件の結婚なんてできないと喧伝し,さらにそれに便乗したビジネスが花盛りとなってしまった.本書「アエラ族の憂鬱」では,ある結婚紹介業経営者の言葉が紹介されている.

われわれの業界(結婚紹介業)は,結婚という看板を掲げながら,セックスの相手を紹介し,フリーセックスを助長している面がある.異性の情報を提供し,そのあとの交際は本人任せ,結婚するかどうかも見届けないのでは,出会い系ビジネスと何ら変わらない.

条件とか,勝ち負けとか,そんなレベルで結婚を捉えているようでは,幸せにはなれないんじゃないかな,と思う.

アラフォー世代の「アエラ族」はおよそ20年前のバブル期に就職した世代になる.華やかな時代にキャリアを求めて,自分を大切にするリッチな生活を享受してきたわけだ.そして,「負け犬」となったが,それでも私は幸せなのよと「遠吠え」した.ところが今や,世界経済は滅茶苦茶になり,明るいキャリアプランは吹っ飛んでしまい,結婚しないではなく,結婚できない状況になってしまった.本書「アエラ族の憂鬱」の描き出すストーリーは,およそこんなところだ.

「「婚活」時代」の共著者である白河桃子氏のコメントが紹介されている.

アラフォー世代にとって,専業主婦とは誰もがなれるものだったから逆に華々しいキャリアが欲しかった.しかし今や『専業主婦』としてのんびり子育てすることこそが女のステータスで,働くことはただの苦行.背景には,男女雇用機会均等法施行後二〇年以上たっても一向に改善されない女性たちの働く環境への絶望と,理想の『働く女性のモデル』の欠如がある.先輩世代の働く女性たちが,結婚や出産との両立に苦労している姿を見て,母親が幸せな専業主婦だった二十代女性たちはそちらに理想のモデルを見てしまうのだ.

このように,アラフォー世代のアエラ族と対照的なのが,ロスジェネ世代だ.好況を知らないだけに,厳しい現実社会の中で如何に生きるかを考えている.日本の社会は本当に厳しくなったと思うが,本書では,「男女同権は女性を幸福にしない」における山下悦子氏の言葉を引用している.

結局は,小泉政権は,競争と経済効率から『格差の容認と自己責任政策』を掲げ,セイフティ・ネットとして機能してきた『家族』を解体させたことにより,若い世代を中心に結婚したくてもできない,子供を『産む自由』よりも『産まない自由』を選択する,あるいは選択せざるをえないような状況をつくり出したともいえる.

アエラ族が求めた男女同権なんて求めず,ロスジェネ世代は家庭に入ることを選ぶ傾向があるという.女性がキャリアを極めるという意味では,昨今,勝間和代氏がもてはやされているが,本書はこう指摘する.

勝間和代的生き方は,その「一億総働きバチ社会」の中で暮らしながら,それを効率と資格取得による高収入で生き抜こうとする”超・働きバチ”だ.

誰もが勝間和代や上野千鶴子にはなれないのだと.そりゃそうだ.それに,なれたところで,それが幸せかどうかもわからない.

最後に,本書「アエラ族の憂鬱」で取り上げられている,女性が幸せになるための方法について書いておきたい.

1つは,「30女という病−−アエラを読んでしまう私の悲劇」(石原壮一郎,講談社)から.30女のための30の健康法というのがある.その22番目は,自分から「ごめんなさい」と言う,24番目は,ことあるごとに「ありがとう」と言う,となっている.

もう1つは,「良妻賢母−−女が幸せになるヒント」(池内ひろ美,PHP新書)から.良妻賢母になるための条件として,感謝する力,信じる力,感じる力,受け入れる力,笑う力の5つが挙げられている.「1.感謝する力」の始まりは「ありがとう」と声に出して言うことである.「3.感じる力」,これが最も大事だと池内氏は次のように言う.「物事をネガティブに受け取るのか,ポジティブに受け止めるか,そこから人生は大きく分かれていくものです.」

当然ながら,これらは女性に限らず,誰にとっても大切なことだ.

目次

  • 「超高級ホテル」から若い女性たちが消えた
  • 「男=女」-「アエラ族」はなぜ“生きにくい男たち”と同じになりたがるのか
  • アエラ族は、不幸になる-歪められた「婚活」時代
  • 「アエラ族」に告ぐ-「孤独なおひとりさま」の老後に覚悟はありますか
  • 行き過ぎた「女尊男卑」の果てに
  • 「アエラ族」の品格と孤独
  • 「女」に生まれたことは本当に損か-「アエラ族」よ、何が言いたい
  • リーマン・ショックが日本人に「家庭」を取り戻させた

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