2月 142010
 

やりたいことがないヤツは社会起業家になれ
山本繁,メディアファクトリー,2009

「“想い”と“頭脳”で稼ぐ 社会起業・実戦ガイド 「20円」で世界をつなぐ仕事」(小暮真久,日本能率協会マネジメントセンター)を読んで,社会起業なるものに興味を持った.社会に貢献したいという熱い想いに共感するからであり,また,その想いをビジネスとして実現するところに興味を持つからだ.大学に籍を置く私なんかは,自分でビジネスをするということからは縁遠いが(研究費を稼ぐためにビジネスをしているとも言えなくはないが),教育と研究を通して社会貢献することが使命であるので,共感するところがあるのだろう.

本書のタイトル「やりたいことがないヤツは社会起業家になれ」を見て,真っ先に頭に浮かんだのは,やりたいことがないヤツに起業なんてできるのだろうか?という疑問だった.そもそも私など,教育と研究がしたい,それによって社会に貢献したいという想いを持って,今の職業を選んだ.修士課程のとき,23歳のときだ.起業するにしても,「これをするぞ!」という熱い情熱を持って起業するものだと思っていた.だから,「やりたいことがないヤツは社会起業家になれ」には違和感があったわけだ.

なぜ,やりたいことがないヤツなのか.著者の山本繁氏はこう書いている.

やりたいことがないと言える人は,自分に正直な人だ.そして,自己実現のためではなく,人のために働ける人だと思う.それは,何にでも対応できる柔軟性を持っているということでもある.そんな人だからこそ,他人と向き合い,思いを汲み取り,ニーズを探り出すことができるのだ.僕は,それこそがやりたいことがない人の持つ才能だと思っている.社会起業家は,そうやって徹底的に人に社会に寄り添っていくことで,社会問題を解決するビジネスモデルを磨き上げていく.

これと言ってやりたいことが決まっているわけではないが,社会に貢献したい,社会問題を解決したいという熱い想いがあるなら,ニーズを探って,それに応えていくことができるというわけだ.やりたいことがないのと,やる気がないのとは全く違う.山本氏は,学生時代に起業したり,劇団に入ったり,ボランティアをしたり,積極的に行動できるタイプだ.しかし,本当にやりたいと思えることが見付からなかったという.それで,苦しんだという.そして,藻掻いた先にあったのが,社会起業だった.

ニート出身の作家を育てた「神保町小説アカデミー」,ニートやひきこもりの若者をインターネットで繋いだ「オールニートニッポン」,漫画家の卵に住居支援をする「トキワ荘プロジェクト」,ニートを川上で予防する「日本中退予防研究所」….どのプロジェクトにも僕のたくさんの失敗と学びが詰まっていて,一歩一歩成長し次のステップに生かしてきたことがわかっていただけるだろう.

失敗,苦悩,そして成功が赤裸々に語られている.それが本書「やりたいことがないヤツは社会起業家になれ」の魅力だろう.「“想い”と“頭脳”で稼ぐ 社会起業・実戦ガイド 「20円」で世界をつなぐ仕事」(小暮真久,日本能率協会マネジメントセンター)を読むと,いきなり世界を股に掛けたビジネスの話になり,超一流コンサルタント会社で腕を磨いた敏腕ビジネスマンだから社会起業ができたんだとも感じられる.しかし,本書を読むと必ずしもそうではないことがわかる.それでも,やはり,ビジネスモデルを確立するところが鍵であり,そこにはビジネスセンスが要求される.また,ゼロからのスタートとなるから,自分のことを犠牲にして,がむしゃらに働く時期も必要なことがわかる.

社会貢献したい,社会問題を解決したいという想いはあるが,どうしたらいいのかわからないという人に読んで欲しい.

世間に名の知れた一流企業に入社して,無難に人生を送れたらそれでいいと思っているような大学生に読んで欲しい.

目次

  • やりたいことが何もない!
  • ボランティアから社会起業へ─神保町小説アカデミー
  • 事業化失敗で大赤字─オールニートニッポン
  • 三度目の挑戦で黒字に─トキワ荘プロジェクト
  • 新たな挑戦─日本中退予防研究所
  • 社会起業家になりたい人へ─はじめの一歩

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