5月 302010
 

「なんとかランキング」というのは,ゴシップ好きな大衆の注目を集め,話のネタを提供するのには実に有意義な代物だ.もちろん,大学にもランキングがある.ただ,「東洋経済の本当に強い大学ランキングは本当に意味のある大学ランキングか」に書いた通り,おおよそ意味のあるランキングだとは思えない.それでも,ランキングが公表されてしまえば,それが一人歩きしてしまうので無視もできない.

研究力を評価する指標として代表的なのは論文数だ.インターネットを徘徊していると,「論文数が多い大学は優秀」という暴言が目立つ.研究者の数で規格化されているのかとか,研究資金で規格化されているのかとか,そういうところに目が向かないのが嘆かわしい.研究者が多いマンモス大学なら,論文数は多くて当然であって,凄くも何ともない.被引用数も同じだ.比較するためには,公平な評価基準を用いなければならない.

こういう指摘は,誰でもできるし,誰もがしている.しかし,そんな指摘は無意味だ.負け犬の遠吠えでしかない.文句があるなら,まともなランキングを示してみろということだ.だから,ここに独自の大学ランキングを示す.

研究生産性で評価する日本の大学ランキング

量より質が大切だ!とはよく言われることだ.それなのに,どうして研究成果が量だけで,つまり論文数や被引用数だけで評価されるのか.全く不思議だ.ただ,質の評価が極めて難しいのは確かであり,私が質を評価できるわけでもない.

そこで,ここでは,研究の生産性に着目した大学ランキングを作成する.具体的には,学術論文が1回引用されるのに使用した研究費,学術論文を1報書くのに使用した研究費を評価指標として,大学ランキングを作成する.これが最良の指標とは言わないが,研究の生産性や効率性を評価する指標にはなっており,馬鹿みたいに論文数だけで評価するよりは遙かにましだろう.

私が独自に作成した,研究効率を基準とした大学ランキングがこれだ!

順位
大学名
世界
順位
被引用数
[回]
論文数
[報]
研究費
[億円]
論文
単価
[万円]
被引用
単価
[万円]
1 千葉大学 311 148,811 12,659 18.3034 145 12.3
2 金沢大学 396 108,928 9,374 14.5891 156 13.4
3 岡山大学 343 130,575 13,558 18.2988 135 14.0
4 大阪大学 37 628,365 44,707 91.3258 204 14.5
5 筑波大学 231 197,384 17,911 30.2963 169 15.3
6 広島大学 298 155,650 16,356 24.3704 149 15.7
7 東京工業大学 171 255,204 24,825 43.1963 174 16.9
8 九州大学 124 312,666 29,457 54.8825 186 17.6
9 京都大学 31 732,732 52,735 131.8299 250 18.0
10 東京大学 11 1,041,057 71,838 187.5031 261 18.0
11 名古屋大学 110 338,129 28,093 61.7893 220 18.3
12 北海道大学 146 284,189 28,809 56.1070 195 19.7
13 東北大学 65 473,014 42,509 96.8776 228 20.5
14 神戸大学 356 124,372 11,832 25.8906 219 20.8
  • 順位: 研究生産性(学術論文が1回引用されるのに必要な研究費)に基づいた順位.ただし,世界順位が400位以内の日本の国立大学のみを対象としている.
  • 世界順位: トムソン・ロイター(米国ニューヨーク)が2010年4月に発表した「論文の引用動向による日本の研究機関ランキング」における世界順位.1999〜2009年の10年間を対象としている.
  • 被引用数: トムソン・ロイター(米国ニューヨーク)が2010年4月に発表した「論文の引用動向による日本の研究機関ランキング」における被引用数.1999〜2009年の10年間を対象としている.
  • 論文数: トムソン・ロイター(米国ニューヨーク)が2010年4月に発表した「論文の引用動向による日本の研究機関ランキング」における論文数.1999〜2009年の10年間を対象としている.
  • 研究費: 東洋経済新報社が2008年10月に発表した「本当に強い大学ランキング」に記載された科学研究費補助金.文科省08年度採択(新規採択+継続分)の速報ベース(2008年4月発表).
  • 論文単価: =研究費/(論文数/10)
  • 被引用単価: =研究費/(被引用数/10)

大学の研究生産性ランキングからわかること

第一に,天下の東京大学はたかが日本国内10位にすぎないということ.投入される莫大な研究資金(断トツで第一位)を効率的に使用しているとは言えないということ.

第二に,京都大学は東京大学と大差ないということ.

第三に,地方大学の健闘が素晴らしいということ.世界順位400位以下も含めてランキングをしなおせば,東京大学や京都大学はランク圏外に出てしまうのではないかということ.

第四に,神戸大学や東北大学の生産性の低さが目立つということ.

研究の生産性を上げろとはよく言われることだが,生産性を上げるためには,何がボトルネック(阻害要因)になっているのかを見極めなければならない.ここで示した大学ランキングを見ていると,研究資金がボトルネックではないという仮説が説得力を持つように思われる.つまり,東大や京大に今以上に研究資金を注ぎ込んだところで,生産性はそれほど向上しないと推測される.

もちろん,ここで用いたのは各大学を一括してまとめたデータであり,学部の構成や研究者個人の能力のバラツキなどは一切考慮されていない.このため,この研究生産性ランキングを鵜呑みにしてはいけない.しかし,そうではあっても,示唆を与える内容を含むのも確かだ.

話のネタにどうぞ.

異論・反論も大歓迎ですが,データを示して下さいね.感情論を言っても仕方がないので.

ちなみに,私のスタンスは「論文数なんて糞食らえ!」です.一人の研究者が一年間に書ける論文の数を制限しろと言いたいくらいに.

  6 Responses to “研究効率で見る本当の大学ランキング: 学術論文が1回引用されるのに必要な研究費”

  1. 被引用単価はひとまずおいておいて、現在までの私の論文単価(研究費通算使用額/ファースト論文数)は30万くらいで日本のトップクラスかもしれませんw

    東大が強く見える指標、そうでもない指標など、さまざまな評価方法があった方が客観的ながんばりを評価できそうでいいですね。

  2. サムさんの言う通りだと思うわけです.まともな評価指標なんて,そう簡単に設定できるものではありません.多様な評価指標があって然るべきだと思います.少なくとも,論文数で評価というのはセンスがなさすぎますね.IQ低そうです.

    なお,ここでは科研費だけを対象としていますから,JSTやNEDOなどから莫大な研究資金を得ているところは,さらに順位を落とします.

    論文単価30万円というのは,平均値を凌駕していますね.被引用数は若手に不利な評価指標ですから,キャリアを積んでから気にすればよいと思います.逆に,40歳にもなって被引用数が極端に少ないようだと,何してんだ?と言われても仕方ないでしょうね.

  3. 面白い指標です。
    東大京大は大規模かつニッチな研究が多いと思うので順位が低くなるのは仕方ない気がしますが、地方国立大学同士の比較の指標として有意義だと思います。

    研究分野ごとに細かく比較したランキングにこの指標を使うのがベストかもしれません。

    • この指標がベストだとかは全く思っていませんが,多様な指標があってしかるべきだし,そのうちの1つにはなると思っています.外部から押し付けられた指標での評価に一喜一憂している暇があるなら,自分の頭で考えろとは言いたいですね.

  4. 研究費だけでなく常勤教職員の人件費なども含めた投入総金額を基準にするとどうなるでしょう? 旧帝大 および みなし旧帝大もどき は、人員配置が厚いですよ。都会なら地域手当も高いし。さらに、教職員一人あたりの学生数で割ると、教育貢献(教育負担とは言いたくないです)による正規化もできそうです。

    • mintさん,どこだったか覚えていない(探せばすぐにわかる)のですが,このアイディアをもとに,非常に精緻な計算をされていた方がおられます.

Leave a Reply to aki Cancel reply

You may use these HTML tags and attributes: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>