9月 042010
 

生きがいの教室―人生の意味を問う「生きがい教育」のすすめ
飯田史彦,PHP研究所,2004

飯田氏の「[決定版]生きがいの創造」で解説されている「生きがい論」の教育,あるいは「生きがい論」に基づく教育を実践している教師の取り組みについてまとめた本と紹介されていたので,読んでみた.

先に書いたが,絶対権力者が一方的に知識を押し付ける講義という場で取り扱われる内容については極めて慎重であるべきであり,そういう観点から,「生きがい論」というのは厄介なものになりかねない.私には至極真っ当な意見に思えても,そうは思わない人達も少なくないだろう.そこで,実際に教育現場で「生きがい教育」に取り組んでいる人達がどのように実践しているのかに興味を持ったわけだ.

本書前半は,「[決定版]生きがいの創造」からの抜粋.後半が,教師らによる実践レポートとなっている.このため,類書を読んでいれば前半は読み飛ばせばいい.ポイントは後半の実践レポートだ.実践は,小学校から大学,さらに専門学校まで網羅されており,読者の興味に応じて読める.教師による記録もあれば,授業を受けた学生や生徒の感想文もある.正直なところ,心に強く響く感想文もあったが,全体的に密度が薄い.やや期待外れではあったが,「生きがい論」に基づく教育の実践形態とその効果について知ることはできた.

「[決定版]生きがいの創造」の読書記録では,「生きがい論」の内容について,あまり触れなかったので,ここで紹介しておくことにする.まず,生きがいとは何か.その定義から見ておこう.

「生きがい」とは,自分という人間の存在価値を認識することから生じる,「より価値ある人生を創造しようとする意志」のことである.

これをふまえて,生きがいを大切にする1つの人生観として,ブレイクスルー思考が提唱されている.個人的に呼称には違和感があるが,中身は頷ける.

ブレイクスルー思考とは,「すべての物事には意味と価値があり,表面的には失敗・挫折・不運のように見える出来事も,すべて自分の成長のために用意された順調な試練である」という信念を持つことによって,「その試練に挑戦するだけで,乗り越えたのと同じくらいの価値がある」という自尊心を抱きながら,数々の試練に彩られた自分の人生を全面的に肯定し,受容し,できるだけ楽しみながら生きていこうとする人生観のことをいう.

そして,このブレイクスルー思考,あるいは「生きがい論」を支えるのが次の5つの仮説だ.

  • 仮説1: 人間は,トランスパーソナルな(物質としての自分を越えた精神的な)存在である.
  • 仮説2: 人間の本質は,肉体に宿っている(つながっている)意識体であり,修業の場である物質世界を訪れては,生と死を繰り返しながら成長している.
  • 仮説3: 人生とは,死・病気・人間関係などの様々な試練や経験を通じて学び,成長するための学校(修業の機会)であり,自分自身で計画した問題集である.したがって,人生で直面するすべての事象には意味や価値があり,すべての体験は,予定通りに順調な学びの過程なのである.
  • 仮説4: 人生では,「自分が発した感情や言動が,巡り巡って自分に返ってくる」という,因果関係の法則が働いている.この法則を活用して,愛のある創造的な言動を心がければ,自分の未来は,自分の意思と努力によって変えることができる.
  • 仮説5: 人間は,自分に最適な両親(修業環境)を選んで生まれてきており,夫婦や家族のような身近な人々は,「ソウルメイト」として,過去や未来の数多くの人生でも,立場を交代しながら身近で生きる.

本書「生きがいの教室」の中でもくどいほど繰り返されているが,これらの仮説を真理として押し付けるものでは決してないというのが,「生きがい論」のスタンスだ.信じるも信じないも,それは個々人が判断すればいいとされている.物質的でないことは全部宗教だと考える人もいるので,「生きがい論」は人生観であって宗教ではないということが何度も書かれてある.下手な道徳の授業よりも,よほど高い効果が得られると思うのだが...

まとめると,「[決定版]生きがいの創造」は読んでみる価値がある.共感できる人にとっては人生を変える本になる可能性もある.私も,新たに気付くことがあった.一方,全く共感できないどころか,嫌悪感を抱く人もいるだろうが,それはそれで自己認識を高める役に立ったと思えばいい.そういう人の生き甲斐が何であるかを聞いてみたい気もする.

目次

第1章 「生きがい教育」とは何か

  • 心の真ん中が空っぽの子どもたち
  • 「生きがい」を創造する人生観
  • 「生きがい論」の七つの特徴
  • 「生きがい教師」の心がけ

第2章 「生きがい教育」の実践レポート

  • 大学での試み
  • 高等専門学校での試み
  • 高等学校での試み
  • 看護学校での試み
  • 中学校での試み
  • 小学校での試み

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