9月 072010
 

大学教授という仕事
杉原厚吉,水曜社,2010

東京大学名誉教授である著者が,大学教授とはどのような仕事をしているのかを,自分を例にまとめたもの.大学教員(工学系)としてのキャリアがある程度あるなら,本書に書かれていることに,あまり新鮮味はないだろう.そうだよねと思う程度だ.そういう意味では,大学教授なるものに縁はないが興味がある人,あるいは縁を持たざるを得ない大学生などは読んでみるとよいのかもしれない.ただし,文系と理系では全く異なるだろうことを注意する必要はある.

私がまだ助手の頃,研究室の学生に真顔で質問されたことがある.

「○○先生(研究室の教授)って,いつも何をしてるんですか?」

確かに,学生にしてみれば,3回生までは時々講義をしてもらう人であり,研究室配属後は時々研究の進捗状況を報告しなければならない人であって,普段教授が何をしているかなど知るよしもない.大学にいないことが多く,いても必ずしも研究室に顔を出すわけでもないので,学生にしてみたら,教授の生態は謎に包まれているわけだ.いつも一緒にいる助教(助手)とは全く異なる.

そんな質問があったことを伝えると,その教授は苦笑いしておられた.そりゃ,暇人に見えるだろうなぁと.

今では,研究室スタッフのスケジュールはサイボウズというグループウェアで一括管理しており,大学入試などの極秘任務を除いて,私のスケジュールはすべて学生がウェブ上で閲覧できるようにしている.まあ,京都大学大学院工学研究科准教授の中で,年間出張日数が平均値の2倍という統計データからも明らかなように,私は平均的な准教授でないため,あまり参考にはならないのだが...

本書「大学教授という仕事」には,思わず大きく頷いてしまうことがたくさん書かれている.例えば,学生が書いた論文原稿の添削の大変さなど.自分が大学院生および駆け出しの助手であった頃,当時の教授には徹底的に原稿の添削と学会発表の指導をしていただいた.特に英語を.研究者としての現在の自分があるのは間違いなくそのおかげなので,直接には返せないその恩に報いるためと思って,できるかぎり学生の原稿添削と学会発表指導には時間を割いている.杉原氏が指摘しているように,学生が書いた原稿をできるだけ元の文章を生かしながら修正するよりも,自分でゼロから書いた方が圧倒的に速い.数分の1の時間で書けるだろう.それに,添削を一生懸命にしたところで,大学教員として多少なりとも評価してもらえるわけでもない.それでも,学生に成長してもらうには必要な作業だ.

大学内の仕事だけでなく,学外の仕事も多い.特に,研究活動の母体ともなる学協会に関連する仕事の量は尋常ではない.相互扶助の観点から,研究者としては学会活動に貢献する義務があるが,基本的にボランティア活動である.自分が属する研究分野の発展を願って,多くの研究者が貴重な時間を割いて活動している.大学での地位や研究者としての知名度が上がるにつれて,このような仕事は増えるばかりだ.もちろん,日本国内の学会だけではない.私も,IFAC(国際自動制御連盟)の技術委員会のVice-ChairやJournal of Process ControlのAssociate Editorなどを務めさせてもらっている.先日,European Journal of ControlのAssociate Editorも務めることになった.

ともかく,「大学教授という仕事」に興味があるなら本書を読んでみるのもよいだろう.あるいは,このブログでも,大学教員の実態を「給与編」,「休暇編」,「学会編」にわけて紹介しているので,暇潰しに見てもらうのも悪くないだろう.

目次

  • ストレスの少ない職業
  • 講義の担当
  • 研究と学生指導
  • 研究資金の獲得
  • 論文の生産
  • 管理運営の仕事
  • 入学試験
  • 学会活動
  • 国際会議活動
  • 審査
  • 他大学の非常勤講師
  • 著作活動
  • 研究成果の社会還元
  • 専門知識の社会還元
  • 大学教授のセルフマネージメント

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