1月 222011
 

バルティモアで開催された国際会議 IFPAC Annual Meeting, Jan. 17-21, 2011, Baltimore, MD, USA の参加報告です.

IFPACの正式名称は,”25th INTERNATIONAL FORUM AND EXHIBITION PROCESS ANALYTICAL TECHNOLOGY (Process Analysis & Control)”のようです.主要テーマはQbD(Quality by Design)とPAT(Process Analytical Technology)ですが,荒っぽく言うと,NIR(近赤外分光)などの分光分析技術を用いて,医薬品製造装置内部の製品の状態をリアルタイムで管理できるようにし,製造後の品質検査による品質保証ではなく,製造中の工程管理による品質保証によって,RTRt(Real-Time Release testing)を実現しようというものです.うまくいくと,製造リードタイムと検査コストが激減します.製剤のパラダイムシフトと言われています.日本では動きが鈍いようですが,欧米の規制当局(FDAなど)とメガファーマは速いです.

IFPAC会場@Baltimore Marriott Waterfront
IFPAC会場@Baltimore Marriott Waterfront

さて,今回初めて参加した国際会議IFPACの規模ですが,IFPACでの発表論文数が288件,同時開催しているOnSiteの件数が51件で,合計300件を超えます.未確認(参加者リストで数えていない)ですが,参加者数も300人程度でしょうか.投稿論文は査読なしで,全部発表させているようです.少しだけポスターもありますが,これは遅れて投稿されたもののような気がします.

興味深いのは,大学からの発表がほとんどなく,欧米企業からの発表がほとんどだという点です.ファイザー,メルク,GSK,ノバルティス,エリリリーなど大手製薬メーカーがズラリと並び,そこに分析機器メーカーやソフトウェアメーカー,制御機器メーカー,さらに規制当局であるFDAが加わります.面白いのは,FBIの発表もあることで,自分が参加する会議のトピックに”counterterrorism”があるなんて不思議な気がします.

IFPACは,実際にQbD/PAT/RTRtに取り組んでいる企業からの発表がほとんどであり,その技術開発状況や課題,規制当局の方針が発表・議論される場という位置づけです.このため,現状を把握するのには非常に役立ちました.大学で研究を進めている立場としては,この分野で国際的に重要な課題は何なのかを理解できたのは極めて有益でした.

ちなみに,日本の製薬企業からの発表はありませんでした.私のグループからの発表が,第一三共との共同研究なので,これを含めて1件です.ファイザーやメルクが研究開発部隊を引き連れてやってきているのとは対照的ですね.大丈夫なんでしょうか.

会議が正式に始まる日の前日午後に,2つのワークショップがパラレルで開催されました.

  • Pharma Workshop – I: The Role of Modeling in QbD – Technical and Regulatory Considerations
  • HPI Workshop – II: Multi-Variate Statistics for Plant-Wide Monitoring and Optimization: Mature Tools for New Uses

ワークショップは盛況で,終了後にWelcome Dinnerがありました.

IFPACでは,会議参加費(約2000ドル)にホテル代と食事代もすべて含まれています.このため,朝から夜までホテルに缶詰で,発表を聴いたり,議論をしたりとなります.初日午前のプレナリーセッションを除くと,8会場でパラレルセッションであり,セッションによって前後しますが,朝7:25開始,夜9:30終了というプログラムです.時差ボケの体には厳しい会議です.

日本からの参加者は,京都大学の他に,横河電機,アステラス,第一三共,パウレックといったところです.

まとめると,少なくとも私のようにデータ解析手法そのものを開発しているような大学の研究者が研究成果の発表を主たる目的として参加するような会議ではありません.企業でQbD/PAT/RTRtに携わっている研究者や技術者が,規制当局や他社の研究者や技術者との情報交換を目的にして参加する会議です.缶詰で議論しますから,密な情報交換が可能です.そういう観点から,日本からの参加者がこんなに少なくて本当に大丈夫なのかというのが正直な感想です.

研究発表という観点からは,私自身が継続的に参加・発表すべき学会とは必ずしも思いませんが,産業界の現状を把握するという意味ではベストな学会だと思います.今回は参加して大正解でした.メガファーマなどが何をしようとしているのか,どのような課題を抱えているのかが明確になりました.

なお,講演申込をすれば誰でも講演できるという会議なので,当然ながら,玉石混淆になります.大学の研究者の視点からは,概念ばかりで具体性がないと思える講演も少なからずありました.概念が素晴らしければ良いのですが,そんなこと言われなくても分かってるぞみたいなのも.また,数頁の論文を書かせることもなく,酷いのは,要旨(abstract)すらないような発表もありました.そういう観点からは,オーガナイズがいまいちで,改善すべき点は色々あると思います.

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