1月 252011
 

イリノイ州に滞在する機会を活かして,全米屈指の博物館と評されるシカゴ科学産業博物館(The Museum of Science and Industry, Chicago)を訪問した.

科学産業博物館は,シカゴのダウンタウンから少し南のハイドパーク地区にあり,ダウンタウンからは湖に面した道路を通って行く.急激に気温が低下し,1日中−10℃以下になったためか,湖も凍っているようだ.

ちなみに,シカゴ南部は全米屈指の危険地帯なので,ダウンタウンから科学産業博物館にかけて,湖に面した道路以外は通ってはいけないそうだ.アメリカの大都市につきものの「赤信号でも絶対に止まるな」と言われるエリアだ.

シカゴ科学産業博物館
シカゴ科学産業博物館

ワシントンDCのモールにあるスミソニアン博物館を筆頭に,アメリカの博物館は大概スケールが大きく,展示も充実している.シカゴには,科学産業博物館の他にも,ニューヨークのメトロポリタン美術館,ボストン美術館と並んで米国三大美術館に数えられるシカゴ美術館(The Art Institute of Chicago),スー(SUE)という名前のT-REX(Tyrannosaurus rex)の恐竜化石があることで有名なフィールド自然史博物館(The Field Museum)など,アメリカを代表する美術館や博物館がある.

シカゴ科学産業博物館は,様々な科学を体験を通して学習できる科学博物館と様々な産業を代表する展示からなる産業博物館とが合体したものだ.

飛行機や汽車の展示@シカゴ科学産業博物館
飛行機や汽車の展示@シカゴ科学産業博物館

竜巻などの原理を体験@シカゴ科学産業博物館
竜巻などの原理を体験@シカゴ科学産業博物館

不気味な人体の輪切り

午後に科学産業博物館を訪れ,最初に目指したのが,ガイドブックに大人気と書かれていた人体の輪切りコーナー.本物の人間の身体全体を薄くスライスしたもの,一部分を輪切りにしたものなど,大小様々の人体の薄切りが展示されている.

1つだけ写真を載せておくが,かなり強烈だ.

本物の人体の輪切り@シカゴ科学産業博物館
本物の人体の輪切り@シカゴ科学産業博物館

輪切りの他には,人間の体内の血管系だけを取り出したもの,脳・神経系だけを取り出したもの,消化器系(内臓)だけを取り出したものなどが展示されている.

血管・神経・内臓@シカゴ科学産業博物館
血管・神経・内臓@シカゴ科学産業博物館

身の毛がよだちそうな胎児の標本

人体の輪切りコーナーの隣にあるのが,胎児の標本コーナー.受精後数日から出産前までの胎児のホルマリン漬け(?)がズラリと並べられている.

最初の方は非常に小さい.数ミリメートルくらいだ.それが徐々に大きくなり,人間の形をしてくる.小さな手足が伸びてきて,臓器が形成されていく.数ヶ月くらいになると,ハッキリと人間の形をしており,かなり大きいので,気味が悪い.

双子の胎児の標本@シカゴ科学産業博物館
双子の胎児の標本@シカゴ科学産業博物館

生まれたての赤ちゃんは可愛いと思えるが,この胎児の標本はダメだ.悪夢に出てきそうだ.それでも,1つ1つじっくりと観察する.

展示を眺めていて気付いたことがある.それは,圧倒的に男の胎児が多いということだ.2〜3倍というレベルではなく,7〜8倍くらいの印象だ.胎児をランダムに取り出せば,男女比はおよそ1対1になるはずなのだから,それだけ男は胎児で死亡しやすいということなのか.

かなり成長した胎児の標本@シカゴ科学産業博物館
かなり成長した胎児の標本@シカゴ科学産業博物館

フーコーの振り子

人類に衝撃を与えた実験の1つ.それがフーコーの振り子だ.「世界でもっとも美しい10の科学実験」(ロバート・P・クリース,日経BP社)にも選ばれている.

ただ振り子を振らすだけの実験で,実に地味だ.地面に対して振り子が少しずつ角度を変えていく.ただそれだけのことだが,その変化が地球が自転していることを目に見える形で人類に示した.史上最高のデモンストレーションだと言える.

フーコーの振り子で自転を見る@シカゴ科学産業博物館
フーコーの振り子で自転を見る@シカゴ科学産業博物館

元素をぶつけて化学反応を起こす

あまり目立たない奥の方に,反応実験室(Reaction Lab)がある.これが良くできている.

テーブルの上に,アイスホッケーのパックを小さくしたような黒いものが10個ほどあり,中央に元素の周期表が描かれている.そのパックを周期表の元素のところへ持っていくと,そのパックがその元素になる.

種も仕掛けもある元素の周期表@シカゴ科学産業博物館
種も仕掛けもある元素の周期表@シカゴ科学産業博物館

何が起こるのかも知らないまま,とりあえず,ナトリウム(Na)のパックを2つ,塩素(Cl2)のパックを1つ作り,3つのパックをガシャンとぶつけてみる.

ナトリウム(Na:紫)と塩素(Cl2:緑)@シカゴ科学産業博物館
ナトリウム(Na:紫)と塩素(Cl2:緑)@シカゴ科学産業博物館

すると,パックから稲妻(というよりプラズマか)が出ているかのようにテーブルが輝き,化学反応が起こる.ナトリウム(Na)と塩素(Cl2)をぶつけたのだから,できるのは塩化ナトリウム(NaCl)だ.稲妻の後,大量の塩(もちろん画像)がテーブルを埋め尽くす.

ナトリウムと塩素をぶつければ塩が誕生@シカゴ科学産業博物館
ナトリウムと塩素をぶつければ塩が誕生@シカゴ科学産業博物館

なかなか面白いので,次に,水素(H2)のパックと酸素(O2)のパックをぶつけてみた.水(H2O)ができると予想していたら,なんと過酸化水素水(H2O2)ができた.テーブル上には”BLEACH”(漂白)という文字が表示された.なるほど,確かに量論関係からは過酸化水素水(H2O2)ができるに決まっている.

アメリカ流の勧善懲悪物語

とても展示内容を紹介しきれるものではないが,シカゴ科学産業博物館の展示物の目玉の1つが,第一次・第二次世界大戦で活躍したドイツ軍の潜水艦U-Boatだ.全長76mほどの巨大な潜水艦がそのまま展示されており,チケットを入手できれば艦内も見学できる.

展示されているU-Boatは,アメリカが仕掛けた捕獲作戦で見事に捕らえたものだ.ドイツの敵国はU-Boatに苦しめられていたため,捕獲作戦のメンバーはヒーロー扱いで,捕獲作戦がいかに凄いものであったかが喧伝されている.

正義の味方が悪者をやっつけたという勧善懲悪の物語がそこにある.そして,それしかない.水戸黄門かウルトラマン並みに単純化された図式だ.あるいはハリウッド映画と同じだ.相手が何であろうが,それこそ宇宙人であろうが,アメリカが地球を救う.この発想で,イラクやアフガニスタンをやっつけているのだろう.恐れ入るほかない.

凄い剣幕で追い出される

艦内には入っていないが,U-Boatを見学している最中に,「もうすぐ閉館だから出ていけ!」と展示室から追い出される.午後3:55頃のことだ.閉館時間は午後4:00.それ以上は仕事なんかしていられるかということだ.これもまたアメリカらしい.

博物館内の至る処にロープが張られ,立入禁止状態になる.うかうかしていると閉じ込められてしまいそうだ.一斉に追い出すものだから,駐車場へ行くための出口は大混雑,駐車場の出口も大混雑だ.

焼き肉屋さんへ

午後4時過ぎだと外はまだ明るい.シカゴのダウンタウンを通過して,北の方にある焼き肉屋へと向かう.普通に日本語が通じる店で,有名人の写真とサインが所狭しと飾ってある.イチローらのサインボールもあった.日本人駐在員が多いシカゴで評判の店だけあって,確かに美味しい.

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