2月 072011
 

2010年末,複数の新聞に下記のニュースが掲載されたのをご存じだろうか.

京都大学は26日、5年一貫教育を施す全寮制の「学寮型大学院」を新設する方針を固めた。専門性に加えて幅広い教養を備え、企業や官公庁、国際機関などで活躍する「リーダー」を育成するのが狙い。文系・理系の枠を超えた必修科目を設けるほか、2カ国語以上の外国語習得も課す。授業はすべて英語で運営する計画だ。2012年4月の発足を目指す。

「次代のリーダーを養成する」という文言は,どこの大学や大学院のウェブサイトを見ても,大抵,書いてある.まあ,有名無実の決まり文句だ.実際,カリキュラムを見れば,本気でリーダーを養成するつもりなんてないらしいことは一目瞭然だ.必修科目にリーダーシップ論などがないのだから.

しかしながら,昨今,従来とは明らかに異なる,リーダーの養成を標榜する講義を開講する動きは広がりつつあるように思う.だが,上記の京都大学の計画は,単に講義を開講するのではなく,新しい大学院を設置するというのだから驚きだ.定員は20名ほどで,文系・理系を問わず広く人材を求め,5年でPh.D.を授与するという.

しかし,だ.私は思わざるを得ない.なぜ5年なのかと.学部卒業直後にこの大学院に進学し,つつがなく修了したら27歳だ.社会から隔離されたまま27歳になって,社会でリーダーとして活躍するというのは現実的なストーリーなのだろうか.もちろん,学生と社会を繋げることも計画されている.具体的には,5年間の在学中に1年間は社会で修業することになっている.だが,それで十分だろうか.むしろ,博士乱造の元凶である社会人博士コースなんて廃止してしまって(あまり関係ないが重大な問題だと思っているので言わずにおれない),社会人を中心に受け入れたらどうかと思う.少なくとも,社会経験のない学生だけが20名集まるよりも,半数程度を社会経験豊富な30代40代が占める方が,目的を達成するのに適していると思う.もちろん,そんな人達が,得体の知れない,実績のない大学院に入学するかという問題はあるが.

想像するに,立案者の夢は,日本版(京大版)ハーバード大学ケネディスクールの実現といったところなのではないか.ケネディスクールは国際的に極めて高い評価を得ているリーダー養成機関だ.米国の政権中枢に多くの人材を輩出しているし,またそこから多くの人材を教授や講師として招いてもいる.もちろん米国だけではない.学生の半数近くは外国籍であり,修了後は各国で活躍しているらしい.また,学生の1/3以上が職歴7年以上のミッドキャリアだとされる.このケネディスクールにもPh.D.コースはあるが,基本は2年間の大学院修士課程だ.そこで2年間徹底的に鍛え上げられ,MPA(Master in Public Administration)が授与される.

方や,京大の学寮型大学院は5年一貫教育だという.ケネディスクールの2.5倍も時間をかけて,一体,何をしようというのだろうか.

ともかく,京大がやるとなれば,日本社会に一石を投じることになるだろう(成否はともかく話題にもならなかったら情けない).このブログでも度々書いているが,私はエリート教育が必要だと考えている(なおペーパーテストで点が取れる奴がエリートだとは全く思っていない)ので,日本でリーダー養成機関を設立しようとする動きは高く評価したい.

  2 Responses to “リーダー養成を目指す学寮型大学院構想@京都大学”

  1. 私もこの新大学院構想の記事については日経新聞で読みました.
    その時,ざっと読んだ感じでは松下政経塾の様な教育機関を創設するのかと勝手に想像していました.

    いずれにしろ,社会を牽引する人材の育成機関の創設については大いに期待しています.最初の数年は多分に実験的な要素が含まれるかと思いますが,リーダー育成のノウハウを蓄積できれば大変有意義な事だと考えています.
    一流の人材を輩出する為には大学側の企画経営者,運営事務職員,教員の全てが一流でなければなりません.非常に難しい事と思います.大学というシステムをどのように設計して最大限の社会貢献を達成するのか,京大の取り組みに注目しています.

  2. やるとなったら,日本のためにも,在籍する学生のためにも,本気で取り組むべきですね.
    文科省から教育予算を取ってくるためだけのパフォーマンスで終わらないことを祈ります.

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