2月 122011
 

ハーバード・ケネディスクールでは何をどう教えているか
杉村太郎,丸田昭輝,細田健一,英治出版,2004

ハーバード大学の公共政策大学院(ケネディスクール)に同時期に留学していた日本人が,日本にケネディスクールを紹介するために書いた本.様々な講義の紹介と教授へのインタビューなどから構成されている.リーダー養成機関として世界トップクラスの人気と実力を誇る大学院において,何がどのように教えられているかを知ることができる好著だ.留学してみたくなる.

ハーバード大学ケネディスクールが目指しているものは何か.それは「世界をよりよくする」ことであり,それを実行する意欲のある人材を世界から求め,それを実行するための能力を身に付けさせることである.このことは,本書にも繰り返し述べられている.このケネディスクールの信条は,学院長であったジョセフ・ナイ教授が卒業生に贈った言葉にもあらわれている.

「卒業する君ら全員が,大統領や総理大臣になるわけではない.しかし君らが社会に復帰して,どんな小さい部分でも何らかの仕事を任されたとしたら,その君らが任された世界の小さな部分をよくするよう努力してほしい.一人一人が任された部分が小さなものであっても,一人一人がその小さな部分をよりよく変える努力をすれば,世界全体を変革することができる.幸運を祈る」

それにしても,本書「ハーバード・ケネディスクールでは何をどう教えているか」で紹介されている講義を担当している教授陣の顔ぶれが凄い.もう,流石としか言いようがない.

しかし,それ以上に,大学院修士課程で猛烈に勉強に励む留学生の姿が印象的だ.予習のためのリーディング,講義やケース演習での発言や議論,レポート・ペーパーの提出.いずれもその要求水準が半端ではない.普通の日本の大学院における講義と比較すれば,1つの講義をこなすために必要な勉強量は文字通り桁違いではないだろうか.同じだけ貴重な時間を投資するなら,こういう環境で勉強したいと思うのは自然だろう.しかし,内向きな(しかもその傾向が強化されつつある)日本人はそんな世界があることすら知らない可能性がある.それを知らしめるという意味でも本書の意義は小さくない.

先日,「リーダー養成を目指す学寮型大学院構想@京都大学」に書いたように,京都大学も大学院でリーダーの養成を目指すらしい.5年間でPh.D.を取得する全寮制大学院だそうだが,そこでの学びがハーバード大学ケネディスクールを凌駕するようなものになるなら,日本の将来も明るい.

目次

GUIDANCE

今なぜMPAか

リーダーシップ養成カリキュラム

OUTLINE & COURSES

交渉力を育てる

  • ネゴシエーション ブライアン・マンデル教授

リーダーシップ力を育てる

  • リーダーシップ ロナルド・ハイフェッツ教授
  • 公共の倫理 ケネス・ウィンストン教授
  • 政治と正義 ノーム・チョムスキー教授
  • 政治家を育てる ミッキー・エドワーズ教授

マネジメント力を育てる

  • 戦略的行政経営 マリー・ジョー・ベネ教授
  • 公的組織のためのマーケティング マーラ・フェルチャー教授

分析力を育てる

  • 国際経済学 ジェフリー・フランケル教授
  • ファイナンス アカシ・ディープ教授

政策企画力を育てる

  • 日本の外交政策と意思決定 エズラ・ボーゲル教授
  • ジャーナリズム アレックス・ジョーンズ教授
  • 競争力のミクロ経済学 マイケル・ポーター教授
  • 米国における官民関係 ロジャー・ポーター教授
  • 環境政策 ウィリアム・クラーク教授
  • 経済発展への多角的・歴史的アプローチ ダニ・ロドリック教授 マーク・ローゼンズウィグ教授
  • 国内・外交問題の意志決定分析 グレアム・アリンソ教授
  • 国際関係論 スティーブン・ウォルト教授

あとがき – 卒業にあたって