2月 142011
 

もう随分と昔のことだが,2002年から2004年までの約2年間,日本学術振興会プロセスシステム工学第143委員会において,「制御性能監視〜プロセス産業での実用化を目指して〜」をテーマに掲げてワークショップNo.25の活動を実施した.ワークショップNo.25のウェブサイトでは,活動成果をまとめた最終報告書と共に,有志で開発した制御性能評価/監視/診断ツール”LoopDiag”を一般無償公開してきた.

制御性能診断ツール”LoopDiag”は,MATLABを使用して開発されたソフトウェアです.最小分散制御をベンチマークとする制御性能評価のほか,時系列データ解析,バルブスティクション(調節弁固着)検出などの実用的な機能が組み込まれています.

この紹介文に書いたとおり,なかなかの優れものだ(と自画自賛).実際,このツールの核心部分について書いた論文「空気圧式調節弁固着現象のモデル化と固着検出法の開発」では,意表を突く研究だったこともあってか,2005年度計測自動制御学会論文賞武田賞もいただいた.なお,ツール開発の立役者は住友化学の久下本氏だ.

住友化学では制御性能診断ツール”LoopDiag”を継続的に進化させて現場で活用されているそうだが,無償公開版に関しては完全に放置モードになっていた.しかし,制御性能評価・監視技術に対するニーズは衰えることを知らず,”LoopDiag”のソースファイルを提供して欲しいとの希望が寄せられている.

そこで,MATLABのソースファイルを公開することにした.ワークショップNo.25のウェブサイト中,制御性能診断ツールLoopDiagのページからダウンロードできる.

これに加えて,モデル不要な直接的PID調整法E-FRITを活用すれば,膨大な数のPID制御ループの性能を一気に評価・監視して,制御性能が悪いループを見付けだし,その原因を突き止め,チューニングが悪いループについては,運転データから最適なPID制御パラメータを求めるという手続きが完結する.どちらもMATLABのソースファイルを無償公開しているので,ちょっと手を加えれば,制御技術者や運転員にとって強力な道具になるはずだ.是非,活用していただきたい.そして,是非,活用した結果(良くても悪くても)をフィードバックしていただきたい.

LoopDiagでもE-FRITでも他でもそうだが,大学の研究者として,製造業の現場で本当に役立つことを目指した技術開発に取り組んでいると,強く感じることがある.それは,論文を書いたらおしまいの研究と本当に現場に資する研究との間に横たわる溝の大きさ・深さだ.これが理論と現場(現実)のギャップと呼ばれるものだが,この溝は覗き込む気のある人にしか見えないだろう.現場を無視した理論だけでなく,理論のない現場にも事欠かないが,「およそ理論を無視したものなら,そのようなものを技術とは呼ばないよ」と大昔にプラトンが著作「ゴルギアス」の中でソクラテスに語らせている.技術とは大変なものだ.そう感じながら,日本の製造現場における技術力の将来を憂う.

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