2月 232011
 

ハーバードからの贈り物 – Remember Who You Are
デイジー・ウェイドマン(著),幾島幸子(訳) ,ランダムハウス講談社,2004

素晴らしい本だ.図書館で借りて読んだのだが,購入して研究室の課題図書に指定した.学生には優れたリーダーになってもらいたいからね.

本書「ハーバードからの贈り物」は,ハーバードビジネススクールの学生(一度就職してからMBA取得のため在籍)が,自分自身が感銘を受けた教授陣による最終講義での訓話を集めたもの.ハーバードビジネススクールでは,最終講義の最後に,教授が学生に自分の体験に基づいた激励のメッセージを送るのが伝統となっているそうだ.「恒例の最後の授業にこそ,ハーバードの精神が息づいている」という卒業生も少なくないという.

収録されているメッセージは,いずれもリーダーやリーダーシップに関連している.これは,ハーバードビジネススクールの卒業生はリーダーとして活躍する人材であるという了解が両者にあるからだろう.それほどに人材育成に対する姿勢が明確なのだと言える.

本書「ハーバードからの贈り物」には,15人の教授からのメッセージが収められているが,いずれのメッセージも教授各々の体験・人生に深く根差しており,読み応えがある.もちろん,著者も指摘しているように,すべてのメッセージがすべての人に感銘を与えるわけではない.読者が歩んできた人生に応じて,心を揺さぶられるメッセージもあれば,そうでないメッセージもあるだろう.

私がこの本を読んで凄いと思ったのは,ある1つの大学院の教授陣が,自分の体験に基づいて,これだけのメッセージを学生にきちんと伝えているという事実だ.教授が自分の人生観を自分の言葉で学生に伝えていることだ.本書で語られている訓話を抽象化してしまえば,どれもこれも既に語られていることだろう.世の中に,哲学,自己啓発,人生論,リーダーシップ論などの書籍は掃いて捨てるほどある.そうそう新しい理論が出てくるものではない.しかし,語られているメッセージは浅薄な抽象論ではない.教員が自分の人生を通して学び,学生に伝えたいと切望した内容だ.真剣に講義を受講した学生が,こういう話を最終講義で聴けば,強い刺激を受けるだろう.その場にいることができない者としては,せめて本書「ハーバードからの贈り物」を読んで,雰囲気を味わうことにしよう.

ここでは,そんなメッセージの1つを紹介しておこう.最後に掲載されているキム・B・クラーク教授のメッセージからの抜粋になる.

今日,私の仕事は明日のリーダーを育てること−−より良い社会を作るための力を伸ばす手助けをすることだ.その力は,あなたたち一人ひとりのなかにある.(中略)あなたが将来,どこにいて,どんな組織で働こうと,あなたの周囲の人びとが「われわれはいったい誰を信頼できるのか?」と自問するとき,その答えは「あなた」であってほしい.これから未来へ向かって羽ばたくあなたには,大きな期待がかかっていることを肝に銘じてほしい.(中略)そこで求められるのは,最高レベルの誠実さと敬意と自己責任の確固たる基盤に立ち,社会に変化をもたらすリーダーだ.目標を高く掲げることを恐れず,大いなる夢と希望を持って,自分を信じ,周囲の人びとを信頼するリーダーである.あなたは,まさにそうしたリーダーの一人となる人間だ.だから私のアドバイスは簡単だ.入念に考え,賢明な選択をせよ.自分の人生を律する価値観や信条をしっかり見きわめ,それに忠実であれ.自分を見失わず,思う存分ハイカントリーを駆けよ.

目次

  • 転落から高みへ(ジャイ・ジャイクマー)
  • なぜ人はあなたのために働くのか(ティモシー・バトラー)
  • ラシュモア山での問い(トーマス・J・デロング)
  • 剥製の鳥(ジェフリー・F・レイポート)
  • 自分らしくあれ(リチャード・S・テッドロウ)
  • 黒か白か(トーマス・K・マックロウ)
  • まずい食事と真実(スティーヴン・P・カウフマン)
  • 同窓会(デイヴィッド・E・ベル)
  • 完璧を求めるな(ナンシー・F・ケーン)
  • キャサリン・ヘップバーンと私(ロザベス・モス・カンター)
  • サラの物語(H・ケント・ボウエン)
  • 今という瞬間を生きよ(フランシス・X・フライ)
  • レース(ヘンリー・B・ライリング)
  • 誓い(ニティン・ノーリア)
  • 自分を見失わないで(キム・B・クラーク)

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