3月 172011
 

ジャン=ジャック・ルソーは「社会契約論」の中で,「公共への奉仕が市民の仕事ではなくなり,彼らが自分の体ではなく金銭で奉仕するようになると,国家の滅亡は近い.戦場に赴く必要があるときに,彼らは金で軍隊を雇い,自分たちは家に引っ込んでいる」と指摘している.

「これからの正義の話をしよう」の中で,徴兵制よりも志願兵制が望ましいとする功利主義者と自由至上主義者(リバタリアン)の主張を吟味する際に,マイケル・サンデル氏はこのルソーの言葉を引用している.

近年,アメリカ上流階級の子弟は兵役に就かない.エリート大学の学生は兵役を選ばず,連邦議会議員の子息で軍隊にいるのはわずか2%にすぎない.結局,志願兵の多くは低所得者層に属しており,経済的な事情から入隊を希望している.志願兵制は一種の強制なのではないだろうか.それでも志願兵制は公平な制度なのだろうか.

兵役にまつわる一切のリスクにさらされる恐れがない圧倒的多数のアメリカ人は,恵まれないアメリカ人を雇って戦争をさせる一方で,血を流すことも心を惑わされることもなく,自分のことだけにかまけている.これは正しいことなのだろうか.マイケル・サンデル氏はこのように問いかける.

ルソーは戦場に赴く必要があるときについて語っているが,戦後最大の危機に見舞われている日本の現況は戦場ではないが非常事態であろう.そう思うと,「自分の体ではなく金銭で奉仕するようになると国家の滅亡は近い」という指摘は耳が痛い.

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