4月 102011
 

世の中には凄まじい数の国際会議があって,しかもその数は増える一方である.一度会議を作ってしまうと潰せないというのも悲しい真実だが,本質的には,これまで学界では目立たなかった国々(特にBRICsや東欧)の研究者の数が増え,そのレベルも着実に向上していることが大きな理由だろう.そのような新興国は自国での国際会議開催を強く希望するという事情もあって,近年,中国で開催される国際会議の数も非常に多くなっている.

この傾向そのものには何も文句はないのだが,最近,中国で開催される国際会議に関連して無性に気になることがある.それは,国際会議への論文投稿を呼び掛ける案内メールについてだ.通常,Call For Paper(CFP)と呼ばれるもので,シンポジウムやワークショップの名称,開催される時期と場所,会議の目的と歴史,論文投稿や参加申込みのスケジュール等々について記載されている重要な文書だ.研究者はCFPを見て,その会議に参加するかどうかを判断する.

問題だと感じているのは,中国で開催される国際会議のCFPだ.その理由を説明する前に,まずはCFPの一例を見てもらいたい.下図は,米国電気電子学会(IEEE)が主催する”IEEE International Conference on Computer Science and Information Technology”という国際会議のCFPで,先月,私宛に送付されてきたメールだ.

IEEE ICCSIT 2011のCFP
IEEE ICCSIT 2011のCFP

まず最も重要な件名だが,「2011年第四届计算机科学与信息技� ICCSIT 2011)」となっている.この時点で,よくスパムメールと判定されなかったものだと感心する.どうして国際会議の案内メールの件名が中国語なのか.

気を取り直して,メールの本文に進もう.正式な会議名の下に中国語訳があるのもどうかと思うが,最悪なのは,肝心の会議についての説明文だ.なんと驚くべきことに,英語よりも先に中国語で書かれている.どう考えても,おかしい.本当に,恐るべし,中華思想と言うほかない.自分たちを中心に宇宙が回っているのだろう.日本で国際会議が開催される場合に,こんなことがありえるとは想像できない.

正直,こういうCFPを送られると参加意欲が萎える.会議中のアナウンスなんかも中国語だらけなのだろうと想像がつくからだ.私が中国語ができればよいだけのことではあるが,しかし,気に入らない.

「フラット化する世界」における大学教育の国際競争」にも書いたが,昨今のトレンドを外挿して未来を描くなら,科学技術において日本が国際競争に勝てなくなるのは想像に難くない.中国やインドに追い抜かれるのは時間の問題だろう.もしそうなれば,当然ながら,労働力が安い海外に生産拠点を移すというレベルの話ではすまなくなる.研究開発拠点も優秀な人材を求めて海外に移る.本格的な日本の空洞化が起こる.日本の政府は全然気にしていないのかもしれないが...

そう言えば,産経ニュースに「震災乗じ「海外移籍話」、東北大研究者らにメール 「研究できない」は風評」という記事がある.

東日本大震災後に、海外の大学や研究機関から東京大や東北大の研究者らにヘッドハンティングを働き掛けるメールが相次いで届いていることが7日、分かった。

鈴木寛文部科学副大臣が大学関係者から聞いた話として同日の記者会見で明らかにした。日本での研究活動に制約があると決めつけた「風評被害」だとして不快感を表明した。

鈴木副大臣は具体的なメールの数などを明らかにしていないが、東北大などの相当数の優れた研究者らの元に海外から「被災で大変で研究活動ができないだろうから、これを機に移ってきたらどうか」などと「海外移籍」を持ちかける話が相次いでいるという。

副大臣が不快感を表明するのは勝手だが,日本の研究者の待遇は国際水準に遙かに劣る.実際に海外移籍する研究者が多数いるとすれば,それは風評被害が原因なのではなく,日本に魅力がないからだ.責任転嫁は恥ずかしい.上述の国際競争の話とあわせて,日本人はしっかり現実を認識した方がいい.そして,日本をどういう国にしたいのかを考え,行動すべきだ.

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