5月 112011
 

先日,友人から聞いた話をもとに「家族旅行?そんなの行ってたら成績悪くなるわよ!」を書いた.すると,「名前をなくした女神~ようこそママ友地獄へ」というドラマが流行っているのだと教えていただいた.残念ながら,これは見ていない.また,今のところ見る予定もない.その他に,「どうして勉強しないとダメなの?」という子供の質問にうまく答えられないという意見もいただいた.ここでは,この問いを取り上げたい.

「どうして勉強しないといけないの?」と子供に尋ねられたときに,どのように答えるか.そのときの親の答えで,その親の性質はかなりよく把握できると思う.

例えば,「勉強しないと,お父さんみたいになるわよ!」というのは恐らく最悪.仮にそれで子供が勉強することを納得したとしても.

例えば,「いい会社に入れないでしょ!」「いい大学に入れないでしょ!」というのも酷いと思う.正直,その価値観には同意できない.

あなたなら,どう答えるだろうか.

私の答えは,「大学新入生へ: 受講生に宛てた本気モードでのメッセージ」や「君たちはどう生きるか」に書いたように,一言でいえば,「社会に貢献するため」ということになる.ここに,「君たちはどう生きるか」(吉野源三郎,岩波書店)に書かれている,叔父さんから主人公のコペル君へのメッセージを再掲しておこう.

いろいろな学問は,人類の今までの経験を一まとめにしたものといっていい.そして,そういう経験を前の時代から受けついで,その上で,また新しい経験を積んで来たから,人類は,野獣同様の状態から今日の状態まで,進歩して来ることが出来たのだ.一人一人の人間が,みんな一々,猿同然のところから出直したんでは,人類はいつまでたっても猿同然で,決して今日の文明には達しなかったろう.

だから僕たちは,出来るだけ学問を修めて,今までの人類の経験から教わらなければならないんだ.そうでないと,どんなに骨を折っても,そのかいがないことになる.(中略)

いまの君にしっかりとわかっていてもらいたいと思うことは,このような世の中で,君のようになんの妨げもなく勉強ができ,自分の才能を思うままに延ばしてゆけるということが,どんなにありがたいことか,ということだ.コペル君!「ありがたい」という言葉によく気をつけて見たまえ.この言葉は,「感謝すべきことだ」とか,「御礼をいうだけの値打ちがある」とかいう意味で使われているね.しかし,この言葉のもとの意味は,「そうあることがむずかしい」という意味だ.「めったにあることじゃあない」という意味だ.自分の受けている仕合わせが,めったにあることじゃあないと思えばこそ,われわれは,それに感謝する気持になる.(中略)

この先は,もう言わないでも,君にはよくわかっているね.君のような恵まれた立場にいる人が,どんなことをしなければならないか,どういう心掛けで生きてゆくのが本当か,それは,僕から言われないだって,ちゃんとわかるはずだ.(中略)僕は心から願っている−君がぐんぐんと才能を延ばしていって,世の中のために本当に役に立つ人になってくれることを!

京大生を前にして,常々感じることがある.

彼らは京都大学に通っている今の状況に感謝しているのだろうか.

それは決して当然なことではなく,自分が非常に恵まれた状況にいるということを自覚しているのだろうか.

そのような境遇が与えられたことに感謝し,その恩返しを社会に対してなそうという気持ちを持っているのだろうか.

私としては,そういう気持ちを持ってもらいたいと思っている.だからこそ,吉野源三郎氏には強く共感する.

最後に,「なぜ勉強するのか?」を考える際に参考になる本を紹介しておこう.

1つめは,「なぜ勉強するのか?」(鈴木光司,ソフトバンククリエイティブ).それほど凄いことが書かれているわけではないが,タイトルが問いそのものだ.そして,読みやすい.

2つめは,「クリシュナムルティの教育原論―心の砂漠化を防ぐために」(ジッドウ・クリシュナムルティ,コスモスライブラリー).これを読みこなすのは大変だろう.だが,非常に考えさせられる.

ハッキリ言うと,低俗なテレビのバラエティ番組ばかり見ているような大人が,一体どの面下げて子供に「勉強しなさい」なんて言えるのか.そんな恥知らずにはなりたくないものだ.えっ,「勉強しないと,私みたいになるわよ!」と付け加えてるって.なるほど,説得力があることは認めよう.

  2 Responses to “なぜ勉強するのか? どうして勉強しないといけないのか?”

  1. お久しぶりです。
    前記事と今記事、人としても母としても興味深かったです。

    僭越ですが、DCさんにお勧めの本があります。
    灰谷健次郎さんの「天の瞳」です。
    読まれた事がおありかもしれません。
    私は最近文庫でシリーズを読みました。

    DCさんの感想が聞けたら嬉しいです。

    • みみさん,ご無沙汰しています.

      灰谷健次郎氏の作品は,それこそ小学生か中学生の頃に,「兎の眼」と「太陽の子」を読んだ記憶があります.ご紹介いただいた「天の瞳」は読んでいません.早速,幼年編1,2を図書館で予約してみました.これ,全部で9編もあるんですね.いつ読み切れるかな?

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